松本まりかにヤラれた「緊急取調室」 孫に娘を殺された祖母の絶望が生み出したのは……4話は早くも令和史上に残る神回(2/2 ページ)
そこから、さらに引っくり返る。松本まりか=ヤバい役という刷り込みが、完全にミスリードになっていた。ラスボスは祖母。弟を利用する狂気の姉による事件とばかり思っていたのに、最後に表れたのは虐待された孫の素顔だった。被虐待児として幼児退行すると、小悪魔的だった茜は無垢な子どものようになる。祖母に引き取られ、食事も与えられなかったころの顔。それに気付いた瞬間、母親のような雰囲気で茜に寄り添った有希子。天海祐希の演技も凄い。
親を殺した子と孫に娘を殺された祖母による狂った世界
事件は、娘を死なせた孫2人に対する祖母の恨みが原因だった。親を殺した子どもと、孫に娘を殺された祖母。孫は祖母から暴力を受け、洗脳され、その結果として今回の誘拐殺人を引き起こした。書いているだけで、狂った世界だと実感する。娘だけを愛した祖母のため、母の代わりになる女性を誘拐し続ける2人。姉弟は愛されたかったが、血縁者でも愛し愛されるとは限らない。それなのに茜と荘介は、最後まで澄江を「おばあちゃん」と呼び続けていた。
冷静に考えてみる。町役場務めの茜は、荘介を連れてどこかへ逃げることもできたはずだ。老いた祖母に怒りをぶつけることもできただろう。つまり、今回のエピソードには共依存とネグレクトと家族愛が込められているのだ。第4話のタイトルは「私が誘拐しました」。この「私」が指すのは茜ではなかった。
でんでんが怖過ぎる
キントリの手法が、いよいよエグ過ぎる。被疑者(荘介)を釈放し、弟を危険に晒すことで姉に供述を迫るやり方。被疑者の命を最優先にした結果とも言えるが、はっきり言ってアウトだろう。第3シーズンは「緊急事案対応取調班メンバー総入れ替えの危機」というテーマが縦軸として貫かれている。今回の事件を経て、キントリの立場はますます危ういものとなった。
何よりスレスレだったのは、釈放された荘介が帰宅すると、澄江の近くで菱本進(でんでん)が佇んでいた場面だ。あんなのは誰だって驚く。しかも、菱本がギコギコと弾くバイオリンの音色が心地悪過ぎるのだ。文字通り、あの家族の不協和音を表現していた。間違いなく、令和史上最も怖い場面だ。そして、キントリと上層部の不協和音も怖い。
寺西ジャジューカ
ライター Facebook
納口龍司
イラスト Twitter
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