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辛いことは「ウケたらチャラ」
たろちん:「ネタにする」というのは、こだまさんの書くもののキーワードだと思います。楽しかったことより、辛かったことや苦しかったことを書くタイプですよね。
こだま:楽しいことを書きたいという欲があまりないんです。もともと、すごく悲惨な目にあったり、自分だけくじ運が悪かったりするのもあります。辛いことでも変な話にして書いて、それがウケたらもういいや、という感じになってますね。
たろちん:昔のテキストサイトの時代も「自虐ネタ」ってすごく流行ってましたね。現実でうまくいっていないことをネットでは面白おかしく書くスタイル。その系譜をすごく感じました。
こだま:たろちんさんも、ご自身の病気について書いていますよね。普通の人なら落ち込むような悲惨な話を、淡々と書かれていて。『e-boy/e-girl』を読んで、やっぱり昔からネットの人だったんだと納得しました。

たろちん:もちろん病気で死にかけたのって、楽しかったわけではないし、今も辛いといえば辛いんです。でも書こうとすると、おいしいネタでもあるんですよね。茶化して書くことがセラピーになってるというか。
こだま:悲惨な話を、悲惨なまま書こうとは思わないですよね。ひどい目にあっている当事者だから、こっちもちょっとぐらいひどく書いても許されるだろう、みたいな。
たろちん:そこにシンパシーを感じます。でも、こだまさんの人生は本当に壮絶ですよね。いつも結構エグい人物や出来事が書かれてるんですが、本を通して読むとユーモアもあって重さがあまりない。そこがすごいと思いました。
こだま:嫌なことは、“ウケたらチャラになる”くらいの精神になっているんです。自分の中に溜めておきたくないので、ふざけて書いてしまうところがあります。そのほうが、自分を客観的に見られて整理できる感じはありますね。
偽名でいとこのライブに潜入
たろちん:今回の本はお母さんの話だけでなく、個性的な人がたくさん出てきますよね。僕はいとこの「せいちゃん」の話が好きなんです。
こだま:20年以上会っていなかったいとこが歌手活動を再開していた話ですね(笑)。
たろちん:歌手デビュー以降の活動をひっそりネットウォッチしてるのはもちろん、偽名を使って実際にライブまで見に行くのがすごいなと。本人に話しかけられてヒヤヒヤしたのに、2回目もまた行くところで「この人やばいな」と思いました(笑)。
こだま:せいちゃんがどうしているのかはずっと気になっていたんですけど、「エッセイで書くか」と思ったら簡単に動けて。最初は十数人しか入らない小さなライブハウスで近すぎたんですが、次は50人、100人規模だとわかって、これなら大丈夫だと強気になっちゃって(笑)。
たろちん:取材だとすごい行動力が出るタイプだ。
こだま:中学生くらいまではお正月に会っていたので絶対バレると思ったんですけど、まさか親戚が来るとは思わないんでしょうね。「どうやって知ってくれたんですか?」と聞かれて「動画を見て来ました」と答えました。いとこなんだけどな、と思いながら(笑)。
たろちん:喫茶店のマスターの話もすごかったです。ニコニコしていたと思ったら、忙しくなるとイライラして口が悪くなる気分屋で。
こだま:怖かったですね。お客さんが数組来ると豹変してしまうんです。それが、忙しくなると八つ当たりしてきた子ども時代の母の姿とすごく重なりました。本当は辞めたかったんですけど、店主がスタッフを次々クビにしすぎてシフトに入れる人がいなくて。電話で「誰も来てくれない、店を閉めるしかない」と悲しそうに言われると、じゃあ今日だけは行こうかなって。
たろちん:ダメですよ、それDV彼氏の手口ですよ(笑)。
こだま:本当にそうなんです(笑)。新しいバイトさんが入ったタイミングで、今だと思って辞めました。でも、喫茶店で働くのはずっと憧れだったので、自分がまったく使えなくてショックでした。だけど、書くという道がなかったらとにかく落ち込んでいたと思います。「できないなら、できない話を書こう」と思えるのは救いですね。

