CGがまだ珍しかった時代の徒花 「CG昔話 じいさん2度びっくり!!」はなぜ狂気のカルトゲームと呼ばれるのか:どうかしているゲームの世界
珠玉の「どうかしているゲーム」を気まぐれに紹介していく不定期連載。第4回は、一部業界ではかなり有名な「CG昔話 じいさん2度びっくり!!」を取り上げます。
もういくつ寝るとお正月……ということで、今年もすっかり年末ですね。この時期になると実家に帰り親戚で集まるような機会も増えてきますよね。子供のころは普段会わない祖父母にねだって、よく昔話なんかを聞いたものです。……と、ちょっと無理のある導入でしたが、今回紹介するゲームは「CG昔話 じいさん2度びっくり!!」(通称:G2)です(プレイステーション/1996年)。G2はタイトルの通り「昔話」を題材にしたノベルゲームとなっており、当時はまだ物珍しかったであろう「CG」が全編に渡ってぜいたくに使われています。
雷に打たれた桃太郎が大いなる知恵を授かる
ゲームを開始するとまず「オープニングを見る」か「いきなりスタート」を選ぶ画面が写ります。背景には、本作の制作会社である「アイディアファクトリー」によるテレビをモチーフにしたゲームシリーズだと意味するっぽい「IFTV」のロゴが表示されています。この「IFTV」という文言について検索してもまったく情報が出てこないので詳しいことは今となっては謎なんですが、ホラー漫画家の日野日出志が参加し一部ではちょっと異常なゲームとして名高い「厄 友情談疑」とその続編である「厄痛 〜呪いのゲーム〜」も同じシリーズの作品です(どちらもいつか紹介したいゲームです)。せっかくなので「オープニングを見る」を選択していきます。
「オープニングを見る」を選択すると、昔話とはまるで似つかわしくないバーチャファイターのデュラルみたいなヤツがでてきます。これが誰なのかはよくわからないのですが、おそらく「IFTV」シリーズのアナウンサー? 的な? 存在? なんだと思います。推測です。
驚くべきことに本作における「オープニング」というのは、そのデュラルみたいな人が出てくるちょっとしたムービー(数秒)と、めっちゃ最低限のチュートリアル、そして極めて唐突な「自然を大切に」というメッセージのことです。この当時のアイデアファクトリーは環境意識の高いメーカーだったらしく、同様のメッセージは先述の「厄」シリーズでも表示されます。「厄」シリーズはホラーゲームですし、本作は昔話ゲームですから、ゲーム内容とこの「自然を大切に」というメッセージは一切関係がありません。
キツネにつままれたような気持ちでいると、そのまま本編開始です。本作はCGでおばあさんがプレイヤーに昔話を語りかけてくるというような形式で進んでいきます。そして物語の要所要所で質問を投げかけられるわけです。最初は(要約すると)「むかしむかし、あるところに住んでいたのは誰?」という質問からスタートです。
むかしむかしあるところに住んでいるものアンケートを取れば第1位になるであろう「おじいさん、おじいさん」の他に、ここでは「カニの親子」と「ネズミの親子」を選択できます。こうやって昔話老女(おばあさんが2人登場するとややこしいので語り部のほうのおばあさんを便宜的にこう呼びます)の質問に答えることによって昔話の内容をコントロールしていくというのが主な内容です。分かりやすいですね。我々のようなスレた大人は突飛な回答をしたくなるところですが、ここでは素直な童心に帰って「おじいさん、おばあさん」を選択してみましょう。
すると次はおばあさんが川で選択しているところに何かが流れ来る……というお決まりの展開。流れてくるものを三種類から選択できますが、ここでも奇をてらわずに「桃」を選択していきます。誰もがよく知っている「桃太郎」の話になるように、狙って選択肢を選んでいこうと思います。
余談ですが本作では場面転換のたびに「それからァ〜↑?」という謎のボイスチェンジャー音声が流れて私感ですが、端的に言って非常に不愉快です。表示されている画像も完全に謎で味わい深いものがありますね。
おばあさんが持ち帰った桃の中には赤ん坊がいました。おじいさんとおばあさんはその子に桃太郎と名付け、育てることにしました。そして、桃太郎は信じられないようなスピードで育っていきます。と、ここまでは普通の桃太郎ですね。「どこがどうかしてるんだ、普通のゲームじゃないか」と憤られる読者の方もおられるかと思います。油断しないでください! もしかしたら僕がウソをついているだけで、このゲームは全然どうかしてないかもしれませんよ!
そんなこんなで成長した桃太郎ですが、ある日修行をしに森の中に入っていきます。あれ、そんな話ありましたっけ……?
そして修行から帰る途中、雷が桃太郎の身体を直撃してしまいます。前述の通り、僕は「できるかぎり桃太郎になるように」選択肢を選んでいますが、全然知らない展開になってしまいました。雷に打たれたあと聞こえてきた天啓よって桃太郎は「大いなる知恵」を会得することになります。やっぱりどうかしてた。
その後特に何事もなかったかのように桃太郎のストーリーに戻り、犬とキジを仲間にした桃太郎。最後の仲間である猿を勧誘します。猿は物知りが自慢なため、桃太郎は彼に「昔話クイズ」をだして知識面で打ち負かすことにより屈服させ、仲間にしようと試みることになります。
なのでそこから場面は桃太郎が語る昔話にジャンプします。ゲーム自体が昔話のゲームなので、いわば「昔話内昔話」といった、とんでもなく複雑な構造になっています。桃太郎のする昔話を要約すると「昔、お坊さんがいて、夜な夜な誰かのところに行ってみるので住職が後をつけてみると……」
「住職が見たのはなんと、女装している坊主でした!」とのことです。物語の評価はみなさんに託します。
そして、そのまま画面には「完」の文字。この「完」の文字は「桃太郎の話がここで終わり」という演出ではなく、これでエンディングです。桃太郎は? 猿は? っていうか「大いなる知恵」は? ……いくつもの伏線を置き去りにして、話が終わってしまいました。繰り返しになりますが、僕はなるべく「桃太郎」になるように選択肢を選んできたつもりでしたが、このような結果になり大変残念です。本作にはフローチャートのような便利なものはないですし、スキップもありません、っていうかセーブもロードもないので、やり直すのは結構しんどいです。
(スタッフが少ないため)字がクソでかいスタッフロールが流れると……(こんなエンディングでも一応スタッフロールが流れます)
最後、画面には「資源とエネルギーを節約しましょう」との文字が。多くのプレイヤーが口をそろえて「(こんなゲームを作ってる)お前らがまず節約しろや」と言ったとかなんとか……そういう言い伝えが今も残っています。結局タイトルの「じいさん2度びっくり!!」が何を表すのかすら分からずじまいでした(ネタバレしますが、作中のあるシナリオでじいさんが2度びっくりします)。
と、こんな感じのゲーム(含みのある言い方)な本作ですが、なんとゲームアーカイブスで発売されており、PS3やPSPを持っているプレイヤーであれば628円(税込)で購入することが可能だったりします。どうかしているゲームが好きな方は、あわてて購入したほうがいいですよ!
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