マジシャン泣かせなネット配信だけど――伝統芸能「手妻」の若き継承者はニコ動で羽ばたく実はニコ厨(2/2 ページ)

» 2011年11月29日 11時00分 公開
[笹山美波,ITmedia]
前のページへ 1|2       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 実際、会場には一般客用の250席が埋まるほど人が詰めかけていた。公演前に藤山さんが「許可の無い写真撮影、スマフォやタブレットなどでの動画視聴はどんどんやってください。Twitterでつぶやく際のハッシュタグは〜」と案内すると、笑ったりスマートフォンを取り出したりする人が半分ほどいた。公演の合間には、プロジェクターでニコ生の画面を映しながらトークしたり、ニコ生のアンケート機能を使ってネットの視聴者と掛け合いしたりする時間もあった。

 ニコ生の来場者数は3758人、コメント数は8367件に上り、大いに盛り上がった。藤山さんはニコ生について、コメントで盛り上がりを可視化できるのが魅力だと、熱く語る。公演を会場で見ると楽しいのは「みんなで一緒に見て、一緒に拍手をして盛り上がるから」。同じような環境をニコ生でなら再現できると感じている。


画像 会場には満席に近いほどの来場者が詰めかけた
画像 藤山さんは公演前の挨拶で「たばこ吸われる方、シーシャ吸われる方は外へ行ってくださいね」と笑いを誘い、会場も視聴者も大喜びだった
画像 公演は三味線演奏家の杵家七三さんと共同で開催。2部構成で、第1部を杵家さんが務め、「剣の舞」や日本の民謡を演奏した。杵家さんも藤山さんの影響でニコニコ動画に演奏の動画を投稿している


画像 演目の合間のトークでは、舞台に設けたプロジェクターでニコ生の放送を投影。藤山さんが「ぬるぽ」と言うと、動画には「ガッ」とたくさんのコメントが流れた。“ニコ厨”である藤山さんならではのパフォーマンス
画像 第2部では杵家さんらの演奏に合わせ、藤山さんが手妻を披露。紙が卵やひよこに変化する手品「慶紙の扱い」をはじめ、お客さんとコミュニケーションしながらトークマジックを披露
画像 全ての演目が終わり、ほっとした表情の藤山さんと杵家さん。藤山さんは「演出、広報、チケット、照明、表方から裏方まで全てやってまいりました」と制作秘話を明かす

動画が取得できませんでした

4色の砂を水を入れた器に全て入れて、別々に取り出す手品「四色砂」

動画が取得できませんでした

複数の金属の輪っかで知恵の輪のような演技をする「金輪切」

動画が取得できませんでした

ニコ動でも有名な「ダブルラリアット 回ってみた」こと「金輪舞」!

「動画配信は本来マジシャン泣かせなものでございます」

画像 藤山さんは動画の再生回数が伸びるほど「困る」そう。なぜなら「次の動画でそのPVを抜けるかなぁと不安になるから」

 藤山さんいわく、手妻は今「人気も認知度もない」状態だ。手妻を盛り上げるためには、動画配信などの手段で手妻を見たことのない人との接点を広げることが重要だと考えている。だが、動画配信は本来「マジシャン泣かせ」なもの。繰り返し視聴したり、コマ送りしたりできるため、見れば見るほど手品への驚きが減る上、タネがばれる可能性もある。それでもニコ厨な藤山さんは、手品師として動画配信にどう向きあうか考え続けてきた。

 解決のヒントとなったのは、「新世紀エヴァンゲリオン」や「攻殻機動隊」など、藤山さんが何度見ても飽きないというアニメたち。ストーリーにたくさん盛り込まれた伏線が「繰り返し見るほどに魅力を発見できる」という面白さを引き出していると気づいた。そして手妻にも同じように伏線の要素「見立て」があることを思い出したとき、この特徴を生かせば手妻も「時代に適応できる」と確信したという。

 見立てとは、手妻を繰り返し見ると発見できる細かな仕掛けのことをいう。例えば「蝶のたはむれ」という演目は、扇子で紙切れを落ちないように飛ばしているだけに見えるが、紙切れを花に乗せることで蝶をイメージさせている。2枚になった紙切れが、雄と雌の蝶だとすると、2枚の扇子で重ね合わされた型は「蝶の結婚」にも見える。そして、演目の最後にまかれる紙吹雪は2匹の蝶の子供たちを示す、といった具合に描写が奥深いのだ。

 藤山さんは、手妻を繰り返し見ていくうちに「何かの見立てに気づくことが面白く、その見立てに気づくことで別の見立ての型が見えてくる。その気づきこそが魅力」と語る。記者もそう言われると「そういえば」と演目を思い出し、もう1度見てみたくなった。もちろん、型や所作の美しさも「何度見ても飽きない手妻の魅力」の1つだ。

 ネットでの動画配信は「テレビで自分の特番を組まれるのと同じくらいの価値がある」と話す。今後もにぎわい座でライブ配信できるよう働きかけるつもりだ。ほかの手品師に対しては「(ネタがばれるのを)怖がらずにどんどんやるべき」とエールを送る。これからは「ネットに対応した芸を育てる」という目標も掲げている。

「皆さんもっと僕で遊んでください」

 “よきニコ厨”として、伝統芸能・手妻の継承者として、手妻を「現代に生かすため」にニコ動を利用し奔走する藤山さん。インタビューの最後にニコ動の視聴者や、ねとらぼ読者にメッセージをお願いしますと言うと、「皆さんもっと僕で遊んでください」とお決まりのドヤ顔で、芸人らしくオチをつけてくれた。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2407/24/news014.jpg 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  2. /nl/articles/2407/25/news017.jpg 「これが生えたら庭終了」 プロも降参する“何をやっても全部ムダな最恐雑草”の正体が400万再生「ほんとこれ厄介」「土ごと変えないと不可能」
  3. /nl/articles/2407/26/news151.jpg イトーヨーカドー春日部店が閉店へ 「クレヨンしんちゃん」に登場するスーパーのモデル 「残念」「寂しい」惜しむ声
  4. /nl/articles/2407/25/news012.jpg 夜、山中の側溝をのぞいてみたら…… 思わず声がもれる“あらぬ生物”の姿に「ヤバいw」「生で見てみたい」
  5. /nl/articles/2407/25/news007.jpg 水槽の中で卵を発見→慎重に見守って1カ月後…… 小さな命の誕生に飼い主も視聴者もメロメロ「まじで可愛すぎるほんとに可愛い」
  6. /nl/articles/2407/25/news138.jpg 「お父さんはママのオタクだった」 母親が「元・おニャン子」のタレント、アイドルとオタクが“つながっちゃいけない理由”を問いかける
  7. /nl/articles/2407/25/news050.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」 中1の“斜め上の解答”に「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」
  8. /nl/articles/2401/26/news015.jpg スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
  9. /nl/articles/2407/26/news119.jpg 工藤静香、15歳の愛犬が天国へ 感謝の言葉つづるも……「泣いてばかり」「心が追いつかない」と悲痛な思い
  10. /nl/articles/2407/26/news008.jpg 外国人が来日して“3年後”…… マクドナルドの“オーダーの変化”に「胃袋が日本人のそれなんよw」とツッコミ
先週の総合アクセスTOP10
  1. プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが360万再生「凄すぎて笑うしかないww」「チーズが、、、」
  2. 6年間外につながれっぱなしだったワンコ、保護準備をするため帰ろうとすると…… 思いが伝わるラストに涙が止まらない
  3. 「お釣りで新紙幣来た!!!!!と思ったら……」 “まさかの正体”に「吹き出してしまった」「逆に……」
  4. 赤いカブトムシを7年間、厳選交配し続けたら…… 爆誕した“ウルトラレッド”の姿に「フェラーリみたい」「カッコ良すぎる」
  5. ダイソーで買った330円の「石」を磨いたら……? 吸い込まれそうな美しさが40万回表示の人気 「夏休みの自由研究にもいいのでは?」
  6. 「これ最初に考えた人、まじ天才」 ダイソーグッズの“じゃない”使い方が「目から鱗すぎ」と反響
  7. もう笑うしかない Windowsのブルースクリーン多発でオフィス中“真っ青”になった海外の光景がもはや楽しそう
  8. アジサイを挿し木から育て、4年後…… 息を飲む圧巻の花付きに「何回見ても素晴らしい」「こんな風に育ててみたい!」
  9. スズメの首は、実は……? 「心臓止まりそうでした」「これは……びっくり!」“真実の姿”に驚愕の声
  10. 【今日の計算】「8×8÷8÷8」を計算せよ
先月の総合アクセスTOP10
  1. 18÷0=? 小3の算数プリントが不可解な出題で物議「割れませんよね?」「“答えなし”では?」
  2. 日本人ならなぜかスラスラ読めてしまう字が“300万再生超え” 「輪ゴム」みたいなのに「カメラが引いたら一気に分かる」と感動の声
  3. 「最初から最後まで全ての瞬間がアウト」 Mrs. GREEN APPLE、コカ・コーラとのタイアップ曲に物議 「誰かこれを止める人いなかったのか」
  4. 「値段を三度見くらいした」 ハードオフに38万5000円で売っていた“予想外の商品”に思わず目を疑う
  5. 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
  6. かわいすぎる卓球女子の最新ショットが730万回表示の大反響 「だれや……この透明感あふれる卓球天使は」「AIじゃん」
  7. 「これはさすがに……」 キャッシュレス推進“ピクトグラム”コンクールに疑問の声相次ぐ…… 主催者の見解は
  8. 天皇皇后両陛下の英国訪問、カミラ王妃の“日本製バッグ”に注目 皇后陛下が贈ったもの
  9. 「この家おかしい」と投稿された“家の図面”が111万表示 本当ならばおそろしい“状態”に「パッと見だと気付けない」「なにこれ……」
  10. 和菓子屋の店主、バイトに難題“はさみ菊”を切らせてみたら…… 282万表示を集めた衝撃のセンスに「すごすぎんか」「天才!?」