かつて電子書籍は「自分で吸い出す」ものだった 失われる前に書き留めておきたい、かーず式「自炊」完全マニュアル:かーずSPのインターネット回顧録
まず裸になります(半分本当)。
近ごろはめっきり耳にすることが少なくなった「自炊」という言葉。電子書籍がようやく身近になりはじめた2010年代前半、自分が持っている本を自分でデータ化する“自炊”が読書家の間で爆発的に流行した時期がありました。
「自分で吸い出す」を略して「自炊」。しかしそんな自炊も、電子書籍が普及し、最初から電子版で販売されるケースが増えてくると、わざわざ本を裁断し、1枚1枚スキャナーに取り込んで電子化するような「ガチ自炊派」は少しずつ減っていきました。
今回はそんな「自炊」時代を、まだまだ現役の「自炊er」でもある、「かーずSP」管理人のかーずさんに振り返ってもらいました。
本の置き場所がない……「そうだ、自炊しよう!」
「んー自炊って面倒くさいなー。でもやるとスッキリするんだよね」
――と重い腰を上げる、2017年の秋。
自炊といっても料理のことじゃありません。本を分解してスキャナーでデジタルデータにすることを、ネット用語で「自炊」って言います。何でそんなことをするのか。本に恨みでもあるのか。いやいや違うんです! 本を愛しているからこそなんです。
狭い部屋に本を買い続けていると置く場所がなくなります。でも本への愛着が強いために、古本屋に売るか、捨てるかのどちらも選べません。いつまでも手元に残しておきたい。でも保管場所がない。そんなジレンマを解決したのが自炊という福音でした。
タブレットで読む便利さに慣れてしまって、買ってきた本はまず自炊してから読むくらいです。柔らかいかみごたえにしてからじゃないと食べられない、アゴの弱ったじいさん化してます。
そんなの電子書籍で買えばいいんじゃないかって? ごもっとも! 今でこそ多くの出版社が電子版を出していますが、ここまで電子書籍が急速に普及していったのって、たかだか2~3年前なんですよね。
インターネットで「自炊」が注目されていたのは、2010年代前半。富士通の最強自炊スキャナー「ScanSnap」が登場してから、電子書籍が普及するまでの数年間だと記憶しています。ニュースサイトやブログのエントリを調べてみたら、2013年の記事が多かったようです。
電子書籍の普及であまり聞かなくなった「電子書籍の自炊」。ロストテクノロジーになる前に、ここに記録していきます。
明日から使える! かーず式・完全「自炊」攻略法
複雑なことはありません。本を断裁して1ページづつバラバラにする→スキャナーで読み込む→PCでファイル名をつけて保存していく流れです。時間がかかりますが、慣れてしまえばたまったアニメ録画を一気に視聴しながら並行してできるようになります。
1:本を断裁する
まず、服を脱ぎます。半分冗談ですが、断裁機で本を切っていくと冬でも汗まみれになって、本のチリで服がホコリっぽくなります。そのため自室は推奨できません。自分の場合は玄関で断裁作業をやっています。玄関でパンイチの男が刃物で作業している図。ドアをガチャって開けられたら通報案件です。使っているのは、当時の自炊er御用達の「プラス 裁断機 PK-513LN」という断裁機。今では進化した「DURODEX 自炊裁断機 ブラック 200DX」の評判がいいです。
断裁機で、本の背表紙をカットして1枚づつバラしていきます。一度にカットできる本の厚みは約15mm。角川文庫や新潮文庫は紙が薄いので、250ページくらいの本ならそのまま断裁できる本も多い。ですが普通は15mmを越えるので、本を真ん中からカッターで二分割にします。
背表紙のノリがカッターに次々と付着していくので、途中で拭き取るか刃を替えるかしないとダメです。『るろうに剣心』の志々雄真実の刀のように、斬った数だけ付着するものだと思ってください(嫌なたとえ)。
ちなみに、昔のマンガでこのノリを大量に付けていたのが富士美コミックスの成年向けマンガでした。どうりで今までページが開きにくかったわけだ……。そんな富士美コミックスもコストカットのためか、だんだんノリ量も少なくなっていったんですね。断裁して気付く出版不況の波。
本を分解してバラバラにする行為。正直、本好きにはものすごーく抵抗がありました! ずいぶん昔のこと。生協に就職したとき、畜産業者に研修体験したことがありました。その時、鶏の屠殺ができなくて半泣きになったんですが、あの時のことを思い出しちゃいました。ちなみに研修で屠殺ができる新人はほとんどいないそうで。じゃあなんでやらせようとするんだよー。
というトラウマがよみがえるくらい抵抗感のあった本の断裁。そもそも今までずっと残してきた大切な本だからこそ、手間暇かけてでもデジタル化したいわけで……愛着があるほど抵抗感が強くて、なかなか踏ん切りがつきませんでした。最初の10冊くらいまでは。それ以降は、ひたすら作業と化してガシャガシャ。キリングマシーンと化してました。人間割り切ると早いモンです。
これも時代の反映なのか、時を経るにつれて紙の質が下がって、ザラザラで厚みを帯びてくるようになっていったことにも気付きました。昔の文庫本は、指に吸いついてページがめくれる気持ちよさがあったなあとしみじみ。さっきのノリと同じく成年向けマンガも、上質な紙を使っていた時代と、不況に入って紙のクオリティーがガタッと下がった時期がまる分かりです。
この紙質問題、読んでいる時には気にも留めていなかったんですが、自炊によって本への理解が深まったのはうれしい誤算、かもしれません。
2:スキャナーでページを読み取る
断裁の終わった本を、今度はスキャナーで取り込みます。なぜ富士通の「ScanSnap」が革命的なのか。1枚1枚スキャンしていくのではなく、まとめて20~50ページくらいドカッとトレイに突っこんで、ボタン1つで次々に両面スキャンしてくれるからです。減っていったら新しい紙の束を追加で乗せていくだけなので、アニメを視聴しながら作業できるのは楽しい。
ここで注意してほしいのが、薄いカラーのグラビアページはジャミングしやすいということです。雑誌やエロ本のグラビアページのような、あのツルツルして薄っぺらい紙質です。『電撃G'sマガジン』のカラーページには泣かされました。
対策としては、消耗品である「ScanSnap」のパッドとロールを新品に交換すること。特にパッドが紙を送るキモなんですが、ここが摩耗していると、薄い紙がクシャクシャになってダメになってしまいます。
新品パッドに交換したら、しばらくは薄いカラーページのある雑誌類を優先してスキャン。摩耗していったらマンガや小説に変えていくパターン。
子供のころから集めていた『月刊コンプティーク』などは、過去の雑誌が電子書籍化されるとは思えません。紙詰まりしたら一生読み返せなくなる貴重なオタクの財産なので、慎重に作業していくうちに思い付いたノウハウです。「ちょっとHな福袋」も判型が違うからスキャンが面倒だったなあ……。
ちなみに、先ほどの「ノドにこびりついたノリ」が紙に付着したままだと、スキャナーのレンズ部分にノリが付着してみっともない線が走るんです。レンズ部分が汚れてきて線が走るようになると、内部を掃除する必要があります
シンナーとメガネ拭き用ハンカチでこの両面のレンズをキレイに拭き取ります。もう1つ、紙のチリで内部がホコリっぽくなるのも困りモノ。そこでスライム君(と勝手に心のなかで呼んでる、謎の掃除用粘液)の登場です。
こうしてペタペタと吸い付かせるだけでゴミが消えます。エアダスターはホコリが舞い上がるだけなのでNG。スライム君がベストです。
3:ファイル名を付ける
データ化する時はjpgよりも、pdfで1冊の本に1つのファイルにまとめた方が管理が楽です。それとスキャンしたファイル名を本のタイトルと作者名にリネームしていく作業は地味に面倒。必要なのは根気です! コツとしては、本をスキャンしている最中にタイトルと作者名を適当なテキストファイルにあらかじめ打ち込んでおいて、スキャンし終わったらコピペしてファイル名を変えていくと時間が効率化できます。
完成したデータはお金では変えられないものと考えて、予備のHDDを用意して二重にバックアップを取っておきましょう。
まとめ
30年以上オタクをやっていると集めた本の数も膨大で、置き場はいつも悩みのタネでした。引っ越しのたびに捨てていった本が、後からまんだらけにも置いてない、手に入らない貴重な宝物だと知った瞬間の悲しさ。手放した本を買い戻すことができずに後悔することも多かったです。
冒頭で「ロストテクノロジー」って言いましたけど、昔の写真、ノート、年賀状など大切にしておきたい、けど普段は場所を取って邪魔な紙はあるはず。
いまだに電子版を出さない出版社もありますし、プラットフォームにひも付けされる電子書籍よりもpdfにしておけば、扱いがとても便利です。手間暇をかけてでも自炊するメリットは今も多いと感じます。
部屋がスッキリして、タブレットとHDDだけで蔵書に囲まれた人生になるのですから良いことづくめです。断捨離と読書趣味を両立させる「本の自炊」。一過性のブームで終わらせるには惜しい、生活が豊かになるライフハックですよ。
(かーず)
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