「分裂」する現代クイズ番組と、『高校生クイズ』35年目への挑戦 〜『国民クイズ2.01』としての現代クイズ概論〜(9/9 ページ)
何が行われるかを想像することは非常に困難な作業だが、もしその「改革」のみが決まっているのだとしたら、今回の第37回で実験的な企画が行われることはスジの通ったことであろう。
海外路線で行われたココ5回の視聴率は伸び悩み、平均視聴率では2度のひとケタ代をこの範囲で記録している(33回と37回)。時代の波やこれまでの流れが影響しているとはいえ、改革が成功していないことは、少なくとも視聴率的には明らかになってしまった。
次なる一手への準備は、早いほうが良いだろう。
ここまでの話を総合すると、第37回は「改革の第一歩」であり、その手段として「エンタメとスポーツのハイブリッド」を目指した、という仮説が立つのではないか。
仮説はあくまで仮説だが、何も考えずに「今年はつまらなかった」「問題レベルが低下した」と述べるよりはよほど価値のあることだろう。
個人的には、クイズブームのため、クイズ番組のために、このような「融合」が試みられることは意味があると考えている。閉塞感のある状況を打破してくれるものだからだ。
いまこの2017年がクイズブームの最中であることは先に述べたが、ブームなんていつ終わるか分からない水物である。ブームが去ったときの、何をやっても動かない壁に囲まれている感覚を僕は知っている。というか僕も商売上がったりなわけで困っちゃうのだ。
もし来年、このハイブリッドの試みが何かしらの形で実を結べば、今クイズを取り巻く環境は大きく変わるはずだ。クイズの世界を大きくリードし、変容させてきた『高校生クイズ』が、またしても時代を築く瞬間がやってくる。
特Qファイヤー号が、まだ見ぬ境地に連れて行ってくれることを願って……。
※文中敬称略
参考文献
徳久倫康(2012)「国民クイズ2.0」,『日本2.0』2012年7月,p.484-p.510,genron
黄菊英・長谷正人・太田省一(2014)『クイズ化するテレビ』2014年7月,青弓社
石田佐恵子・小川博司(2003)『クイズ文化の社会学』2003年3月,世界思想社
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