【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
早いもので5月もおしまい。東京はすっかり「緊急事態」が“日常”となりました。そのなかで6月4日から上野動物園が、事前予約制で約5ヵ月ぶりに開園するという嬉しい話題も入ってきました。どんなに緊急事態でも、人はお腹が減るもの。せっかくお腹を満たすなら、少しでも美味しいものを味わうことが心の健康につながりそうです。今回は上野駅ゆかりの駅弁をいただきながら、常磐線の旅気分を味わってみることにいたしましょう。
ターミナル駅の駅弁で感じる旅気分(第2回/全3回)
E531系電車による常磐線の普通列車・上野行が、茨城・水戸の郊外を駆け抜けて行きます。平成27(2015)年の上野東京ラインの開業で、常磐線も特急「ひたち」「ときわ」を中心に東海道本線の品川まで直通運転されるようになりました。ただ、日中の水戸(勝田)発着の普通列車(中距離電車)では、「上野」という行先を多く見ることができます。水戸〜上野間は特急の通過待ちを入れても約2時間。駅弁旅にはちょうどいいですね。
東京の北の玄関・上野駅。北関東や東北地方に縁のある方にとっては、思い入れのある駅に違いありません。駅弁の誕生と同じ、明治18(1885)年にできたという初代駅舎は、れんが造りだったそうですが、残念ながら関東大震災のために焼け落ちてしまいました。いまの鉄筋コンクリート造りの2代目駅舎は昭和7(1932)年築。来年(2022年)で90年を迎えます。昭和のころには、ここから東北・信越方面へ多くの特急・急行列車が旅立って行きました。
そんな上野駅向けに作られている駅弁といえば、「上野弁当」(1150円)。掛け紙には、上野のシンボル・西郷さんの銅像と上野動物園のパンダが描かれています。この駅弁、現在は水戸を拠点に駅弁を手掛ける「しまだフーズ」によって製造されています。折にはお品書きと共に、“優しさ感じる水戸〜上野間の旅”と書かれた栞が添えられています。その意味でも、駅弁で常磐線の旅を楽しめる作りになっているわけですね。
【おしながき】
- 白飯(茨城県産コシヒカリ)
- 老舗上野の海苔
- 大洗吉田屋の梅
- 焼き鮭
- 蕪の漬物
- 煮物(里芋、こんにゃく、花人参、スナップエンドウ)
- れんこんのたまり漬け
- つくば鶏幽庵焼き
- かぼちゃときのこのさつま揚げ
- 玉子焼き
- 桜シューマイ
- 常陸牛しぐれ煮
- あぶり蛤串
上野の海苔と大洗の梅干しが茨城県産コシヒカリのご飯によく合う「上野弁当」。水戸の駅弁屋さんが作るだけに、常陸牛・つくば鶏をはじめ食材の多くは「茨城県産」です。ただ、茨城県産の野菜や果物は、東京都中央卸売市場における取扱高が、長年にわたって、日本一となっています。つまり、茨城県産の食材は、東京都民にとっても“なじみの味”。常磐線の車窓に広がる筑波山や霞ケ浦を思い浮かべていただくのがいいでしょう。
幸か不幸か、私自身はあまり“飲みニケーション”をしないので、酒類の提供がなくても、苦痛は感じませんが、旅に出かけにくいのはストレスが溜まります。その意味でも、満たされない旅心をくすぐってくれる「駅弁」は、大事な存在と言っても過言ではありません。各自治体のウェブサイトでも、「健康維持のための外出」は不要不急の外出に当たらないとあります。アナタも“心の”健康維持のために、身近なところの「駅弁」を買い求めてみては?
(初出:2021年5月31日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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