「怖すぎる」とネットを席巻したホラー小説『近畿地方のある場所について』はどのように生まれたか 作者インタビューで裏側を聞く(1/6 ページ)

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» 2023年07月07日 21時00分 公開
[たけしな竜美ねとらぼ]
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※このインタビューには作品内の一部ネタバレや設定に関わる話が含まれます。


 『近畿地方のある場所について』という作品をご存じでしょうか。2023年1月から4月にかけて小説投稿サイト「カクヨム」に投稿されたホラー作品で、3月下旬にTwitterなどで一気に拡散し、大きな話題となりました。

『近畿地方のある場所について』の、カクヨムでの作品トップページ

 いわゆる「バズり」を受けたためか、物語が完結した直後の4月20日、作者である背筋さんのTwitterアカウントで『近畿地方のある場所について』の書籍化と、8月30日という発売日が急きょ発表されました。

『近畿地方のある場所について』書影

 作品の内容は「すべて現実に起きた事件という設定で構成されている」「各々は断片的な情報でしかないが、読み進めるうちにおぼろげながら、共通するストーリーや背景が浮かび上がってくる」という「モキュメンタリー(フィクションを事実のように伝える手法)」です。

 同じジャンルの作品としては映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」「パラノーマル・アクティビティ」や、テレビ東京の映像番組「Aマッソのがんばれ奥様ッソ!」「テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?」などがよく知られたところかと思います。

 『近畿地方のある場所について』もそれらと同様に断片的な情報……雑誌の記事、インターネット上の情報、インタビューの書き起こし、手紙、うわさ話のまとめ、筆者からのメッセージ、などなど……年代も背景も発信者も異なる情報がいくつも提示されています。そして最初から最後まで読了した後、それらをつなぎ合わせることで、おぼろげながら「怪異の正体とその背景」にたどり着けるのです。

 また、モキュメンタリーの特徴として「作中でヒントは提示されるが、種明かしはされないため、受け手側が答えを導き出すことで完結する」というものがあります。同作もその例に漏れず、たくさんの人たちが作中の謎や怪異についての考察を行っています。

 物語が完結したこともあり、『近畿地方のある場所について』への考察と謎解きがますます深まるなか、ねとらぼ編集部は皆さんの考察と謎解きに貢献するべく、作者の背筋さんと、書籍版の版元であるKADOKAWAの担当編集者さんに詳しくお話を伺いました。

『近畿地方のある場所について』が生まれたきっかけ

――お忙しいなかありがとうございます、よろしくお願いします。

背筋さん(以下、背筋) よろしくお願いします。

KADOKAWA担当編集者(以下、担当者) 本日はありがとうございます、よろしくお願いします。

――『近畿地方のある場所について(以下・近畿地方〜)』なのですが、この作品を書こうと思ったきっかけや着想などあれば教えてください。

背筋 趣味ですね。友人に「おかしな書き込み」……『近畿地方〜』の第1話ですね、こちらを書いて見せたら「おもしろい」と言ってくれて。じゃあ続きを書いてどこかで発表してみようかな、と思ったのがきっかけです。

「おかしな書き込み」

――今回のような、さまざまな情報をつなぎ合わせるモキュメンタリー形式にした理由はあるのでしょうか。

背筋 理由は2つありまして。ひとつは「長編小説を書いたことがない」というもので(笑)。書けるかどうか分からないから、そうせざるを得なかった。ショートストーリーをつなげていく形ならなんとかなるかな、と思ったんです。

 もうひとつは好きな作品から着想を得た、というものです。複数の情報をつなぎ合わせていくと全体像が見える、というものが書きたかった。小野不由美さんの『残穢(ざんえ)』とか、三津田信三さんの作品とか。映画だと「ノロイ」の白石晃士監督の作品、ゲームだと「SIREN」とか……要するに「受け手側に考察してもらう」という作品ですね、そういうものが書きたかったんです。

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