若者に広がる“リア充”動画アプリ「MixChannel」はなぜ成功したのか(4/4 ページ)
目指すは“リア充”のニコニコ動画!?
取材中、福山さんは「なぜ、他社はこういう作り方をしなかったんでしょうね」と首をひねっていた。一方で、コミュニティ育成のベンチマークにしているサービスとして、意外な名前を挙げた。それは、ドワンゴの運営する「ニコニコ動画」である。だがオタク向けという印象の強いニコニコ動画から、MixChannelが何を学ぶというのか。
「ニコニコ動画の設計は非常に日本的で、MixChannelとしてもかなり参考にしています。非リアとリア充みたいな差があると思いますが、結局、MixChannelもニコニコ動画も、ネット上で大きく反応をもらいたい人に向けて、最高に気持ちよくなれるサービスを作っているんですよ」(福山さん)
そもそも福山さんによれば、もはや今の10代にとってのリア充を「上の世代の発想でとらえてはいけない」という。というのも、彼女らは“オタク”っぽいのだ。
「だって、スマホを1日中いじっていて、暇な時間は複数のアプリを駆使して、ひたすら画像加工をしているような人たちが“リア充”と呼ばれているんですよ。それって上の世代の感覚で見たら、本当に“リア充”なのかという話ですよ(笑)。見方を変えたら、オタクですよね。最近は、もう動画編集アプリの需要まで高まっており、そのへんの女子高生がプロ並みの編集をしたりしますからね」(福山さん)
また、MixChannelはサービス開始直後、読者モデルとの連携企画を行っている。読モと言えば、上の世代には雑誌文化と結びついた、華やかなマスメディアの存在というイメージがあるかもしれない。だが、福山さんは「現在の読モの実態は、ほとんどネットアイドルで、情報発信もネットがメイン。歌い手や踊り手のような人たちと同じ」と言う。
「実際、人気の読モって、しょっちゅう自分のブログやTwitterを更新していますからね。Twitterのフォロワー数も30万人だとかで、すぐに画像が500RTされたりします。ネット上での影響力という点では、もう普通のテレビタレントよりもはるかに大きいですよね」(福山さん)
黒板アニメになっている
※左上のスピーカーボタンをクリックすると音が出ます
ちなみに、こういう人気のあり方はその規模感も含めて、やはり中高生に人気がある、ニコニコ動画の歌い手や実況者によく似ている。しかもMixChannelで活躍する投稿者の遊び方も、ニコニコ動画にそっくりだという。
「ニコニコの“やってみた”という文化は、ネットの遊び方の本質をよく表していると思います。すごく個性的な表現が出てくるというよりは、誰かがやった面白いことを、みんなで真似する文化なんですよ。それがジャンルになって全体として盛り上がっていくのであって、それはMixChannelも同じです。実は、カップル動画がメディアでは面白がられますが、本当はやってみた系の動画のほうがずっと多いんですよ」(福山さん)
集団で並んで、ひざカックンをする動画が流行している
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「日本中の面白い中高生が集まる場所にしたい」
では、そんなMixChannelが目指すのはどういう場所なのか。マネタイズについて聞くと、企業がスポンサードできる仕組みや広告を入れる予定はあるが、芸能界デビューや商品プロモーションのような話が舞い込むような状況には慎重になりたいという。
「それをアグレッシブにやってしまうと、この場所の意味が変わってしまうと思うんです。実際、トップのユーザーが宣伝ポストばかりしているブログサービスってありますよね。同様に、YouTuberみたいに特定のユーザーを推すことも今は考えていません。僕らは特定の主役がいないお祭りをやっているんだと思います。その意味では、東京ガールズコレクションなどの特定のクラスタの巨大イベントにイメージが近いかもしれないです」(福山さん)
ちなみに、学生向けのサービスと言えば、日本のネット業界には3年周期でサービスが衰退していくという俗説(?)がある。これについてはどう思うのか。すると「普通に考えたら、このサービスは1年で消える類のものなので、まずはそこを頑張る必要があるのですが(笑)」と苦笑しながらも、福山さんからはこんな返答が返ってきた。
「妙な言い方ですが、学校を卒業したら、その思い出とともにユーザーが卒業するサービスになれたらいいな、と思っています。それで、代わりに新しい高校生が毎年入ってきて、たとえば地方の子がある日突然、一躍有名人になるんです。そんな感じで、いつも日本中の面白い中高生が集まっているような、とにかく濃い場所になれたらいいなと思いますね」(福山さん)
(稲葉ほたて)
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