LGBTが思う、よくある質問「彼女いるの?」の難しさ エッセイ漫画「あさな君はノンケじゃない!」インタビュー

「彼女はいません! ゲイなので!」と言っても言わなくてもいい環境ができたら。

» 2019年09月20日 20時30分 公開
[佐藤星生ねとらぼ]

 アパレル企業で働きながら、ゲイである自身の体験を描いたエッセイ漫画「あさな君はノンケじゃない!(※)」(著者:あさなさくまさん)。ほっこりエピソードを通じてゲイの日常を描き、Twitterやピクシブ上でも反響を呼んでいる同作の誕生秘話や見どころについてあさなさんにインタビューしました。漫画本編もあわせて掲載します。(聞き手:佐藤星生

※ノンケ:異性愛者のこと。同性愛者、特にゲイの立場から用いられる語として知られる



漫画「あさな君はノンケじゃない!」とは?

 あさな君は、アパレル会社に勤めるごく普通のアラサー男子。ひとつだけ違うのは、ゲイであること――。2017年に開催された第2回ピクシブエッセイ新人賞受賞作品。あたたかく、少し切ない。今どきアラサーゲイの日常を描くコミックエッセイ。

 自分の性のあり方の、母へのカミングアウト、初恋の男の子の想い出、そして運命の人との出会い。ノンケ(異性愛者)では味わえない日常や過去の思い出を優しいタッチと言葉で描写しており、これまでセンセーショナルに描かれがちだったゲイ関連作品とは一線を画した内容に仕上げています。

著者プロフィール:あさなさくま(Twitter:@sakuma_asanapixiv:あさな さくま

漫画家・イラストレーター。アパレル企業でデザイナーとして働く傍ら、Webメディアを中心に創作活動を行う。「あるある!」と共感を呼ぶ作風だけでなく、そのファッション描写にも注目が集まっている。





※2018年12月時点での作品です。また、全ての学術的情報を網羅した図解ではありませんので、あらかじめご了承ください











その他の一部エピソード、購入先などはWebマンガ誌「コミックエッセイ劇場」に掲載されています


―― 本職はアパレルのグラフィックデザイナーと伺いました。どんなきっかけで絵を描き始めたのですか?

 小さい頃から絵は大好きで、小学生の頃は自分の家族や友達が登場するギャグ漫画などを自由帳に描いていました(笑)。みんなに「こんなことあったあった!」と笑ってもらえて、すごく楽しかった記憶があります。

 以降イラストを描いたりすることはありましたが、本格的な漫画作品は今回が初です。3年くらい前からTwitter上でよく漫画が流れてくるのを目にするようになって、「自分も何かできないかな」という気持ちで始めました。

―― デビュー作はゲイをテーマにされました。どんな思いを込めたのですか?

 昔の自分がそうだったように、「ゲイであることを周囲に打ち明けたい気持ちがあるけど、カミングアウトできない人」は多くいるはずで、それはやっぱりまだ世の中の偏見が根強いから。セクシュアリティを公表する、しないはもちろん個人の自由ですが、「したい人ができない」という状況は事実としてあります。そこで、ゲイの存在について知るきっかけになる作品が描けたらいいな……と以前から思っていたんです。

 どう見せていくかは本当に悩みましたが、何気ない日常や思い出をサラッと、かつリアルに描く内容にしようと思いました。

―― 友達やご家族などの人物が登場しますが、そこもリアルを追求した?

 メインの人物の顔立ちは似せています! 今までの出会いや体験をそのまま描いているので、作品の中で顔を変えてしまうと自分の中で違和感があって……。

 漫画を描いていることを知っている友人から「これ俺だよね?」とLINEで突っ込まれて、「かわいく描いてくれてありがとう!」と言われたこともあります(笑)。本格的に描くようになってからは、本人に許可をもらうようにしています。

―― 周囲の方々も理解されているんですね。「彼女いるの?」と聞かれた時の回答例は、これも実体験なんですか?

 はい。新しいコミュニティーに入るとよく聞かれますよね。進学したときとか、バイト先が変わったときとか。そういうタイミングで、どう回答するべきかは毎回すごく悩んでいました。

 その時々でいろいろな答え方を試したんですが、結果的にはうまくかわせない。そんな実体験をパラレル的にまとめたんです。

―― ゲイの方ならではの悩みというわけなんですね

 でも、実はすごく普遍的な問題なんだなと分かったんです。Twitterでこのエピソードを公開したあと、さまざまなセクシュアリティの方から「こういう質問自体が苦手です」というリプライをかなりいただいて。性のあり方を問わず、パートナーの存在をいきなり聞かれることって、嫌な人にとっては嫌ですよね。いろいろな反響をいただいて、すごく勉強になりました。

―― なるほど。あさなさんの場合は答えたくても、答えられないというジレンマがあったというわけですか?

 「彼女はいません! ゲイなので!」と言える環境ができたらいいなぁと僕個人としては思っていますね。ただ、そういったカミングアウトを推奨しているわけでもありません。「言わない自由」も守られるべきで、その「どちらの選択肢も奪われない世の中」になったら、もっと生きやすいだろうなと思うんです。そんな思いを、この回には込めています。

(続く)

本企画は全6本の連載記事となっています

  • (1)あるLGBTが思う、よくある質問「彼女いるの?」の難しさ
  • (2)ゲイだからこそ“飲み会の男同士のキスコール”で傷つくことも
  • (3)プールの授業が苦手なLGBTの生徒のために体育教師がついたウソ
  • (4)ゲイの息子と母親のカミングアウトの「リアル」
  • (5)「実際のゲイ」と「ゲイのイメージ」が合致しない理由
  • (6)【LGBTカップルのデート事情】周囲の目は気にする? 気にしない?

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」