企画ではなくアイディアを考えられるあなたを待っている:「PlayStation C.A.M.P!」
ソニー・コンピュータエンタテインメント JAPANスタジオは、クリエイター発掘支援のためのプログラム「PlayStation C.A.M.P!」を立ち上げ、作品の募集を10月1日より開始する。
アイディアも人も「Mash Up(融合)」することで新しい何かを生み出したい
「PlayStation C.A.M.P!」とは、PlayStation(プレイステーション)というフィールドで活躍するCreator(クリエイター)をAuditionによって発掘し、さまざまな才能やアイディアやセンスをMash Up(融合)し、新しい“何か”を生み出すProject(プロジェクト)として誕生した。前身プロジェクトである「ゲームやろうぜ!」(1995年〜1999年、2006年実施)では、プレイステーションソフト「XI[sai]」や「どこでもいっしょ」などのミリオンセラータイトルを筆頭に、2007年は「勇者のくせになまいきだ。」、2008年は「無限回廊」、「マイスタイリスト」など、多数の斬新な作品が新しいアイディアを持った合格者の参加により創出されている。
「PlayStation C.A.M.P!」運営側としてプランニングを担当しているソニー・コンピュータエンタテインメント JAPANスタジオ エクスターナルプロダクション部 アソシエイトプロデューサーの北川竜大氏に話をうかがった。自身もいくつかの新規タイトルをプロデュースする忙しい身でありながら、新たな才能発掘の旗振り役としてプロジェクトに参加している。
―― 「ゲームやろうぜ!」ではなく、今回「PlayStation C.A.M.P!」となった意図を教えてください。
北川氏 1995年から始まる6回ほど開催された前身となるプロジェクト「ゲームやろうぜ!」では、多数のクリエイターが生まれ新機軸のゲームタイトルが誕生しました。現在でも、プロジェクトにかかわったクリエイターたちは、多方面で活躍しています。「ゲームやろうぜ!」からは、いわゆるSCEらしいと言われるタイトルが多く輩出されました。一端休止していた「ゲームやろうぜ!」は、2006年に新たな風を起こそうと再開されたわけですが、現在果たして「ゲームやろうぜ!」でいいのかという考えがあったんです。
というのも、人材発掘プロジェクトということで、なじみのある「ゲームやろうぜ!」として再開したのだが、クリエイターたちが“ゲームに限定して固執してしまわないか?”という恐れがあったと北川氏。そして、「ゲームやろうぜ!」というタイトルからどちらかというと“プレイする側を連想”してしまい、クリエイトすることと乖離(かいり)しているのではないかと判断したと語る。今のプレイステーション 3なりPSPでは、ネットワーク機能であったり画像閲覧、プレイ動画のアップロードなど、ゲームだけではない機能やサービスが増えてきているのに対応するべく、再スタートの意味を込めて「PlayStation C.A.M.P!」の名を冠したわけだ。
北川氏 実は、当初「金の卵プロジェクト」というアイデアもあったんですが、略そうとするとさすがに女性が受けづらいだろうし、悪ノリをしすぎだとたしなめられました(笑)。今回のプロジェクト名を決める際に、やはりプレイステーションという名前を冠し、かつみんなが集まって何かを盛り上げる雰囲気のある言葉にしたかったんです。そこで響きが優先してC.A.M.P!と決まりました。大変なこともありつつ、楽しいこともあって一体感も生まれるというイメージがキャンプにはあり、あとからC.A.M.Pの頭文字の意味を考えました。
前述したとおり、「PlayStation C.A.M.P!」は、PlayStation Creator Audition Mash Up Projectの略である。北川氏は特に、「Mash Up」(融合)こそがキモであり、こだわっているとのこと。さまざまな機能やサービスが生まれてはいる中で、そこから既存のものでも何かを組み合わせることでさらに新しいものが生まれるのではないか――、アイディアはもちろん人と人のMash Up(融合)することで何か新しいものが生まれるのではないか――、という考えた言う。
北川氏 「ゲームやろうぜ!」の時とはマインド的に変わってはいませんが、名前に付随して「ゲームやろうぜ!」の時はゲーム中心だったのに対し、「プレイステーション」というフォーマット自体を盛り上げてくれる人を募集しているという意味で幅が広がっています。テーマ的にもより広い意味での人材を募集しようと思っていますし、初の試みとして外部の人を選考委員に招き、社内の女性クリエイターを中心に女性に対した企画審査も予定しています。選考する側が変わらないと何も変わりませんから、我々もより良い形の選考を模索しているところですね。
今回の施策が、「企画」の募集ではなくあくまでも「人材」の募集であると北川氏は、新しいことを考えられるクリエイターが多く集まることを期待している。昨今のゲーム開発では、実績のない人がまったく新しいオリジナルタイトルを立ち上げるのは難しいが、「PlayStation C.A.M.P!」ならば新しい才能やセンスを集め、一から作っていくことができる。
「PlayStation C.A.M.P!」では合格すると、クリエイターとして業務委託契約をした後、同じ合格者たちと企画をブレストし練り込むことになる。チームでの応募も可能で、その場合は地方在住のままでもいいとした事例もあるとのこと。珍しいのは法人での応募も可能という点。特にこちらから強制をするのではなく、合格者同士がああでもないこうでもないと意見を出し合うことが重要としている。
応募で一番多い分野について聞いてみると、やはり企画・デザイン・プログラマーといった順で募集が集まるのだそうだ。しかし、職種は分かれているものの、やはり自分が考えたゲームを作りたいというクリエイターが大半で、自分の企画うんぬんというよりも自分が積極的にゲームの中身について口出したいという人が多いのだとか。開発効率を考えれば大きなタイトルの場合、自分の担当パート以外ではタイトルの中身に対してなかなか口出せないもの。ここでは、プログラマーもデザイナーもどんどん口を出すことが推奨されている。
とはいえ、船頭多くして船山登るということわざがあるとおり、迷走することも多くなるのではないだろうか? 北川氏はそれでもかまわないとどこ吹く風だ。
北川氏 かかわる人数が大規模でないからこそ、その迷走から生み出されることのほうが大きいと思うんです。普通のタイトル開発においては工程的にも資金的にも効率を考えればそうそう迷走してもらっては困るのですが、このプロジェクトそのものがクリエイターとしてのモラトリアムに近いんです。いわば迷走する時間を与えられている。だからこそしっかり考えてもらって、自分たちが納得できるものを世に出してもらいたいんです。不思議なことに過去の例からも、いつの間にかクリエイター内で自然と役割ができてきて、まとまっていくんですよ。それが見ていて面白い。
応募に際して特に経験は必要ない。2006年の「ゲームやろうぜ!」合格者であり、PSP用ソフト「マイスタイリスト」を企画した荒木さんは、SCEの社員でありながらゲームをあまり触ったことがないという経歴を持っている。普段、PSPで遊ぶことがない女性でも、こういうコンテンツがあればいいのに……という欲求を実現したに過ぎない(ちなみに荒木さんは面談の時までSCEの社員であることを伏せていた)。
北川氏 いい人がいれば全員合格だってありえます。もちろんゼロもある。しかも、毎年開催とは限りません。実質、ゲーム開発には時間がかかるもので、募集を開始して選考し、その合格した人たちの制作のサポートをしていくには時間的にも限界があるんです。次にいつ開催されるかは未定ですし、実際「ゲームやろうぜ!」も不定期でした。次いつやるか分からないからこそ、今しかないと思って応募してもらいたい。もしかしたら、次の開催は5〜6年空いてしまうかもしれませんから。特に応募にフォーマットがあるわけでもないですし、それこそ紙っぺら1枚でもいいんです。ただし、紙っぺら1枚で人に「面白い!」と思わせるとしたらすごいですし、そんな才能ある人だったらぜひ人材としてほしい(笑)。もちろん絵で勝負してもらっても、Flashでもプログラムでも、なんでもいいんです。応募作品が面白かったり、スゴイ!と思わせてくれれば。アピールの方法は自分を一番よく魅せられる方法で挑んでください。
2006年の「ゲームやろうぜ!」合格者企画から、3作がPSPタイトルとして発売されているが、今後も合格者たちのタイトルが続く。「無限回廊」や「勇者のくせになまいきだ。」は、コンセプトからブレることなく、いわば足が速いタイトルだったが、現在動いているものとして、東京ゲームショウで発表予定のタイトルもあるのだとか。今後はPS3はもちろん、ダウンロード販売など含めて、さまざまなジャンルのタイトルが登場することになる。
―― クリエイターに求められるものはなんでしょうか?
北川氏 いろいろあると思うのですが、人を喜ばせることが楽しいと思えることじゃないでしょうか。今のWebサービスやコンテンツは自分が便利と思えるものを作って実際に公開することで、表現したり共感を得たり、ビジネスにつなげてますよね? 自分の欲しいもので人を喜ばせることは普遍的であり、現在はインフラ的にも展開してやすい状況にあるのだと思います。
―― 「PlayStation C.A.M.P!」によって、新しいクリエイターが出現しやすい状況となりますでしょうか?
北川氏 新しいクリエイターが出づらい現状を打破したいというのは当初から理念としてあるんです。正直、偉大なクリエイターによってゲームの感動や楽しさを与えてもらいましたが、そこから次の世代がなかなか生まれていないという問題に直面していると思うんです。昔みたいに、これから名のあるビッククリエイターが出てくるのは難しいかもしれない。ゲームの位置づけそのものも今と昔では違うのでしょうが、新しい次世代が出てこないといずれ業界は廃れます。ゲーム業界は、音楽業界より個人でできる範囲が狭く、時間も資金もかかることから次世代が出にくい環境にあります。しかし、チャレンジはしていかないといけません。「PlayStation C.A.M.P!」が担っていくのはそこだと自負しています。人が尻込みするようなチャレンジをやっていき、新しい才能を送り出すことこそ、業界自体を底上げすることだし、最終的にはSCEのためにもなると信じています。合格者にはプレイステーションフォーマットで頑張ってもらい、ゆくゆくは他フォーマットなりメーカーなり広く活躍してもらっても構わない。でも時々は自分は「PlayStation C.A.M.P!の出身です」と言ってもらえたらうれしいですね(笑)。
―― では、「PlayStation C.A.M.P!」応募者に向けてひと言お願いします。
北川氏 応募のフォーマットの話にもありましたが、「PlayStation C.A.M.P!」はあくまでも人材の募集です。人材の募集なので、あなたのよさを僕らに教えてください。あなたのいいところを見て、僕たちがいっしょに働きたいと思えれば新しい何かが始まると思います。必要以上に自分を大きくすることも卑下することもいりません。最大限、あなたの魅力を伝わるようしてもらえればうれしい。そして、一緒にプレイステーションフォーマットで盛り上げていきましょう。よろしくお願いいたします。
「PlayStation C.A.M.P!」では、学歴も経験もチームも特に必要としていない。新しいものを生み出したいという意思とアイディアがあれば、それこそ身ひとつでポンと入っていける。ゲームタイトルを制作するには、いまやチームによる分業が当たり前となり、新人は全体について意見を言うどころか、携わる担当部分以外分からないなんてこともありえるのが現状だ。北川氏は、例え学生上がりの新人でも、意見がいえるダイレクトな場を用意すると語っている。自分の発言がそのゲームタイトルそのものの根幹にかかわるという責任と、そして開発で得られる達成感と経験は、格別なものになるだろう。人を喜ばせることができる、そして自分が楽しいと思えるアイディアがあれば、ぜひとも応募してもらいたい。あなたのアイディアが未来のサービスや機能、ゲームコンテンツのスタンダードになるかもしれない。
| 「PlayStation C.A.M.P!」募集概要 | |
|---|---|
| 応募資格 | 18歳以上、性別・国籍不問。経験不問。学生、社会人、ゲーム制作経験の有無、個人、グループ、法人などについて問いません。ただし日本在住の方に限ります。 ※ 未成年の方の応募は保護者の同意が必要です。 |
| 応募方法 | 公式サイトからのアップロード ※ひとり何作品でも応募可能。 |
| 作品受付期間 | 2008年10月1日〜末日(必着) |
| 選考期間(予定) | 一次審査(書類選考):2008年11月1日〜末日 二次審査(面接):2008年12月初旬〜 三次審査(面接):2009年3月初旬〜 ※選考委員は当社およびゲーム専門誌編集長を予定。 |
| 応募作品の形式 | インターネット経由でアップロードできるデジタルデータ |
| 募集作品例 | −「プレイステーション」フォーマットで実現したい企画・アイデア・シナリオ文書 −プログラム作品 −グラフィックデザイン作品 −動画作品 |
| 推奨アプリケーション | −2D 系:Photoshop / Illustrator / Painter / Freehand −3D 系:MAYA / Softimage / 3DSMAX / Lightwave / Shade / Strata −動画系:Premiere / LiveMotion / AfterEffects / Movie / GoLive −Web 系:Director / Flash / Dreamweaver / Fireworks −言語系:C / C++ / Visual C++ / VB −一般系:Word / Excel / Power point / Acrobat / Visio ※特殊な環境を必要とする作品の場合、審査の対象外とする可能性があります。 |
| 審査基準 | 「プレイステーション」フォーマットで実現できる作品に限定しますが、それがゲームである必要はありません。その独自性・技術力・先見性を評価させていただきます。“面白さ”を評価として積み上げる加点方式を審査基準とします。 |
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