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褒めてくれなかった母
たろちん:お母さんの話は、子どもの頃のエピソードが衝撃的でした。かなり厳しいお母さんだったんですよね?
こだま:「普通にしなさい」と言われて、ずっと反発してましたね。
たろちん:全然褒めてもらえなかったんですよね。妹さんは褒めるのに、自分だけは褒めてくれない。
こだま:はい、だから私の性格もどんどんひねくれていって(笑)。憎たらしい長女だったので、親もあまり褒めたくなかったのかもしれません。
たろちん:それはどちらが先だったと思いますか? 自分がひねくれたのが先か、親の態度が先か。
こだま:やっぱり親が先ですね。幼い妹は可愛がっていたんですが、どう考えても長女に厳しすぎました。絶対に褒めない、という態度で。それに腹が立って私が妹をいじめるようになり、それを見た親がますます厳しくなる、という悪循環でした。途中から、恨んではいるんだけど、どうしたら褒められるだろうと頑張るようになったんです。両親には一向に褒めてもらえませんでしたけど、そのうち学校の先生が褒めてくれるからいいや、と諦めていきました。
たろちん:こだまさんも学校の先生をされていたからわかると思うんですが、小さい頃に承認される体験ってすごく大事ですよね。
こだま:大事ですね。教師になって、いろんなお母さんやお父さんの子どもへの接し方を見て、こんなふうに私も育てられたかったと、すごく思うようになりました。
たろちん:「復讐」とか「両親を見返したい」という話もありましたね。
こだま:私は本当に、親への反抗で頑張ってきたようなところがあります。でも40代になってから、それは自分で選んだ生き方ではないんじゃないか、と考えるようになりました。親への反抗だけで生きてきたから、自分がないんだ、って気付いて。
たろちん:今は自分を大事にして生きられてますか?
こだま:うーん、あまりできてないですね。昔と同じで「嫌なことを言われたから頑張る」というモチベーションのほうがまだ強いです。
母と旅行に行くようになったきっかけ
たろちん:お母さんとは、今どういう関係なんですか?
こだま:別にすごく悪いわけではないんです。ただ、過去にされたことが自分の中でまだモヤモヤしていて、うまく仲良くなれないというか。どういう距離感でやっていけばいいのか、ということはずっと悩んできました。
たろちん:「わからないまま一緒に生きていく」という結論がいいですよね。昔は実家に帰っても母とあまり喋りたくなかったけれど、だんだん一緒に旅行にも行けるようになった、という話があって。どこでそう変わったんですか?
こだま:父が亡くなったのが大きかったです。田舎のポツンと一軒家に母が一人で住んでて、鍵もかけずに夜寝ていたりするので、単純な心配もあって頻繁に帰るようになりました。そのうち母が「本当はもっとお父さんと旅行に行きたかった」とぽつりぽつり言ってくるようになって。じゃあ行くか、と一緒に行くようになったんです。
たろちん:そこがすごいなと思いました。家族って距離が近いからこそ嫌な部分も見えるというか。僕は親とは仲がいいほうですが、わだかまりがあったらなるべく距離を置きたいと思っちゃいそうです。
こだま:私も母の行動にたまにすごく嫌な思いをしてイラッとくるんです。でも母は自由気ままに振る舞うので、行きたかったら私を誘ってきます。「旅行の費用は全部出すから」と言われたら、絶対乗っちゃいますね(笑)。
たろちん:こだまさんから誘うこともあるんですか?
こだま:母が行きたそうにしていたら、誘うときもあります。私は夫と旅行するのが好きで、2人でよく出かけるんですけど、その間も母が1人で田舎にぽつんといると思うと、勝手に罪悪感を覚えてしまうんです。夫と5回出かけたら、1回くらいは母と出かけないと、と思っちゃう。
たろちん:それがめっちゃ優しいですよ。わりと気を遣う性格ですか?
こだま:母に対しては多分そうですね。母は感情をすぐ表に出す人なので、わかりやすいんですよ。いま不機嫌だなとか、本当は行きたかったんだなとか、感じ取れちゃうので。
たろちん:うわー、めっちゃわかる。それ、しんどくないですか?(笑)
こだま:でも、エッセイを書いているから、というのもあります。連れて行ってエッセイを書こう、というちょっと悪い自分がいるんです(笑)。もともと「おしまい定期便」という連載は、田舎から外に出ていく話にしよう、というのが始まりでした。だから親と一緒に出かけたら1本書けるな、とか考えてしまうんです。
たろちん:なるほど、親孝行がそのまま取材にもなって一石二鳥だと(笑)。

