出世指南のシリアスゲーム「太閤立志伝」:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(5/5 ページ)
大坂城を拠点に目指せ関白
「太閤立志伝」では、本能寺の変が起こったとき、秀吉は毛利領を攻撃中。急いで引き返して、京の都の近くにいる明智光秀軍と戦うことになるのだが、なにしろまだ開発途上の長浜城を拠点とする秀吉軍、兵士の数が少ない。
秀吉の兵が少ないと、光秀の兵も少なくなるようだが、それでも光秀の武力が高い上、鉄砲を持っているため、2千5百の兵士で2千7百の光秀軍に勝つのは容易ではない。山崎の合戦を2回やり直し、3回めでようやく勝てた。
光秀に敗れてもゲームは続くが、旧織田領の大部分が明智領になるわ、傘下に収めていた大名が独立するわで、秀吉の立場が苦しくなる。
ちなみに、実際に山崎の合戦が行なわれた場所は、現在の京都府大山崎町。JR山崎駅の背後に、天下分け目の天王山がある。阪急大山崎駅からもよく見える。
秀吉が一時的に本陣とした宝積寺は、天王山の山腹にある。そこへ至る道は、舗装路ながらかなりの急斜面。戦国時代の武士は、よくこんな急坂を……。
一方、明智光秀が本拠としていた勝竜寺城は、四季の花が楽しめる公園になっていた。堀や門、やぐらなどが復元されている。
さて「太閤立志伝」の話に戻るが、何とか山崎の合戦に勝つと、秀吉が信長に代わって大名となる。史実と違って安土城は残ったままなので、資金がかなり潤沢で、城主時代にあった資金難や人材不足による行動制限もほぼなくなる。
しかも長浜城時代と同様、月に何度でも評定を開ける上、同じ主命を複数の武将に命じることもできる。だから兵糧を売りまくって資金を稼げるし、鉄砲もかなりの数を買えるし、あちこちの城で新田開発ができる。
むしろ家臣が多すぎて、主命を出すのがめんどくさくなるほどだ。かつての秀吉同様、主命をこなした家臣は信頼値が上がる。これが一定の値に達したら、昇進させないと不満を持たれるので、ときどき信頼値をチェックしないとならない。
宿老や家老は、秀吉と一緒に戦う武将だけを手元に残して、あとは城主にし、与力を何人かつけ、城の管理をしてもらうのがいい。大きな城を与えれば、別動隊として敵の城を落としてもらうこともできる。
秀吉自身の軍勢も、長浜城時代より多くの兵士を動かせるので、1回の出陣で3、4城まとめて落とすこともできる。まだ毛利や武田、北条が大きな勢力を保っているが、向こうは1カ月に1つの城しか攻撃してこないので、秀吉の勢力範囲は、徐々に拡大していくはずだ。
秀吉に一定の勢力があれば、居城を本願寺に移すことで、大坂城が築城され、ますます大きな収入を得られる。実際に大坂城は、石山本願寺の跡地に築かれていて、現在は大阪城公園内に、「石山本願寺推定地」の碑がある。
現在の大阪城天守閣(当時とは“さか”の字が違う)は1931年(昭和6年)に復元されたものだが、これ自体が建てられて既に70年以上経過しており、国の登録有形文化財になっている。全体的には徳川時代に再建された城と同じ白壁だが、最上層だけは秀吉が築いた黒漆の壁になっている。
8階の展望台からは、大阪城ホールや、通天閣、大阪ドーム、HEP FIVEの観覧車など、大阪の主要な建物や、生駒山がよく見える。
「太閤立志伝」では、秀吉が全国を統一すればもちろんゲームクリアとなるが、朝廷工作を続けて、関白の位を得られれば、まだ全国統一していなくてもクリアとなる。勢力が小さいうちは高い官位を得られないので、勢力の拡大と朝廷工作を並行して行なう必要があるが、毛利と武田を制圧できれば、北条家は滅ぼさなくてもクリア可能だ。
自由度の高さもこのゲームの魅力
今回は秀吉の足跡を追う意味で、オーソドックスなプレイをしてみたが、史実から大きく外れた展開に持っていくことができる自由度の高さも、「太閤立志伝」の特長だ。
例えば、同僚との訓練で武力を高めるかわりに、辻斬りで武力を鍛えることができる。相手が敵でも味方でも辻斬りが可能で、倒した相手からはお金が奪える上に、相手の魅力が低い場合は自分の魅力が上がる。
また、商人と仲良くなっておくと、鉄砲購入の際に数をごまかして、お金を着服できたりする。
城主になったら信長から、敵の城を落とすよう主命が下るが、指定されていない敵の城を攻撃してもいい。前述のとおり、わたしも上杉の城を攻めるように言われていながら、勝手に三好の城を落としていったことがある。
あと、敵の城ばかりではなく、味方の城を攻めることすら可能だ。つまり信長に反旗をひるがえすわけだが、本能寺の変が起こらなかった場合に、秀吉を天下人にしようと思ったらこれしか手段がない。
「太閤立志伝」はシリーズ化された。1995年、「太閤立志伝II」PC版発売。後にプレイステーションとセガサターンに移植される。
序盤に行なう兵糧売却では、町によって米の値段が変わるようになった。相場の高い町で売って、安い町でまた米を買い直す。これを繰り返してお金を増やす、“米転がし”ができるのだ。できるというより、それをしないと信長から褒めてもらえない。
「II」以降もシリーズは続き、現時点での最新作は2004年に発売された「太閤立志伝V」だ。
また、大名ではない人物を主人公にできるというシステムは後に、信長の野望シリーズ(蒼天録)や、三國志シリーズにも取り入れられた。
わたしはプレイステーション 2で「三國志VII」にずいぶんハマり、賈ク(「かく」クは言べんに羽)でプレイして董卓の参謀からスタートし、牛輔の参謀を経て、やがて一国を率いて活躍。賈クと張譲と糜竺で中国を分け合うという、地味な三国志になったものの、最後はどうにか中国を統一できた。
ところで、わたしがライターとして活動する上で、「太閤立志伝」が参考になったかというと……。
当時のマイコンBASICマガジンには、山下章氏、手塚一郎氏、ベニー松山氏をはじめ、綺羅星のごときライター陣がそろっていた。一方わたしは口ばかりで、まったく実力が伴っていなかった。
「太閤立志伝」に例えれば、能力値や技能を成長させる努力を怠り、分不相応な主命を請け負おうとして、失敗ばかりしていたようなもの。これでは出世など望むべくもない。
その後、某ゲームメーカーに就職したものの、ここでも「太閤立志伝」をプレイした経験は生かせず、3つの部署を転々とした末に2年で退社。
このときの経験を踏まえて、わたしは実力で諸先輩方と勝負するのをやめ、けれん味とウケ狙いだけでどうにかゲーム業界で生き残ろうと考えた。
その結果が今の体たらくである。
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