清澄白河の知る人ぞ知るみやげ屋名物「ちょんまげおじちゃん」には人を引き寄せる魅力があった
古き良き街のおじちゃん。
優雅な時間が流れる清澄白河――古きよき風情を残す街並みとスタイリッシュなカフェが織りなす、今や大注目のスポット。この街にある江戸資料館通りを散策していると、あれ? ちょんまげ姿のおじちゃんが……。しかもニコニコして、こっちを見ている。
不思議な気分になったものの、おじちゃんに呼ばれたかのように店の前まで行くと、何屋さんだか分からないほど、いろんなものが店先にありました。
店の正体を確かめようと、のれんを見あげます。そこには逆さまに書かれた文字が。ひらがなを覚え始めた子供のように一字ずつ読み上げました。「日本一まずい佃煮でごめんね」。どうして逆さまののれん何だろう? しかも「日本一まずい」って……。疑問を抱えながら、ショーケースに目を落とせば、確かにさまざまな佃煮が並んでいました。
どんな店か分かり安心した矢先に、おじちゃんが「買わなくていいから、中も見てって」と声をかけてきました。「買わなくていいから……」、なぜか頭の中でリフレインした言葉。またもや吸い込まれるかのように中へと入っていくと、
店内には所狭しとでカラフルな手拭や和小物などがびっしり並んでいました。
この間、おじちゃんは相変わらず、道行く人に「こんにちは」と声をかけています。店の中に入ってくる気配は一切ありません。
奥にいたおばちゃんに話しかけてみると、子どもたちの買い物どころである駄菓子コーナーに以前置いてあった落書き帳を見せてくれました。これらを書いた常連キッズは、十数年後、自分の子供と一緒に訪れてくるそうです。どうやらここは子どもたちの憩いの場だったようですね。そして今も。
ひと通り物色して出入口に向かうと、「どこ行くの? どこか探してる?」とおじちゃん。「コーヒー屋さんに行こうと……」と私。すると、棚の間から紙を取り出し見せてくれたのは、カフェやスイーツなど、カテゴリーごとに色分けされた地図。とっても可愛らしく、プロが作ったマップと思いきや、なんと、おじちゃんのお手製でした。
地図を片手に、ここはこんなところだよと説明してくれて、隅から隅まで優しいおじちゃんにすっかり心を掴まれた私は、おじちゃんと会話を始めました。
聞けば、28年前にオープンした「江戸みやげ店たかはし」。夫婦二人で切り盛りしながら、冠婚葬祭以外は休まずに営業しているとのこと。え? 無休! じゃ、そのちょんまげのカツラも無休? なんて思って尋ねたら、「もちろん、休みなくかぶっていますよ」と満面の笑みで話しました。なぜ? と、誰もが思う疑問を投げかけると、通りすがりの人がきっかけをくれたそうです。
昔この地域では、街おこしの一環でカゴに人を乗せて運ぶといったイベントを毎週行っていました。江戸の雰囲気を出すために担ぐ人は衣装をまとって、カサやカツラをかぶったのだといいます。おじちゃんもカゴ担ぎに参加し、汗びっしょりになったカツラを店先にポンと置いていた、ある日のこと。通りかかった外国人がそのカツラをヒョイッと持ち上げ、スポッとかぶり、ワハハワハハと大はしゃぎしたのです。おじちゃんは「あの汗だくのカツラを。しかもあんなにうれしそうに……」と目が点に。しかし、このあとおじちゃんにアイデアが浮かびます。こんなに人が喜ぶなら、と。そしてその日以来、自らカツラをかぶり、店に来た人にもカツラを貸し出して記念撮影の無料サービスをしたそうです。意外なエピソードに私のほうが目が点でした。
さらに、おじちゃんは南京玉すだれの芸を披露してくました。その腕前はプロ顔負け! おばちゃんが店の商品にと買ってきたコレでおじちゃんが店先で遊んでいたところ、通りすがりの人が技を教えてくれたそうです。これまた通りすがりのお方。それから浅草の大道芸一座などを見て学び、技術を身につけ、さまざまなところから芸を披露してほしいと頼まれるまでになったとのこと。
そして、おじちゃんは芸だけでは飽き足らず、南京玉すだれを自分で作ってしまいました。今では店の看板商品となるくらい見事なものです。店頭には飾っていないので、欲しい方はおじちゃんに伝えてと言っていました。
店内の天井を見たかい? と聞かれたので、もう一度中に入って見上げると、手ぬぐいが整列。そして壁にはハンカチ。この商品が売り出されたころから貼り付けてあるそうです。デザインがなかなかよく、欲しいなと思っても、この位置から外して欲しくない気持ちの方が先立ってしまう商品でした。
その一角にある浮世絵のハンカチを指差し、おじちゃんが「これがこの店の第1号商品」と教えてくれました。これもきっかけは通りすがりの人だとか。
このほかにも“通りすがりの人”の逸話がたくさん! そうした話を丁寧に教えてくれるおじちゃんの信夫さん。そしてそれを支えるおばちゃんの民子さん。お二人は御年74歳です。毎日店の前を通る人との縁に感謝し、悪いこともいいことも「みなさんのおかげさま」と思って過ごしているのだそう。その心の在り方が人のハートをつかみ、通り過ぎようと思ってもついつい引き寄せられて、店の前で立ち止まってしまうのかもしれません。みなさんにも一度訪れてみて欲しい場所です。
ちなみに前後上下逆さまになった「日本一まずい佃煮でごめんね」ののれんは、「日本一おいしい佃煮」を遊び心で表現したと思われます。
江戸みやげ店 たかはし
東京都江東区三好1-8-6(深川江戸資料館通り)
03-3641-6305
(茂木宏美/LOCOMO&COMO)
関連記事
- 昭和の香り漂う喫茶店「カド」。入ってみたら……想像を絶する異空間だった!
古き良き。 - 昭和生まれの大きなお友達大歓喜! 懐かしの「10円ゲーム」を書籍にまとめた著者にいろいろ聞いてみた
ぜひ文化遺産に登録してほしい。 - ギャルブーム時代にタイムスリップしたみたい!? ガングロ店員だらけのガングロカフェに行ってきた
絶滅したかと思われたガングロギャルはまだ存在していた! - 鳥取のご当地珈琲店「すなば珈琲」は、例の大型ライバル店の鳥取初進出に何を思う? 思いのたけを聞いてみた
スタ○が出店しても、すなばのことは嫌いにならないで下さい! - セガールは水戸黄門? 放送時間が拡大した「午後のロードショー」、その番組構成の工夫を聞いてみた
熱狂的なファンも多い番組です。 - とうらぶユーザーが三日月宗近公開の東京国立博物館に殺到しルール無視? 実際のところどうだったのか博物館側に聞いてみた
ガラスに指紋? 動かない? ついには撮影禁止なんて事態も? - 「ぽたぽた焼」おばあちゃんの変化にTwitter民びっくり 長年の“手焼き”をやめた理由は?
亀田製菓「おばあちゃんのぽたぽた焼」。イラストのおばあちゃんがとっくに手焼きをやめていたとTwitterで話題に。 - 「千葉では小中学校の出席番号が誕生日順」Twitterで話題に 本当か千葉の教育委員会に聞いてみた
ええっ、名前の五十音順じゃないの? - 「年齢は関係ない」――アニメファンを「卒業」しないドイツの大人たちに会ってきた
ドイツ最古のアニメファンクラブが主催するイベント「アニメマラソン」。そこは30代や40代の「大人」なアニメファンが集まる落ち着いたイベントだった。 - 「ビスコ坊や」が実は女の子か男の娘だったとTwitterでうわさに 真相を江崎グリコに聞いてみた
「ビスコ」に描かれた笑顔の子ども、男の子じゃなかったの??
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
-
「玄関にでっかい亀梨居る」 亀梨和也がまさかの誤字に「なんかごめん」と謝罪 突然の本人登場に「これ笑ったw」「そりゃビックリする」
-
実家を探索中に発見した30年前のカーディガン、娘が着てみると…… 意外な結果に「昭和世代の服はガチモン」「おかあさん尊敬」
-
小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
-
沖縄の「廃墟ホテル」をリノベ中、ミステリアスな事態発生→壁を壊してみると……「ヒェッ」 めげない投稿者に「ポジティブですごい」と称賛
-
【今日の計算】「6×11÷3−2」を計算せよ
-
「北朝鮮のアニメーターが関与疑い」報じられたアニメ制作元がコメント 「事実関係を調査中」
-
「虎に翼」出演俳優、桜井ユキの結婚相手は誰? 2022年にドラマ共演者と結婚発表
-
【今日の計算】「2+13×2−6」を計算せよ
-
東京メトロ、東西線の一部期間終日運休を“まさかの方法”で告知 「これで知らなかったとは言えない」
- 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
- 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
- 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
- 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
- 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
- 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
- 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
- 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
- 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
- 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
- フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
- 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
- スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
- 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
- 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
- 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
- がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
- 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」