第16回:ゲームは見た目がすべて!? ひと目でプレイヤーを虜にするデモ画面の工夫なぜ、人はゲームにハマルのか?(3/6 ページ)

» 2012年02月10日 17時45分 公開
[鴫原盛之,ITmedia]

プレイヤー以外の人を楽しませるのもデモ画面の大事な「お仕事」

 デモ画面はゲームの内容を説明するのと同時に、見ている人の目を楽しませる効果も大いにあります。なお、ここで言う「人」とは直接そのゲームを遊んでいるプレイヤーだけでなく、その周囲で画面を眺めていたり偶然通り掛った人も含みます。

 その端的な例として、冒頭に続いて「スペースインベーダー」のデモ画面を再度取り上げてみましょう。本作には、実はスコア表示とは別にもうひとつ面白いアイデアが盛り込まれています。過去に本作をプレイしたことのある人はいったいそれが何だったのか、ちょっとここで思い出してみてください。もう昔のことなので忘れてしまったよという方、答えは以下の動画をどうぞ!

※プレイステーション2版「タイトーメモリーズ上巻」 を使用
(C)TAITO CORP. 1979-2005

 もうお分かりですね? その答えは、「PLAY」の「Y」の文字だけが上下逆さまの状態で表示され、これを画面外から飛び出してきたインベーダーが正しい向きに直すユニークな演出があることです。こんな変わった場面を一度でも目撃した人は、きっとゲームの存在を容易に忘れることができなくなるハズ。例え英語で書かれたタイトルロゴや説明文が一切読めなかったとしても、その存在自体を覚えてもらうには十分な宣伝効果があると言えるのはないでしょうか?

 さらに画面をよく見ると、倒すと高得点が入る敵のUFOの得点表示が「MYSTERY」と書かれていることに気づきます。何やら開発者からの、「いったい何点入るかは遊んでみてのお楽しみ!」というセールストークが聞こえてくるかのようですね。

 また、ナムコが1982年に発売したアクションゲーム「ディグダグ」のデモ画面には、主人公が地面を掘った後にタイトルロゴがゴトンと落ちる愉快な演出があり、思わず目を奪われてしまいます。

 この他にも、サッカーゲームではデモ画面中にプレイヤーが実際に遊んだときのゴールシーンを再度流したり、対戦格闘ゲームでは各キャラクターごとにプロフィールや人気ランキングを表示するなど、そこを通り掛かった人が少しでも目に止まるよう工夫を施している作品がいろいろあります。みなさんもゲームセンターに行く機会があったときには、ぜひ各タイトルごとのデモ画面にも注目してみてください!

※PS版「ナムコミュージアムVOL.3」を使用。
(C)1996 NAMCO LTD., ALL RIGHTS RESERVED.

 また、デモ画面にはプレイヤーの目と同時に耳も楽しませるという面白い例もあります。以下の動画は、ナムコが1984年に発売したシューティングゲームの「ギャプラス」ですが、本作ではショットを発射したり敵を破壊したときの音がデモ画面では一切流れません。ですが、例外として敵を捕まえる効果がある「ファランクス」というパワーアップを装着したときのビーム発射音と、チャレンジングステージでスコアをカウントするときの音の2種類だけは音が鳴るようにしてあります。では、なぜデモ画面ではわざわざ本来鳴らすハズの音をあえて出さないのでしょうか?

 その答えとして考えられるのは、ひとつは店員が各機械ごとにデモなのか稼働中なのかが区別しやすく、なおかつ故障していないことを確認できるようにすること。そしてもうひとつは、特定の場面だけ音を鳴らすことで通り掛かった人に「何だ今の音は?」などと驚かせ、その存在にすら気づかなかった人をも反射的にゲームのほうを振り向かせる効用があるからでしょう。これはすでにご紹介した、「ギャラガ」や「ディグダグ」「バブルボブル」でも同様です。みなさんもぜひ、動画を再生した状態でブラウザを隠し、突然音が鳴ったときのインパクトを確かめてみてください。

※Wiiバーチャルコンソール版を使用
(C)1984 2009 NBGI

 このような普段の私生活ではまず聞く機会のない、個性的な電子音を利用して客の興味を引き付けるアイデアは「アイキャッチ」ならぬ「イヤーキャッチ」効果とでも名付けることができるでしょうか? ちなみに、「ギャプラス」の発売当時にゲームセンターで働いていた経験を持つ筆者の知人は、「いまだに『ファランクス』の音が耳に残って離れない」と証言しています(笑)。

 また、ある著名なサウンドコンポーザーからは「アーケードゲームのサウンドを作るときは、いかに聞いた人の耳に残る音を作れるか、他のゲーム機が鳴らす音と交ざってもしっかり聞こえる音が出せるかにいつもこだわっている」というお話をお聞きしたことがあります。こんなところにもプレイヤーがゲームにハマルきっかけ作りの秘密が隠されいたとは、なんとも深〜いお話ですよね!

 この他にも、ハイスコア達成者や成績が上位のプレイヤーのスコアおよび名前をデモ画面で表示するのも昔からよくあるパターンです。これはプレイヤーにそれまでのハイスコアを抜くというひとつの目標を提供することによって競争意識をあおり、インカム(売上)アップにつなげる狙いがあります。現在ではこれをさらに発展させ、オンライン対応のゲームであればプレイヤーごとの全国ランキングを集計して表示したり、ライブモニターを使用して上手なプレイヤーのリプレイ映像や期間限定イベントの告知などをデモとして流し、ゲームの魅力がより伝わるように工夫を凝らしています。

 なお、ハイスコアについては第2回の当コラムのテーマとして取り上げていますので、ぜひこちらもご覧になってみてください。

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