ジャニーズ会見で記者が感じた“大きな課題” 広報がメディアを”たらいまわし”した過去…… ジュリー元社長「返事できなかったのは事実」(2/3 ページ)

» 2023年09月08日 14時20分 公開
[上代瑠偉ねとらぼ]

ジャニーズ会見で記者が感じた”大きな課題”

ジャニーズ事務所 故ジャニー喜多川氏の性加害問題 東山紀之 藤島ジュリー景子 (撮影:上代瑠偉)

 特別チームがジュリーさんの辞任を訴えたのは、「ジャニー氏の性加害の事実を巡る対応についての取締役としての任務の懈怠(けたい)があること」に加え、「ジャニーズ事務所におけるガバナンス不全の最大の原因の一つである同族経営の弊害も防止し得ること」も背景にありました。

 会見では、ジャニーズ事務所が抱えるいびつな「同族経営」の体質が随所に垣間見えました。例えば、ジュリーさんは「私が代表取締役社長になるまでは、2人が株主で2人が意思決定者で、私も含めて取締役は名ばかりで、きちんと機能しておりませんでした」と、2009年以前の状況について振り返っています。

 一方で、東山さんはジャニー氏およびメリーさんについて、「あの2人を本当に父のような、母のような思いで感じていた」と語っています。ジャニーズ事務所の最年長で「長男」とも言われる東山さんは、終始神妙な面持ちで声のトーンを抑えて話すのに対して、井ノ原さんは時折表情を緩めたり、記者から早く質問に答えるように怒号が上がると「じゃあ次は(質問に答えます)」と記者に歩み寄ったり、普段通りの親しみやすい印象を与えました。

 4時間超におよぶ会見を取材していくうちに筆者が強く感じたのは、ジャニーズ事務所のトップはかつては「父(ジャニー氏)」「母(メリーさん)」だったが、それが現在では「長女(ジュリーさん)」「長男(東山さん)」「次男(井ノ原さん)」に代替わりしたに過ぎないのではないか、ということです。

 ジャニー氏とメリーさんと血縁関係があるジュリーさんでは性加害問題への対応が不十分だったように、ジャニーズ事務所の「長男」と言われるばかりか、過去のハラスメント疑惑も報じられている東山さんでは、やはり「同族経営」を断ち切るような自浄作用は期待できないように見受けられます。

特別チームが総括する性加害問題の本質

ジャニーズ事務所 故ジャニー喜多川氏の性加害問題 東山紀之 藤島ジュリー景子 特別チームよる調査報告書(撮影:上代瑠偉)

 また、ジュリーさんが今後も取締役として残留し、100%保有する同社の株を手放さないことはもちろん、現在は性加害者のジャニー氏の名を冠した「ジャニーズ」という会社名を変更する見通しがないことや、事務所の解体を視野に入れていないことについては、あらためて問題点として言及しなければいけません。

 すでに性加害問題をめぐる不十分な対応は、ジャニーズ事務所の事業にも影響を及ぼしています。東京海上日動火災保険は同事務所との広告契約の解除を検討しており、日本航空(JAL)も同事務所の所属タレントの広告への起用を当面見送ると方針だ、と新聞各紙などが報じています。

 特別チームは調査報告書のなかで、再発防止策を見据えてジャニー氏による性加害問題について、以下のように総括しています(関連記事)。少し長くなりますが、極めて重要な指摘だと思われるため、該当箇所を引用して記事を締めくくります。

 「本件は、芸能事務所の経営トップでもある芸能プロデューサーが、その芸能事務所所属の中学生・高校生を中心とする未成年の同性のタレント候補(又はタレント)に対して1970年代前半から2010年代半ばまでの間の長期間にわたって性加害(強制わいせつ罪等に該当し得る犯罪行為)を繰り返し行い、その被害者数は多数に上るであろうという、極めて悪質な事件である。被害者が心身、とりわけ、精神的に受けたダメージは計り知れず、また、調査からは、被害を受けるも今日に至ってもなお羞恥心や傷つきから被害を申し出ることもない被害者の存在なども推察され、癒えることの無い甚大な精神的損害を生ぜしめた事案であるといえる。
 そのような深刻かつ重大な性加害が長期間にわたって可能であった背景として、まず、芸能プロデューサーたるジャニー氏がタレント候補の採用・デビュー等の生殺与奪の権を一手に握り、被害者たるタレント候補(いわゆるジャニーズJr.)に対して絶対的に強い立場にあり、ジャニーズJr.の少年側としては、このようなジャニー氏との一方的な強者・弱者の関係性のもと、ジャニー氏による性加害を拒んでしまっては、自身のプロデュースについて不利益・悪影響が及ぶ可能性があることから、それを避けるために性加害を受け入れざるを得ないという心理状態にあったことが挙げられる。
 本来であれば、そのようにして立場を逆手に取る芸能プロデューサーは、その地位を追われることになるはずである。
 しかしながら、ジャニー氏は、同族企業であるジャニーズ事務所の創業者かつ代表取締役社長というそれ自体強大な権力を有する地位にあった。そのため、ジャニーズ事務所の役職員の誰もが、ジャニー氏に対して意見を言うことができず、また、言おうともしなかったと考えられる。
 また、性加害(性被害)は、羞恥心などのため、被害者には、第三者にそれを打ち明けることを期待し難いものである。そのような性加害自体の性質に加え、本件は、同性による性加害であり、かつ、被害者が男児で、未成年であるとともに、上記の強者・弱者の関係にあったという特徴がある。したがって、被害者としては、その親を含め第三者に相談・告発することが心理的にも非常に困難であったと推察される。そのため、ジャニー氏による性加害が、その自宅や合宿所等という密室で行われていたことも相まって、黙殺されやすい状況にあった。
 このような状況から、ジャニー氏は、その絶対的な地位を安泰なものとしながら、ジャニーズJr.に対する性加害を長期間にわたって繰り返し行うことが可能であった。
 他方で、数々の暴露本においてジャニー氏の性加害が世に明かされるとともに、文藝春秋との訴訟では、裁判所によりジャニー氏の性加害の事実が認定されている。それにもかかわらず、ジャニーズ事務所は、組織として、この問題に対処することはせず、テレビ・新聞等の日本の主だったマスメディアが性加害の事実を報道せず、その批判にさらされないという状況の下、性加害の実態を徹底的に調査してジャニー氏を解職するなど再発防止を図ることや被害者を救済することを怠った。ジャニーズ事務所は、組織体として、ジャニー氏による性加害の事実を握り潰し、『なかったこと』にしたのである。
 そのようなジャニーズ事務所の怠慢と隠蔽体質が、ジャニー氏による性加害の継続と被害者の拡大に大きく寄与した。ジャニー氏による性加害のために肉体的・精神的苦痛を受けるとともに、アイドルへの道を閉ざされることになってしまった被害者の悲痛・苦悩は察するに余りある。日本有数の大手芸能事務所として数多くの人気アイドルタレントを輩出し、マスメディアを通じて大きな社会的影響力を有するジャニーズ事務所が性加害の事実に誠実に向き合わなかったことの責任は、極めて重大である。
 したがって、ジャニーズ事務所は、性加害の事実を正面から受け止め、その責任の重大さを痛感し、被害者に対して十分な救済を行うとともに、後述のジュリー氏の代表取締役社長からの辞任を含む解体的出直しを図らなければ、社会からの信頼を回復することは到底期待することができないことを覚悟しなければならない。とりわけ、ジャニー氏が死去していることから同様の事案は起こらないであろうとの安易な想定のもとで、形式的対処のみをもって、現在の厳しい状況をやり過ごし、会社としての再出発を図るような対応は企業の社会的責任としても到底許されるものではない
(特別チームの調査報告書より引用)
※一部改行および太字表記を加えたが、文章は全て原文ママである

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news042.jpg 夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
  4. /nl/articles/2411/14/news090.jpg ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  5. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. /nl/articles/2411/13/news162.jpg 「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
  9. /nl/articles/2411/14/news035.jpg 160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
  10. /nl/articles/2411/12/news194.jpg 「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた