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» 2017年12月23日 11時00分 公開

「分裂」する現代クイズ番組と、『高校生クイズ』35年目への挑戦 〜『国民クイズ2.01』としての現代クイズ概論〜(7/9 ページ)

[伊沢拓司,ねとらぼ]

『WQC』の革新的取り組み

 TBS系列で2011年に放送されたクイズ特番『World Quiz Classic』は革命的な番組だった。

 一回戦は長い赤絨毯の上に用意されたゲートをクイズに答えながら進んでいく「A La Carte」。超巨大な画面に人物の肖像画が表示され名前を次々書いていく三回戦「Portrait Fountain」。準決勝からは早押しとなり、決勝は往年の『アップダウンクイズ』をゴンドラごと模した形式だった。東京ビッグサイトのホールに建てられたセットの作り込みは相当なもので、参加者には「クイズを開く鍵」として透明なプレートが与えられた。このプレートをセットすることで、「A La Carte」が始まる、という形式だ。

 一方で、参加したクイズ王たちについては事前番組などでスポットを当て、どのような背景から出場しているのかが紹介された。招待選手も、予選上がり組も半々で、各人には出自に応じたキャッチフレーズがつけられた。

この盾を持ってるのは世界で30人。

 『SASUKE』を手掛けた総合演出・乾雅人が「クイズ王版『SASUKE』」と評し、全てのクイズファンたちの視線を集めたこの番組はしかし、視聴率的には期待はずれの結果に終わってしまう。裏番組にモンスタードラマ『家政婦のミタ』などがひしめく激戦区であったことも要因の1つだが、第2回が作られていない現状では成功裏に終わった、とはいえないだろう。

 前述したように、徳久の『国民クイズ2.0』においてこの『WQC』は、マイナースポーツ化したクイズとエンタメ的なクイズ番組との融合を図る取り組みとして紹介されている。

 ここまで『WQC』について述べてきた点が、『第37回高校生クイズ』にも当てはまるのではないか、と僕は考えている。

 先ほど「混線」と呼んだエンタメ要素とスポーツ要素の混ざり合いは、意図されたもの、狙いあってのものである、ということである。

なぜ今「融合」なのか?

 もちろん、この試みは36回以前から続けられてきたものかもしれない。現路線での決勝進出校のほとんどは有名進学校であり、クイズ形式でも一般人との英会話力を問うものが登場するなど、求められる能力は高学歴路線である。一方で、アメリカを舞台にクイズを行うというギミックは大いにエンターテインメント的といえよう。

 しかし、今年はその傾向が顕著であった(明らかに加速していた)ことは事実だ。

 「エンタメ型」要素は例年と変わらない。過去のエンタメ型形式を復刻させても、中身であるクイズの難易度は明らかに上昇した(これについては客観的な指標がないが、筆者自身の「クイズ王としての感覚」で許してほしい)し、「21世紀枠」での高学歴校吸い上げ、1回戦ほぼカットなどの演出でより「スポーツ型」に寄せてきているように感じられた。その演出は「知の甲子園」の初回である第28回大会を思わせるようだった。

なぜ統合せねばならぬのか

 ではそもそも、なぜ「エンタメ型」と「スポーツ型」を統合する必要があるのか。

 それは、どちらの路線にも天井が見えているからだ。

 「エンタメ型」の限界については、先に述べた通りだ。「大きな物語」が失われた今、番組側はこの「物語」の枠組みづくりから始めなければならない。その枠の外に外れた人間は、当然番組の対象外となる。この枠組の立て付けが悪く短命に終わったクイズ番組はいくつもある。「エンタメ型」クイズ番組には、大化けするパワーが薄いというのが現状なのだ。

 一方で、「スポーツ型」はどうだろうか。こちらも、難しい状態にあると言って良いだろう。スポーティなクイズを展開できるのは、やはり「クイズ王」に限られる。そしてクイズ王のほとんどは、テレビ出演を本業としない素人である。定期的に番組を行い、結果を出し続けるのは過去の例を見ても難しいだろう。マイナースポーツ的な伸長の仕方では先が短いし、魔術のタネがより解明しやすいものとなる。

 『Qさま!!』は芸能人の強豪をクイズ王的ポジションで長く君臨させ、このスポーツ型要素をうまく内包したように感じられるが、こうもうまくいくには時間と技術が必要になる。そうそうまねできるものではないだろう。

 この2つの型は、どちらも大爆発する可能性の低い状態にあるといえよう。予算を抑えてそこそこの成果を、ということは可能であっても、大ヒット御礼的なことにはなりそうなビジョンがない。

 新たな可能性は、「いまだ誰も見たことがない」ゆえに「エンタメ/スポーツ両者の融合型」に託されることとなる。

なぜ今なのか?

 ではもう1つ残る疑問に移ろう。

 なぜいま、つまり「第37回」でその傾向が顕著になったのか。

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