犠牲なくしては生き残れない、マイナス20度のシムシティ 極寒の凍土が心をえぐる「Frostpunk」の絶望と面白さ:ゲーマー日日新聞(出張版)
誰を犠牲にし、誰を救うのか、あるいは全てを救うことができるのか。猛暑の休暇に、極寒の街作りゲームはいかがでしょう。
暑い日が続く今日のこのごろ、こんな日は涼しい家の中でゲームはいかがですか。ゲームブログ「ゲーマー日日新聞」管理人で、Steamで800本遊んだゲーマーでもあるJ1N1(@j1n1_r)さんに、この時期オススメのゲームを教えてもらいました。
「最高気温マイナス20度」の永久凍土で街を作る
初めまして。ゲーマー日日新聞というブログを書いているJ1N1と申します。大してゲームがうまいわけではなく、かといってゲームを作る上での専門知識を持っているわけでもない、そんな私ですが「とにかくいろんなゲームを遊ぶ」という理由だけで、ブログでは累計1300万ほどアクセスをいただきました。
さて、そんな自分にとっても、今年6月にポーランドから生まれた「最高気温マイナス20度の世界」で街を作るゲーム「Forstpunk」は衝撃の作品でした。一体何故か。この作品は、人を統治する上で問われる倫理、例えば少数を犠牲にして多数を救うことや、負担にしかならない弱者を切り捨てることの是非を、画面の前に座るプレイヤー自身に迫るゲームだからです。
ゲームを始める
さて、早速ゲームを始めてみましょう。最初にプレイヤーに与えられるのは、十数人の生き残りと、わずかな資源、そしてポツンと一基、集落の中央に置かれた巨大な発電機だけ。
この発電機は街中の電力を賄うと同時に、コレ自体が巨大な暖房として住民を寒さから守ってくれる、集落の生命線です。
ただし燃料に石炭が必要となるので、これを確保するための炭鉱を作る必要があります。そして無論、住民が生きるための食料、そして施設を建築するための木材や鉄といった資材も必要なので、これらを収集する施設や労働者を、限られた資源の中から優先順位を決めて配置していきます。
ところが人口が限られた序盤では働き手が少なく、施設の回転率はかなり悪い状態です。そこでプレイヤーは法律を採択することで、市民の労働時間を伸ばし、さらにこき使うことができます。
しかし、大人を24時間働かせてもなお労働力が足りない、このままでは資源が尽きてしまう――という緊急の状態も起こり得ます。
その場合、プレイヤーは新たな法律によって、子どもを直接職場で働かせるか、せめて職場の手伝いに留めるか、2つの法から1つを採択することができます。子どもたちを安全な場所で勉強させるか、あるいは大人と同様に危険な職場で働かせるか……。
これは指導者であるプレイヤーの判断で決まります。誰もが子どもには勉強させたいと思いますが、一方で資源はカツカツで働き手も少なく、理想だけでは寒波に対抗できない。さてそこで、このゲームはプレイヤーに問うわけです。「あなたなら、どうしますか?」と。
そして実際に法律を採択した後も、胸の中にはやはりスッキリしないものが残ります。子どもを働かせてしまったが、けがでもしたらどうするのか。子どもを働かせなかったが、資源をどう確保すれば良いのか。
ですが、一度採択してしまった以上、こうした疑念を抱えたまま、ゲームを続けなければなりません。
揺さぶる選択肢と結果
それでも何とか、一定の資源を確保し、集落の経営も安定してきたとします。しかしそれだけではクリアできないのが「Frostpunk」。まるで見計らったかのように、次々にトラブルだのアクシデントがやってきます。
例えばある時、無数の難民が助けを求めてあなたの集落にやってきました。
本作において土地は有限です。全員に住居、食料、そして何より職場をあてがうには限界があり、ある一定以上の「人間」を受け入れることに意味はありません。さらに市民たちも、資源を食いつぶす新たな住民を歓迎しないでしょう。
故に、プレイヤーは決断しなければなりません。新たな住民を受け入れるのか、それとも極寒の中に放逐するのかを。
またある時は、不意の極寒が集落を襲い、何人かの重度の凍傷者を出してしまいました。
凍傷が軽度なうちは診療所で治療することもできますが、重度になるともはや助かる手だてはありません。
故に、プレイヤーは決断しなければなりません。彼らを一生ベッドの中で生き永らえさせるのか、それとも力尽きることを覚悟で彼らの患部を切断するのかを。
この作品の素晴らしい点は、この誰もが答えを出せずに、その場で悩んでしまうような選択肢です。この作品に、「善」「悪」とハッキリ決められた選択肢はありません。
それどころか、この作品が迫るさまざまな選択肢は、現実の政治においても持ち上がり、その都度議論が重ねられるような問題です。プレイヤーはこうしたギリギリの問いに対して、指導者として答えを見いだす必要があります。
また、こうした問題へのプレイヤーの選択に対し、ゲーム側が「それが正しい」「間違っている」と明確に判断することもありません。非難する市民もあれば、理解を示す市民もある。ただ選択の結果として、直接ゲームプレイのうちに反映されます。
極寒の凍土で街を築く面白さ
この作品は一見ありふれた街作りゲームですが、極寒の過酷な環境、そして正しさのない選択肢、統治者としてのモラルなど、さまざまな要素を盛り込むことで、全く新たなゲームとして成功しています。
もちろん、細かく作られたスチームパンク調の建築物や、街で生活する人間の姿が克明に描かれ、単純に街並みを見ているだけでも十二分に楽しい作品です。しかしやはり、善悪の二元論だけで語ることのできないゲームプレイと脚本こそ本作の醍醐味でしょう。
ルールそのものはシンプルで、一見難しそうに思えますが難易度はそこまで高くありません。だからこそ、ゲーム側が提示するさまざまな問いに対して、プレイヤー個人の率直な価値観が反映される。ここが「Frostpunk」を遊んでいて一番楽しいと感じる瞬間です。
現代では「UNDERTALE」や、本作を開発した会社の前作「This War of Mine」など、一概に正しいと言えない答えに対して、プレイヤーに疑問を投げかけるような作品は増えています。
その中でも「Frostpunk」は、寒波とスチームパンクという題材によって、プレイヤーに集落を支配するリーダーとしての振る舞いを要求することで、過去もっとも私の心をえぐった作品の1つとなりました。
昨今、猛暑が続いておりますが、この作品は見ても寒い、遊んでも凍える、心まで冷えると、正しく真夏にふさわしいゲームといえるのではないでしょうか。
今回紹介したゲーム
タイトル:Frostpunk
ハード:Windows
公式サイト:http://www.frostpunkgame.com/
開発元:11 bit studios
パブリッシャー:11 bit studios
価格:3090円(Steam参考価格)
日本語サポート:なし(※有志による日本語化Modあり)
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開発元は「シミュレーターに過ぎない」と弁明。
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