ファンタジー作品に出てくるやつだ! 鉱石を磨いて作る“ストーンナイフ”、制作過程を追った同人誌にわくわくする:司書みさきの同人誌レビューノート
心をくすぐる造形。
新緑、青空、日ごとに変わりゆく季節。夜明けの白んでいく風景や、茜色に染まる夕焼け……そんな色すらも写し取ったような自然の鉱石をさらに鋭い美しさに磨き上げた、今回はストーンナイフの同人誌です。
今回紹介する同人誌
『Stoneknife's World』B5 16ページ 表紙・本文カラー
『Stoneknife's World 番外編 EXTRA EDITION』B5 16ページ 表紙・本文カラー
著者:西園寺真之
ストーンナイフとは? 石から作る“使える”ナイフ
『Stoneknife's World』はストーンナイフにひかれる作者さんが、そもそもストーンナイフとはどんなものか? どのような作品があるのか? といった解説を写真とともに解説したご本です。瑪瑙(めのう)や水晶などから作られるナイフのうち、特に鋭く削って研磨し、ナイフとして機能するものをご本では“ストーンナイフ”と紹介されています。鉱石を美しく形作るだけでなく、さらに研ぎ澄まされた切っ先が美しいです。これ、ファンタジー世界で授けられたりしませんか!? と思ってしまうほどの妖しい輝きに、カラーページをまじまじと眺めます。
ナイフとして機能するとはいえ、もともとの素材によって繊細な扱いが必要なこと、そしてナイフだからこそ所持するときの注意など、材料や入手について以外も、ストーンナイフを初めて持つ人に向けてのポイントがコンパクトにまとめられているのは、「同志よ、さあこちらへ!」と、作者さんの力強い導き力を表しているようです。
とりこになったら作ってみる! 自作への道をひた走る
さて今回は同サークルさんのご本をもう一冊紹介します。『Stoneknife's World 番外編 EXTRA EDITION』は、先のご本が同志への呼びかけだとしたら、こちらは叫び。野球マンガで投手がボールを放つのに「うおおお!」と咆哮するような熱血の記録。ネットでストーンナイフの存在を知ったものの、なかなか実物を手に取る機会がない……それなら自分で作れないか!? という衝動そのままに走り出した作者さんの足跡が記されています。
いえ、文体も、工程や工具の紹介も順を追い、すっきりと読みやすくまとまっているんですよ。決して騒がしいわけではないんです。でも、ご自身を「ド田舎在住、専門知識や特殊なコネを持たず、やる気はともかく予算には限りがあるという著者」と振り返りながらも、材料や道具をそろえて思い付いた方法を試し、失敗を繰り返し、ついにはストーンナイフ作家の北林竹二さんの工房見学でお話を聞くことで、制作の大きな階段を上がる様子はなんとドラマチックなことでしょう。
地道さの末にたどり着く造形美
ページを見たときにはっとした美しさは、実に丁寧な工程を経て仕上げられていたのだと、2冊を読んで気付きます。
ストーンナイフの基礎的な取り扱い、魅力をまとめた“静”的な『Stoneknife's World』。実践と取り組みの“動”の記録『Stoneknife's World 番外編 EXTRA EDITION』。石を研ぎ、自分の目指す形にどのように取り組むのかという心持ちまでが示され、読み終えると一つの華麗な作品の向こうにはたくさんの準備と手間と、情熱があることがあらためて胸にしみます。
サークル情報
サークル名:March Rabbit's
Twitter:@PsyonG
Webサイト:https://www.marchrabbits.com
現在入手できる場所:通販、直販(通販・直販とも完売の場合はお問い合わせ下さい。反響次第で、増刷または増補改訂を検討します<作者より>)
※レビュー記念に、BOOTH直販でC96会場限定だった番外編セットを限定復刻中(発送にお時間を頂く場合があります)。
今週の余談
鉱石に興味を持ったのは、宮沢賢治作品が最初か、ますむらひろしさんのマンガの世界に引っ掛かりを覚えたのか、長野まゆみさんの小説でダメ押しだったのか……しかも今回、新たに美しい発展系を知ることができてうれしいです。入口はそこら中で待っていますね。
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
関連記事
- 「10年後には朽ちるものを100年後に延ばす」 博物館の裏方描いた漫画が驚きの連続
『ただいま収蔵品整理中!Vol.1』『ただいま収蔵品整理中!金属保存編』をご紹介。 - アフリカで初音ミクのライブをやってみた 一人の教師が実現させた異国の”ミクライブ”
今回は初音ミク愛にあふれた『Miku in Africa』をご紹介。 - 決してひと事ではない? 同人誌『夜10時カギを忘れて家に入れず初めてカプセルホテルに泊まった話』
忘れたと確信したときのドキドキ感……。 - 全国各地の“恐竜像”を1冊に 220カ所ものスポットを紹介した「日本全国恐竜公園ガイド」にワクワクする
そんなところにもいるの!? - こんなの待ってた! アメコミの効果音を集めた辞書がマニアックすぎて心くすぐる
今週はサークル「FANDOMAIN」さんの同人誌「アメリカンコミックス効果音辞典 スーパーヒーロー誕生から70年代まで」をご紹介。 - 国体初のマスコット”未来くん”を小説に 同人誌『古都こと奇譚』は京都を舞台にしたキャラクターたちの物語
皆さんの町にも、人気を博したキャラクターがきっといるはず。 - 炎の揺らめきと溶けた金属 職人自ら撮影した鋳物製造の写真集『滴る金属』
こだわりが詰まってる。 - “お江戸のコミック”を現代語訳 同人誌『黄表紙のぞき』が江戸文化の扉を開く
難易度の高かった「くずし字」を読みやすく。 - これまで撮った「片手袋」の写真は4000枚超 築地に通って約20年、“片手袋研究家”による同人誌が奥深い
趣味、ここに極まれり。 - 理学部生だったあの頃の自分に伝えたい 作者の後悔から生まれた同人誌『理学部生を手伝うイモリ』
イラストはかわいいけど中身はマジ。 - “テレポートするナメクジ”を追った5年間 調査の内容をまとめたレポマンガに興奮を隠せない
104ページという力作。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
-
自宅のウッドデッキに住み着いた野良の子猫→小屋&トイレをプレゼントしたら…… ほほ笑ましい光景に「やさしい世界」「泣きそう」の声
-
「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
-
「ヤバすぎwwww」 ハードオフに1万8700円で売っていた“衝撃の商品”が690万表示 「とんでもねぇもん見つけた」
-
330円で買ったジャンクのファミコンをよく見ると……!? まさかのレアものにゲームファン興奮「押すと戻らないやつだ」
-
ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
-
58歳でトレーニングを始めたおばあちゃん→10年後…… まさかまさかの現在に「オーマイガー!!!」「これはAIですか?」【海外】
-
大量のハギレを正方形にカット→つなげていくと…… “ちょっとした工夫”で便利アイテムに大変身! 「どんな小さな布も生き返る」
-
大谷翔平、インスタ最新投稿で活躍シーンのハイライト公開 一瞬映る“妻・真美子さんと母・加代子さんの笑顔満開ハイタッチ”に注目
-
「水曜どうでしょう」“伝説のシーン”そっくりな光景にネット騒然 「ダメだ笑っちゃう」「なまら怖い」
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
- イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
- 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
- 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
- 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
- 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
- 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた