「スペースインベーダー」「パックマン」を振り返りつつ次世代を考えるCEDEC 2008

「すべてはここからはじまった 〜スペースインベーダーとパックマンから学ぶ事、そして次世代へ〜」と題したパネルディスカッションには、西角友宏氏、岩谷徹氏、高橋利幸氏といった豪華メンバーが登場した。その中身をお伝えしていく。

» 2008年09月09日 23時49分 公開
[遠藤学,ITmedia]

 昭和女子大学で開催中のゲーム開発者カンファレンス「CESAデベロッパーズカンファレンス 2008」において、CEDEC10周年記念パネル「すべてはここからはじまった 〜スペースインベーダーとパックマンから学ぶ事、そして次世代へ〜」と題したパネルディスカッションが行われた。

 本ディスカッションには、ドリームス 代表取締役の西角友宏氏、東京工芸大学 芸術学部ゲームコース 教授の岩谷徹氏、米国で開催されている開発者向けのカンファレンス「Game Developers Conference」主幹のJamil Moledina氏に加え、司会進行役としてハドソン 宣伝部 名人の高橋利幸氏が登場。“すべてはここからはじまった”というお題通り、「スペースインベーダー」「パックマン」の話からスタートした。

photo (写真左から)高橋利幸氏、西角友宏氏、岩谷徹氏、Jamil Moledina氏

 まずは西角氏が、インベーダーゲームを作った当時を次のように振り返る。「アタリのブロック崩しゲーム『ブレイクアウト』が日本で大ヒットしたのがきっかけでした。箱とボールが出現して撃つだけの、ものすごくシンプルなゲームなのに、なぜこんなに面白いんだろうとショックを受けたんです。ものすごく悔しくて、何とかそれを追い越そうと思ったのが原点ですね。比べてみると分かるんですけど、ブロック崩しゲームもインベーダーゲームも画面の向こう側にターゲットがいっぱいあって、それをひとつひとつ崩していく。インベーダーゲームは当たったボールが戻ってくるのではなく、敵から攻撃してくるのが異なる点ですが、比べてみると似ているんですよ」。

 ブロック崩しゲームとインベーダーゲームは似ていると語った西角氏に対し、高橋氏から「似て非なるものだと思う」との突っ込みが入る。高橋氏曰く、「それまでのゲームは敵側のキャラクターが自分に対して攻撃を与えてくることはなかった。全然違いますよ」とのこと。これに対する西角氏の回答は、「一方的ではなく、相手からのアクションがあったほうが面白いと考えたのは確かですね。(ブロック崩しを元に)ゲームの本質である面白さを生かして作ればもっと面白くなるんじゃないかと考えたんです」というものだった。

 続けてパックマンについて話が及ぶと、高橋氏は「パックマンのキャラクターデザインは、ピザを一切れ食べた時に思いついたと聞いたんですが、その辺りも含めて話をお願いします」と、自身の知っているエピソードを引き合いに出して岩谷氏に話を振る。

 「(パックマンのデザインは)ピザでそうなったと世界的に押し通してますので触れません(笑)」とかわした岩谷氏だったが、「昔のゲームセンターは男の遊び場で“汚い、臭い、暗い”というイメージがあり、女の人が立ち寄ってくれなかった。このままではダメだと思って、女性やカップルが楽しめるものとして考えたのが原点です。今考えると大変失礼な話ですけど、女性の“甘いものは別腹”から食べるのが好きなんだと考え、“食べる”という動詞をキーワードにしてパックマンを作りました。(パックマンは)ひと言でいうと至れり尽くせりのゲーム。何を足しても引いてもダメなんです」と当時を振り返ってくれた。

 話題は現在のゲーム業界をどう考えているか? に変わる。「我々のころはとにかくハードウェアが貧弱だった。今はそこで悩むことはない。環境には恵まれているとは思います」と話した西角氏だったが、一方で「これだけ多くのゲームが出ていると、本当に面白いものを作るのは大変でしょうね。昔は何か作れば発明品だった」といったように、ゲームを作っても埋もれてしまう状況を憂いていた。

 西角氏が環境について触れたこともあってか、「昔作ったゲームは全部合わせても5Kバイトだった」と話し始めた岩谷氏は、「今がブルーレイディスクの25Gバイトだとすると500万倍ですよ。これはもう大変な話です。ただ、遊びの本質はもうちょっとシンプルなところにあって、それを表現するために容量すべてを使わなくていい。適切な表現というものを考えてほしいんです」と述べた。

 子どもたちと触れ合う機会の多い高橋氏は、ゲームに対する昔と今の子どもの違いを説明。「昔の子どもたちはゲームに対して驚きを持っていた。ファミコンが出てきた当時でいえば、一方通行だったテレビから、ゲーム機を使ってモニターの中のキャラクターを操ることができた。これが驚きでしたよね。今の子どもたちは生まれた時からテレビゲームがあるから、ある程度冷めてみているというか、第三者的な視点を持っています。例えば現在では、ゲームセンターに行って対戦ゲームで絶対に勝つんだ、っていう気力を持った子どもを探すほうが難しい。業界にいる身として、これは寂しいんです。1日1時間、いや2時間まではしょうがないと言えるぐらい夢中になれるゲームを出してほしい」と熱く語った。

 ちなみに高橋氏といえば“ゲームは1日1時間”の名言で知られるが、この言葉が生まれた逸話も披露してくれた。「ゲームソフトの宣伝担当がいうのも何ですけど、子どもは外で野球やサッカーをやって、疲れて帰ってきた時間にゲームをやる。これぐらいにしておいてもらえると健康的に過ごせるんじゃないかと思っていたんです。1985年のゲーム大会でのことですけど、回りにお父さんやお母さんがたくさんいて、その前で何か言わなきゃいけないことがあった。その時に出た言葉が“ゲームは1日1時間”だったんですよ。遊びの中にテレビゲームはひとつしかないけど、テレビゲームだけになっちゃダメだし、もっとほかのこともしてほしいという願いを込めていった言葉なんです」。

 このほか本ディスカッションでは、「日本で開発されたゲームでも世界的にブレイクしたタイトルはある」と前置きしたうえで、Jamil氏が米国向けに日本開発者が意識したほうがよいことを次のように話した。「現在(北米で)売れているタイトルには“ハリウッド映画のようなスタイル”という共通点があります。視覚的には刺激的ですが、あまりたくさんのメッセージを詰め込まない、テーマはシンプルなものです。一方で多くの日本のゲームは、あまりにもたくさんのテーマを表現しています。これは少人数に受け入れられるものですが、潜在的にはもっと大きなものを得るはずだったとしても、(たくさんのテーマを詰め込みすぎることにより)それを失ってしまうんです」。


 最後は来場者に対し、高橋氏から「どんなに姿形がきれいなゲームでも、きれいな部分を取り除いていったら、真ん中にはシンプルだけどすごく面白い遊びがあるべきと考えます。遊びをずっと考えて、ぜひ将来のゲーム業界を支えていってください」との言葉が贈られ、本ディスカッションは幕を閉じた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2503/17/news053.jpg 「これは革命」 UNIQLOの新作“4990円パンツ”に反響続出 「ユニクロ様ありがとう」「抜群の履き心地」
  2. /nl/articles/2503/14/news019.jpg ペットのカエルを土に埋め、約半年間放置→掘り返してみたら…… 「すげぇ」予想外の結末に「ほんと不思議」
  3. /nl/articles/2503/17/news091.jpg 「お気に入りすぎて……」 無印良品の“1490円シャツ”が売り切れ続出の大反響 「買い足しました」「普段使いに最適」
  4. /nl/articles/2503/16/news082.jpg 「なんだろ」 大谷翔平の背中に“違和感”覚える人続出 → 明かされた“納得の正体”に「そういう事だったんか」
  5. /nl/articles/2503/16/news008.jpg 指一本触れられない“凶暴生物”を、傷だらけになりながら毎日こね続けたら…… 「泣きそうになる」20日後まさかの大変化に反響
  6. /nl/articles/2503/17/news052.jpg 「普通に怖い」 雪の日に撮影した東京駅と国会議事堂を見比べたら…… “衝撃のギャップ”が230万表示「重大事件が起こりそう」
  7. /nl/articles/2503/17/news064.jpg “かぎ針編み初心者”が春夏毛糸で編んだのは…… おしゃれなトレンドアイテムに「作ってみたい」「編み方教えて!」
  8. /nl/articles/2503/16/news053.jpg ダイヤを溶岩に入れてみた→燃えつきると思ったら…… “驚きの結果”に「どういうこと?」「常識が覆された」
  9. /nl/articles/2503/16/news018.jpg 「めちゃくちゃ笑ったw」「センスが光りすぎてる」 友人と“絵しりとり”したら「思ってたのと違う」展開に発展→34万“いいね”の話題に 投稿者に話を聞いた
  10. /nl/articles/2503/08/news018.jpg 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「本当に迷惑」 宅急便の「不在連絡票」と酷似のチラシが物議…… ヤマト運輸「配布中止申し入れ」
  2. 愛猫が見つめる先にいるのは……? “まさかの来訪者”に思わず仰天 「うそっ?」「お庭に来るんですね!!」
  3. 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
  4. 壊れて捨てるしかないバケツをリメイクしたら…… 想像もつかない大変身が830万再生「想像力がすごい」【海外】
  5. そうはならんやろ ヤマト運輸公式とLINEで遊んでいたら…… 突然訪れた“予想外の展開”に28万いいね
  6. 「ウソやろ」 松屋の“530円丼”、衝撃的なビジュアルにネット騒然 「コレで良いんだよ丼」「開き直り感がすごい」
  7. ダイソーのセルフレジが「身に覚えのない商品」を認識→“まさかの正体”に大仰天 「そんなことあるんですね」
  8. 余ってるクリアファイル、半分折ってカットするだけで…… 目からウロコな便利グッズに「天才すぎる!」「素晴らしいアイデア」
  9. 「マジで天才」 無印良品から新発売の“350円文房具”に絶賛の声相次ぐ 「便利すぎる!」「これはいい」
  10. 「スト6」の公式世界大会で福島県のチームに所属する「翔」が優勝 賞金100万ドル獲得
先月の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  4. 和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
  5. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  6. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  7. 希少性ガンで闘病中だったアイドル、死去 「言葉も発せないほどの痛み」母親が闘病生活を明かす
  8. “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  9. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  10. 芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に