学校で生きることは戦うことだ 「星野、目をつぶって。」星野海咲のメイクと青春の疾走:あのキャラに花束を
君は人のために、ドロップキックできるか。
高校デビュー、大学デビューなんて言葉があります。今まさにリアルタイムで実行中の新入生さんも多いのでは。
かつての自分をいったん隠し、新しい自分として再スタート。一層元気に生きていこう、という決意。毎日が戦いだ。
『星野、目をつぶって。』は、高校という生きていくには過酷な場所で、人気者の美人ギャル星野海咲(ほしの・みさき)と、学校の生徒たちに嫌気がさしている少年・小早川を中心に描く、群像劇。
リア充も、オタクも、体育会系も、文化系も、黒ギャルも、白ギャルも。みんな「学校」という空間で、悩んでいる。
星野、ばれたらやばいって
クラスのトップリア充グループに所属している、星野海咲。華やかな美人で、グループの中でもひときわ目立っている。
しかし、彼女には秘密がありました。その派手さは全て、メイクによるもの。すっぴんになると、全然目立たないういろう顔。別人すぎて、学校の誰も気付かないほど。
別人になっちゃうメイクってマジであるんですよねえ……。もともと彼女は元気で明るい子。それはメイクをしてもしなくても、ほぼ変わらない。ただ、過去にちょっといろいろあったこともあり、中学時代にメイクをしたことで、自信がついた。メイクをしていれば、自分本来の明るい気持ちを、そのまま出せる!
かくして、絵のうまい小早川が引っ張り出されて、星野にメイクをするハメになったのでした。
なるほどメイクが大事なのはわかった。でもバレたところで、問題ないんじゃないの? 友達ってそのくらいで離れないでしょ? 人間関係でうだうだやっている高校生が大嫌いな小早川は、言います。
小早川「オシャレじゃないとダメ!? 可愛くないとダメェ!? バカか!!! 自分は自分だろ!! コソコソ隠れて他人の顔色うかがったり! 他人に合わせて自分を無理矢理変えたり!! そういう生き方疲れねェか!?」
星野「ほんとの自分じゃないかもしれないけど、みんなもあのあたしを好きになってくれるんなら、あたしはあの姿で居続けたい。誰になんと言われようと、この生き方を変える気はないから」
星野の正義感
星野海咲は、正義感が異常に強い子。頭がいい方ではないというか、バカです。だから小早川と違って、理屈で考えることをしません。感覚で動きます。
学校の中では、いじめなど理不尽なことは山ほどあります。これについて、どういう関係なのかとか、人にどう見られるかとか一切考えず、星野はこうする。
問答無用でドロップキック!
誰かが困っていたら後先顧みず助けに行く。正義の味方を気取ってはいません、バカだから。勝手に身体が動いちゃう。高い橋から飛び込もうとしたこともある。死ぬぞ!
彼女は大抵メイクを取った状態で突撃します。バレないようにというのと、激しく動いてメイクが落ちるのを防ぐため。だから、小早川はその後の再メイク要員。最初のうちはしぶしぶだった小早川も、星野の人のために動ける力と信念を感じるうちに、彼女のために自らメイクを施してあげるように。
メイクをすれば、帰る場所がある
「メイク」は一般的には、自らを飾るもの。きれいに見せるためのもの。取った状態が「素」。星野の感覚は、ちょっと違います。
星野「メイクしてるあたしがいるから、メイクすれば安心して帰れる場所があるから、あたしは思いっきり走れるんだよ」
メイクしている状態は「自宅」であり、こっちが「素」。むしろメイクしていない方が戦闘状態という逆転現象になっている。実際、すっぴんで人助けに行く彼女の行動って、ヒーローがマスクをかぶって戦うのと逆ですよ。
もちろん「かわいいからメイクが好き」というのが最前提なんだけれども、人に合わせるための擬態じゃない。
彼女がこんな風になったのには、ちょっとどころじゃない理由があった様子……ですが今は語られていません。ただ、「絶対見て見ぬ振りはしない」という自分ルールは、星野のみならず、小早川にも伝染していきます。
みんな悩んでいる
このマンガはいじめる側、いじめられる側を、並列に描いています。もちろんいじめるのは絶対的に悪い。ただいじめる側の心の歪みには、理由があるはずなのも見捨てない。いじめられている側には手を貸す、いじめてる側のことをバカにしたりしない、というところは、この作品絶対ぶれないのがすごい。
一方でリアクションしない側、見て見ぬ振りをする人間には非常に手厳しい。みんな悩んで戦っているのに、その外側から、あたかも自分は関係ない、という様子でバカにするのは、星野も小早川も絶対認めない。もちろんそれらの人が少しでも心を動かしたら、星野はすぐ手を差し伸べる。
ぼくがこの作品で、すげーなと心の底から思っているのが、いじめっ子だった黒ギャルの加納愛那果(かのう・まなか)の話。さっきの、ドロップキックかまされている子です。
星野と小早川の友人松方いおりをいじめており、学校中から全然信頼されていない素行不良の少女。しかし彼女「見て見ぬ振り」な生徒たちに手のひらを返されて、いじめられる側に転落。ギャル友達もあっという間に離れてしまい、一人ぼっちのヒールに。
彼女のメイクは、擬装。毎日わざわざ肌を黒く塗って、化粧をこれでもかと施して。みんなと距離を置くための、強がりの、威嚇の仮面。私は黒ギャルだから、という言い訳の装甲だ。
加納「ムリだ…私にはこの生き方しかできない」
ポジティブのためのメイクをする星野と同じような言葉なのに、意味が全く逆です。メイクを取った彼女は、誰もが認める美人なのに。
みんな救われたいけど、答えなんて無い
『星野、目をつぶって。』は、星野と小早川を中心として描かれてはいるものの、基本的にメインになる人物はバラバラ。星野が全然出てこないこともあります。
- 内気で一歩踏み出せない、おとなしい眼鏡の少女
- バレー部で1人、先輩たちからハブられてしまった少女
- 野球部で、いつも明るくて、ザ・リア充という雰囲気の少年
- 星野のことを心から大切に思っている、親友のギャルグループの子たち
- アイドルだと学校で言われるのがいやで、静かにクラスメイトと過ごしたかった少女
- 誰にも相手にされず先輩にもバカにされ続けても、好きなものはゆずれないオタク少年
みんなみんな、苦しんでる。だから星野はすぐに困っている人のところへダッシュで走っていくし、小早川は悩みつつも怒鳴り散らして叱咤激励する。頑張る人間を2人は絶対に見捨てない。
結果として、一歩前にみんな進めている……と思うんだけど、答えなんて無いよ。多分一生見つからないよ。だから、自分を保つために、スポーツをしたり、友達を作ったり、趣味を守ったり、メイクをしたりする。プラスであれマイナスであれ、みんなよろいだ。
見て見ぬ振りをせず、みんなが誰かのためにプラスマイナスにかかわらずリアクションをするよう、伝染していく。星野に助けられた人が、別の人に声をかける。映画『ペイ・フォワード』のような、善意を受けたら他の人に、というところまでは行かないけれど、誰かに優しくされた時は、他の人が困っている姿が目に入りやすくなると思うな。
それはそれとして、文化祭の後夜祭の、内輪ノリの「ウェーイ」系うぜえ! っていう小早川の鬱屈もずーっと描き続けています。だよね、簡単に「リア充とネガティブ」の壁は飲み込めないスよ。嫌いな人は当然いる。それはそれで、いいんです。ムリをしないのも大事な自己防衛。なによりウェイ系の人だって、裏では孤独かもしれないよ。
どんどん親しくなる星野と小早川の関係。なんせ今は身の回りの人のことでいっぱいいっぱいだから、自分の恋愛感情とか理解しきれない。意識はしているようです。今は、裏表全部知った上で本気でぶつかってくれる人がいるのが、なによりうれしい。
ただ、ここまでみんなのために走り回れちゃう2人、へらへら笑ったり必死になっているうちに、周囲の人から手助けが来る日も近いんじゃないかと思うし、そうあってほしい。
だから今日も1日、精いっぱい「学校」という戦場で戦えるように、メイク道具を小早川は手にする。星野、目をつぶって。
(たまごまご)
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