東京の港区では、住民のおよそ6人に1人が社長だという。これだけ多いと、「社長!」と呼んだら何人も振り向きそうだ。

東京商工リサーチの「2026年 全国『社長の住む街』調査」によると、港区の人口に占める社長の割合は17.1%で、全国トップだった。町名別でも、港区赤坂が4709人で14年連続の首位。六本木や南青山も上位に並んだ。
高級マンションが立ち並び、オフィス街にも近い。「なるほど、社長が多そうだ」と、うなずく人もいるだろう。

ところが、社長の人数を市区郡別で見ると、トップは港区ではない。世田谷区だ。前年から1902人増の6万1064人となり、初めて6万人を超えた。2位の港区は4万6204人、3位の渋谷区は3万3505人だった。
社長が最も多く住んでいるのは世田谷区。住民に占める社長の割合が最も高いのは港区。住民の多い街では、社長の人数も多くなりやすい。「社長の多い街はどこ?」という問いも、人数を見るか、割合を見るかで答えが変わる。
さらに、東京都以外に目を向けると、市区郡別で社長の人数が最も多かったのは埼玉県川口市だった。2万2607人で、全国13位。東京都外では唯一の2万人超えとなった。千葉県船橋市の1万5943人、兵庫県西宮市の1万5475人が続く。
都心の住宅地から、ものづくりの街まで。社長が多く暮らす街にも、さまざまな顔がある。

工場や商店を営む経営者も対象に
このランキングを読むうえで、知っておきたいのが「社長」の範囲だ。対象には、個人企業の経営者も含まれる。大企業のトップだけでなく、地域の工場や商店などを営む経営者も数えられている。
「社長」と聞くと、立派なオフィスで大きな事業を動かす姿を想像しがちだ。でも、自ら店頭に立ったり、工場で手を動かしたりしている社長もいる。同じ「社長」という肩書でも、その働き方はさまざまである。
川口市の社長数の多さについて、東京商工リサーチは「東京都に隣接する交通の便利さに加え、製造業や中小企業が集まっている」ことも理由に挙げている。川口市と同じく、製造業が盛んな東大阪市や浜松市中央区も上位に入った。

一方、東京都外で社長の割合が高かったのは、福岡市中央区の6.2%だった。東京商工リサーチは、オフィスや商業施設と住宅地が近く、職場の近くに住みたい経営者を引きつけているとみている。大阪や神戸に通いやすく、住環境も整う西宮市も、社長の割合は3.2%と高い。
住む街から、地域の仕事も見えてくる
職場に通いやすいこと。落ち着いて暮らせること。そして、地元に工場や商店などが根付いていること。社長が多く住む背景は、高級住宅街としての人気だけでは説明できない。
そう考えると、このランキングは「お金持ちはどこに住んでいるか」だけの話ではない。その街にどんな仕事があり、誰がそれを営んでいるのかを考える“入り口”にもなる。
いつも気軽に話している店主も、実は社長かもしれない。そう思うと、ご近所付き合いも、ちょっとした経営者との交流である。


