まさにSense of wonderなアイデアを発掘。ゲームの伝統に縛られない、個性的な9作品を一挙紹介!:TGS2010【センス・オブ・ワンダーナイト 2010】(4/5 ページ)
社会的メッセージの表現として──「Ulitsa Dimitrova」
Lea Schonfelder氏とGerard Delmas氏は、2人ともにドイツからの来日で、今回は社会へのメッセージ表現としてのゲームを発表する。そのタイトル名は「Ulitsa Dimitrova」だ。タイトル名は、ロシアのサンクトペテルブルグにある、道の名前だそうだ。主人公はこの町に住むピョートルという名の7歳の少年で、典型的なホームレスの少年が、メルセデスベンツのマークを盗んだりしている。そしてその盗んだものを使って、町の人々と物々交換をする。アル中の娼婦が立っていたり、7歳だけどタバコを買えたり、ずいぶんと荒んだ「Ulitsa Dimitrova」の模様を描いている。
プレイヤーはこの道をずっと歩いていくことができ、主人公ピョートルの生活を見ることができる。しかし何もアクションをせず放置すると、ピョートルは疲れ、その場に眠ってしまう。次第に雪が積もっていき、最後には凍死する。プレイをやめた時点で、このゲームは終わりなのだ。
Gerard Delmas氏によるとこれはあたかも現実のようであるという。「これは無限ループのようなもので、今の社会というものを反映しているわけですが、そのキャラクターというのは、ずっと努力をし続けなければならない。もし努力をやめたら、現実同様にお終いということになってしまいます」Gerard Delmas氏はそう解説する。
またLea Schonfelder氏は「このゲームのコンセプトは、実際の体験に基づいています。私の弟が、サンクトペテルブルグにおいて、市民活動をしていました。そして私がたまたま弟を訪ねたところ、いろいろとロシアの印象を受けたわけです。弟が言うには、ホームレスの子供は街頭で凍死することがある、ということでした。それがソースとなったわけです」と語る。生々しいロシアの現実、さらにロシアは最近、ゲームというものを抑えるような動きがあるというのも、印象的な動きだったとのこと。先ほどGerard Delmas氏が言ったように、現実同様、何もしなければピョートルは死んでしまう。生き残るためには盗みを働いたりして、生活の糧を得なければならない。
話を聞く限りでは、何か強いメッセージ性を秘めているように感じたが、「このゲームで、サンクトペテルブルグの現状を、改善しようとか、そのような目的があるのか?」という質問に対してLea Schonfelder氏は「私はただ単に、ピョートルという少年が、生きるための行動、生活を示したかっただけです。何もしなければ死んでしまう悲しい結果になりますが、彼は生活の中で、楽しいことも経験できるのです。私はこの作品を、プロパガンダのようには思っていません」と答えた。
ギリシャ神話をモチーフに、ハープで感情を表現する「Orfeo: a Game in music」
シンガポールの大学で助教授をしているRoberto Dillon氏は音楽ゲームとしての実験的なものとして、「Orfeo: a Game in music」を作ったそうだ。ギリシア神話のオウィディウスの「転身物語」から基づく物語を元に作られている。オルフェオは妻エウリディーチェを黄泉の国から取り戻すため、自ら黄泉の国に降りる事を決意する、というストーリーだ。
プレイヤーは、オルフェオの竪琴を奏でることで、復習の神や地獄の門番などを静め、エウリディーチェの元へと進んでいく。プレイヤーは竪琴を演奏するわけだが、竪琴の弦の位置で音量を変えたり、弦を弾くスピードを変えたり、スタッカートを用いると、現在奏でている音はどの感情を表せているのかというのが、ゲームのインターフェースに表示される仕組みになっている。
感情の分類は「幸福」、「悲しみ」、「怒り」、「恐怖」で分類されている。レベルごとに必要な感情を竪琴で表せれば、次のステージに進むことができるのだ。ただ、筆者の聞いた感想だと、演奏する音楽の内容が露骨に変わるわけではなく、わかる違いといえば、弦を弾く早さと音量くらいであった。なので、自分であたかも悲しい音楽を演奏するとか、楽しい音楽を演奏するなどは、ゲーム内ではそのような感情で処理しているだけで、耳に入る曲調は変わらない。
あくまでも、「音楽で感情を表現し、プレイするゲーム」として、「Orfeo: a Game in music」が作られている。「普通音楽ゲームというのは、リズムにあわせるとか、正確に演奏することを求められるが、これは凄く新しい」とのコメントもあった。
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