インターネットのあけぼの「ありす in Cyberland」ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(3/3 ページ)

» 2008年10月06日 16時23分 公開
[ゲイムマン,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

今日のネット事情を予測していた?

 こうした、当時の要素や過去の要素を散りばめながらも、ゲーム内の時代は21世紀という設定なので、未来のインターネット事情も予測され、シナリオの中に盛り込まれている。そして意外と、それらの予測は当たっていたりする。

 例えば、ネットを介したコンピュータウィルスのまん延。1996年当時もインターネットの普及とともに増えつつあったが、まだ今ほどではなかった。ゲームの中ではウィルスによって、女性キャラクターの顔のデータに、セクシーな服を組み合わせた画像が、教室中の端末に送りつけられたり、渋谷の街なかにいくつも映し出されたりする。

 このウィルスは、彼女たちの顔のデータを、区役所の戸籍データから取り込んでいた。つまりネット社会におけるプライバシー保護の問題も合わせて描かれているのだ。もちろんまだ、個人情報保護法が成立する前である。

 それから、メールが送受信できる小型端末は、今の携帯電話に似ているし、テレビは既にデジタル放送になっている(というか、完全CGで番組が作られていて、デジタルデータの状態で電波に乗る)。世界中で暗躍するハッカー(クラッカー)を、一部のネットユーザーが持ち上げて神格化するなんていう描写まである。

 ありす in Cyberlandでは、当時流行した作品の要素と、過去の作品へのオマージュ、将来のネット社会の予想図、これら過去と現在と未来のファクターが、アドベンチャーゲームのシステムでつながっているのだ。

photo ありすたちの担任のアリシア先生(CV:まるたまり)は、自分のセクシー写真をクラス中の生徒に見られて、気が動転する
photo 完全CGのドラマに、凶暴化したシムペットが迷いこみ、恋愛ドラマが怪奇ドラマみたいになってしまった

惜しかった点も多々

 登場人物の設定はよく練られ、人気の高い声優陣が実力を発揮し、音楽や映像も充実しているありす in Cyberland。しかしながら惜しかった点も多々あって、ちょっと手放しでは絶賛できない作品になってしまった。

 まず、短いストーリーの割に、登場人物が多すぎた。そのためせっかく出てきた魅力的なキャラクターが、意外に活躍できなかったり、エピソードを完結できないまま終わってしまったケースが多い。

 特に、生徒会長の二階堂陽子(CV:渡辺久美子)と、その子分の如月真琴(CV:菊池志穂)。ありすたちのライバル的存在として描かれ、第2話ではサイバーランドで遭遇。これから先どうなるんだろうと思っていたら、その後は第3話の頭に出ただけで、以降まったく登場しなかった。

 ほかにも、ありすたちの同級生・大谷舞(CV:丹下桜)のアイドルへの道も中途半端なままだし、加藤優子(CV:根谷美智子)は終始見せ場がなかった。佐藤久美子(CV:久川綾)も目立たない存在だが、こちらは第3話で(ある意味)大活躍をする。

 ありすに助言を送る、謎の女性・セラ(CV:三石琴乃)は、物語の中でさまざまな謎を残しながら、結局謎の女性のままで終わる。

 それから、エンディングでルシアが、サイバーランドの最下層部までありすを迎えに行く理由と、その後いなくなる理由がよく分からなかった。どちらもなんか唐突だった。

photo 第3話でありすたちと鉢合わせする二階……いや、プリンセスレッド&ホワイト。なぜかありすたちは、2人の正体に気づかない
photo 大谷舞は、芸能事務所に入って辞めてきたところで出番が終わる。隣にいる長身の女性が加藤優子
photo サイバーランドでの敵を、現実世界で消滅させてもかまわないと考えるセラに、ありすは反発する

 登場人物とエピソードが多かったのは、クロスメディア展開と、続編の制作が、早くから念頭にあったからかもしれない。実際、マンガと小説とドラマCDとアニメビデオが登場したらしいが、グラムスの倒産により、続編は発売されなかった。

photo 第3話ラストの、ありすの言葉が印象的。サイバーランドで戦っても、現実世界の相手にまで危害を加えないという、強い意思表示だ

 シナリオの小中千昭氏のサイトでは、幻の続編となった「ありす in Cyberland 2 第七のプロトコル」のシナリオが公開されている。また、“誰もがネットワーク端末を持っており、それによってつながっている”という設定は、後に小中氏が手がけたアニメ(ゲームも発売された)の「serial experiments lain」に生かされている。


●取り上げてほしいなつかしゲー募集

思い出のあるゲームについて、ゲイムマンと語ってみませんか? あのゲームが好きだったのに今はもう手元にない、けどもう一度見てみたい! とか、俺が好きだったこのゲームを紹介しないなんて許せない! というあなた。是非こちらから、取り上げてほしいゲームをリクエストしてください。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  2. /nl/articles/2412/20/news034.jpg 「博物館行きでもおかしくない」 ハードオフ店舗に入荷した“33万円商品”に思わず仰天 「これは凄い!!」
  3. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  4. /nl/articles/2412/20/news050.jpg 「マジかーーー!」 新札の番号が「000001」だった…… レア千円を入手した人が幸運すぎると話題 「555555」の人も現る「御利益ありそう」「これは相当幸運」
  5. /nl/articles/2412/20/news148.jpg 浅田真央、男性と“デート” 驚きの場所に「気づいた人いるかな?」
  6. /nl/articles/2412/20/news016.jpg 身内にも頼れず苦労ばかりの“金髪ギャルカップル”→10年後…… まさかまさかの“現在”に「素敵」「美男美女でみとれた」
  7. /nl/articles/2412/18/news144.jpg 海岸で大量に拾った“石ころ”→磨いたら…… 目を疑う大変貌に「すごい発見!」「石って本当にすてき」【カナダ】
  8. /nl/articles/2412/18/news047.jpg トイレットペーパーの芯を毛糸でぐるっと埋めていくと…… 冬に大活躍しそうなアイテムが完成「編んでるのかと思いきや」【海外】
  9. /nl/articles/2412/15/news077.jpg 生後1カ月の保護子猫、後頭部を見るとあのアルファベットが……→9カ月の現在にびっくり 「プレミアム猫」「本当にPですね」
  10. /nl/articles/2412/19/news190.jpg 辻希美、17歳長女・希空に「ダサすぎるって」とツッコんだ格好 
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」