欅坂46、初の東京ドーム公演で披露された全楽曲を2万字で全力レポート! 5万人の観客が「不協和音」の“僕”と「角を曲がる」“私”に出会った瞬間【後編】(3/3 ページ)
「ガラスを割れ!」ではじめるという決意
今回の「夏の全国アリーナツアー2019」と「東京ドーム公演」はまさに“欅坂46のセットリスト”でした。ファンが求めていた公演がそこにありました。
「鏡の国のアリス」をほうふつとさせる演出や毎回違うメンバーが檻に閉じ込められるという斬新な手法でファンを考察の渦に巻き込んだ「夏の全国アリーナツアー2019」についても語りつくしたいところですが、今回は「東京ドーム公演」に絞って感想をつづりたいと思います。
「夏の全国アリーナツアー2019」ではアンコールも含めて16曲のパフォーマンスしたのに対し、「東京ドーム公演」ではWアンコールを含めて21曲をパフォーマンスした欅坂46。“21人”で始まった欅坂46が、東京ドームという特別な場所で、“21曲”で公演を終えたことは、感慨深いというほかありません。
欅坂の歴史に刻まれたこの東京ドーム公演についてまず記しておきたいのは、「ガラスを割れ!」で1曲目を始めたということ。「OH OH OH OH OH」というメロディーだけで「これはただ事ではないライブが始まるんだ」と悟ったファンも多かったと思います。爆発的で攻撃的なパフォーマンス、これぞ欅坂46だと言わずにはいられない魂が震えるパフォーマンスがそこにありました。
「不協和音」は決して魔曲ではない
続いては今回の「東京ドーム公演」を語るうえで欠かすことのできない楽曲「不協和音」について。9月18日に開催された初日公演のサプライズで「不協和音」がパフォーマンスされると、Twitterのトレンドに不協和音、欅坂46といった言葉が次々とランクインするなど、ファンであることないことを問わずに関心が非常に高い楽曲であることが分かりました。
歌詞、曲、振り付け、衣装、どこを取っても優れていると言わざるを得ないこの楽曲ですが、2017年の「NHK紅白歌合戦」で披露されて以来、公の場では平手さんセンターでのパフォーマンスは控えられてきました。
この状況について一部メディアは「魔曲」という表現を用いていましたが、私は「不協和音」は「魔曲」ではなく、とても「大切にされてきた曲」なのではないかと考えています。
アイドルであり、プロのパフォーマーでもある欅坂46やチーム欅坂がどういった思いでこれまでパフォーマンスを控えてきたのか。本当のところは分かりませんが、8枚目シングル「黒い羊」に収録された特典映像「KEYAKI HOUSE」では、プールの中に入り、「不協和音」を楽しんでパフォーマンスするメンバーの姿が収められていました。プールの中で踊るという非日常的な状況において「あれを踊ろう」と「不協和音」の名前があがったということ。ファンが「見たい」と思い続けていたことと同じように、メンバーたちも「やりたい」と思い続けていてくれたのかもしれません。
今回は1年9カ月ぶりの披露であり、2期生が入っての初めてのパフォーマンスでしたが、全員が同じ方向を向き、しっかりと動きをそろえること、伝えようとすること、全員がその思いをもって全力でパフォーマンスする姿。これこそが欅坂46なのです。
19曲をパフォーマンスし終え、本当は体も心も悲鳴を上げていたのかもしれません。その限界をはるかに超えた先でパフォーマンスされた「不協和音」は間違いなく10万人の胸を打ち、きっと多くの人が「不協和音の中の“僕”」に出会えたのではないでしょうか。私には苦しくて、泣きたい気持ちを必死に抑え、それでも「僕は嫌だ!」と自分の意思を示し続ける僕と、そんな僕を守ろうと盾になる欅坂46が見えた気がしました。
「Be yourself」と「らしさって一体何?」
そして「角を曲がる」。今回の「東京ドーム公演」では「Be yourself」というテーマが掲げられています。意味は「あなたらしく」。しかしWアンコールで披露された平手さんのソロ曲「角を曲がる」には「らしさって一体何?」という歌詞が登場します。つまり公演のテーマと全く反するメッセージの曲が最後を飾ったのです。
ここで思い出されるのは、「夏の全国アリーナツアー2019」で多用されていた「鏡」の演出とカタカナで登場していた「サイゴノ ヒトリニ ナラナイヨウニネ コノセカイハ オモテガウラデ ウラガオモテ」というメッセージ。これが意味するものとは一体なんなのでしょうか。
私がはじめて「角を曲がる」を聞いたとき、猛烈に胸に突き刺さった歌詞があります。
だって近くにいたって誰もちゃんとは見てはくれず
まるで何かの景色みたいに映っているんだろうな
フォーカスのあってない被写体が泣いていようと睨めつけようと
どうだっていいんだ
わかってもらおうとすればギクシャクするよ
与えられた場所で求められる私でいれば嫌われないんだよね?
この楽曲は前述の通り、映画のために制作されたもので、秋元康さんが映画の主人公・鮎喰響と平手さんをイメージして作詞したもの。この歌詞に登場する孤独な“私”に悪意のない悪意を向けているのはメディアと“私”を取り囲む人々なのです。
漫画『響〜小説家になる方法〜』でもメディアと響が対立する様が描かれましたが、「圧倒的な天才」と称される響と「不動のセンター」と称される平手さんに共通点を見つける人も多いことでしょう。
既存の天才像を押し付け、本人の意思とは関係なくシャッターを切るカメラやマイクは時として取材対象者を攻撃する武器にもなり得ます。あえてメディア取材が許された日に「角を曲がる」が初披露したことの意味について、私たちメディアはいま一度考えるべきタイミングに来ているのかもしれないと感じました。
泣きながらシャッターを切るということ
欅坂46において大きなターニングポイントとなるのであろう「東京ドーム公演」ですが、多くの来場客が「ライブに行って良かった」とSNSへ投稿するなど、ファンにとっても得るものが多い公演となったようです。
私も例外なくそんなファンの1人です。メンバーが「太陽は見上げる人を選ばない」で目を潤ませている姿や、「不協和音」のイントロが流れた瞬間は「本当によかった」と、のぞいていたファインダーの中がゆがんでしまいました。途中まではなんとかタオルで目頭を押さえていましたが、「角を曲がる」のクレジットが画面に現れた瞬間、完全に感情があふれ出し、無事にパフォーマンスを終えた平手さんのはかない笑顔に向けてシャッターを切るころには完全に涙がこぼれていました。
欅坂46を応援する1ファンとしては、今回は欅坂46をはじめ、チーム欅坂の皆さんに東京ドームへと連れてきてもらったのだと思っています。「東京ドームでパフォーマンスする」ということはアーティストにとってもファンにとっても特別な体験です。メンバー全員でまた最高の舞台で最高のパフォーマンスをしてもらえるよう、これからも欅坂46の進化と成長を見守りつつ、応援していきたいと思います。
欅坂46「夏の全国アリーナツアー2019」東京ドーム公演千秋楽セットリスト
SE. Overture
01. ガラスを割れ!
02. 語るなら未来を…
03. Student Dance
04. エキセントリック
05. 世界には愛しかない
06. 青空が違う
07. バレエと少年
08. 制服と太陽
09. 二人セゾン
10. キミガイナイ
11. もう森へ帰ろうか?
12. 僕たちの戦争
13. 結局、じゃあねしか言えない
14. サイレントマジョリティー
15. 避雷針
16. アンビバレント
17. 風に吹かれても
18. 危なっかしい計画
19. 太陽は見上げる人を選ばない
<アンコール>
20. 不協和音
<ダブルアンコール>
21. 角を曲がる
関係者の皆さまツイートまとめ
(Kikka)
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