「分裂」する現代クイズ番組と、『高校生クイズ』35年目への挑戦 〜『国民クイズ2.01』としての現代クイズ概論〜(5/9 ページ)

» 2017年12月23日 11時00分 公開
[伊沢拓司ねとらぼ]

高校生クイズ35年目の「挑戦」

 さて、長い長い前置きでもって、日本のクイズ番組史をおさらいするとともに「エンタメ型」「スポーツ型」というクイズ番組の2類型を紹介した。

 ここからは、これらの視点を前提に、いよいよ今年の『高校生クイズ』について論じていこう。

 ……といいつつも、論を焦ってはいけない。これまでの『高校生クイズ』の歩みを軽くおさらいしてから、本論へと突入したい。

『高校生クイズ』のあゆみ

 僕がここ数年驚かされているのは、「『知力の甲子園』こそが高校生クイズだったのに、最近は……ド畜生!」的な言説をネットなどでたまに見かけることだ。

 僕が「知の甲子園」に出ていた頃は、真逆の論説が多く見受けられた。「なんだこの学歴偏重の『高校生クイズ』は! 知力・体力・時の運! 青春こそが『高校生クイズ』なのだ!」と。もちろん彼らが今の路線に満足して黙っているだけ、ということもあろうが、まさか全く逆の意見が登場するとは。

 若い世代にとっては、むしろかつての「知力・体力・時の運」路線のほうがなじみのない番組なのかもしれない。ということで、カンタンに過去の流れをおさらいする。

 『高校生クイズ』は、1983年の大みそか番組として産声を上げた。前年には同じく大みそかに『ウルトラクイズ 史上最大の敗者復活戦』が放送され、全国での予選開催、国内移動をしながらのクイズといったフォーマットが『高校生クイズ』に生かされる形となった。

 『ウルトラクイズ』から引き継いだ「知力・体力・時の運」というフレーズを象徴するような形式が多く行われた他、3人一組という構造を生かした「チームワーク」を求めるクイズが『高校生クイズ』を特徴づけるものとなった。

 その後も回ごとにさまざまな形式が生まれた(当時から知識寄りの回もあった)が、基本的には負けた高校生の青春模様やハプニング、形式の斬新さなどをメインとした演出は変わらなかった。

 それが大きく動いたのが、第28回である。いわゆる「知力の甲子園」路線の始まりだ。

 全国から集った代表校は、東京ドームシティのホールで50問の筆記クイズに臨み、8校のみが勝ち抜けるという熾烈(しれつ)極まりない一回戦に臨んだのだ。ここで負けたチームの姿はほとんど放送されなかった。その後も一般のクイズ大会のレベルを超えた難問が出題され、制限時間の長い物理学風の問題まで用意されていた。

 この路線は賛否両論を巻き起こしたが、5年ほど低迷していた視聴率は持ち直し、その後五年間でMAX17.1%というハイスコアをたたき出した。

 そして、「知の甲子園」の後に行われたのが、現在の「海外ツアー」路線である。

 東京での一回戦を勝ち抜いた10校ほどが海外のさまざまなスポットを巡りながら、さまざまなバリエーションのクイズに答えていく。一回戦は放送上の尺としてはかなり短い扱いであり、その後長い時間をかけながらチームがじわじわと減っていく。

 演出面では、毎回女性参加者を丁寧に取り上げた他、カップルチームをあおるインタビューや、高校生の素顔を紹介するようなコーナーも用意されていた。問題の難易度は「知力の甲子園」に比べると低下したが、27回以前と比べると依然少し高いように思える水準。アメリカ人へのインタビューやゾウに乗ってものを運ぶクイズなどバラエティ色を交えたものも増えたが、全体的に知的な雰囲気、高校生のボケなどは映さない方向で統一されていた。 

 かつて「五月雨を あつめてはやし もがみがよ」といった高校生の珍回答を目玉の1つとしていた頃とは大きな違いである。

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