鈴カステラで作る「りすのパフェ」 作り方を解説した同人誌から伝わるかわいさの観察眼と追求の力:司書みさきの同人誌レビューノート
今度から鈴カステラを見るたびにリスの顔が浮かびそう。
慌ただしい師走もそろそろゴールが見えてきたでしょうか。今年の年末年始はどんな過ごし方をされますか? お家でじっくりお時間があるときは、こんなかわいい創作を考えてみるのはいかがでしょうか。
今回紹介する同人誌
『りすパフェの本』A5 14P 表紙カラー・本文モノクロ
著者:とうやまみなえ
卓上にリスがやってきた。自宅でパフェづくり
今年、自宅でのお料理やお菓子づくりに興味が出た方も多いのではないでしょうか。パフェがお好きで、お家でパフェ作りを楽しんでいらした作者さんが、はっとひらめいて作ってみたのがリスのパフェだったそうです。器の中にクリームや焼き菓子が層になっている様子、どーんと乗ったフルーツ、真ん中に乗ったリスは丸っこくて立派なしっぽ。おいしそうでかわいいビジュアルに心つかまれます。
かわいさは観察眼から。線にこだわる追求の力
ご本ではグラスの中身、フルーツのカット、そしてリスの作り方がイラストを交えて説明されています。特に、「りすパフェ」のメインとなるリス作りにはより丁寧な説明がなされているのですが、この「リスをかわいく仕上げるコツ」がすごいんです。
リスの顔のベースになるのは実は鈴カステラなんだそうで、色といい形といい、その着眼点にも「ああーなるほど!」とうなりますし、さらに感心したのが「鈴カステラのラインにこだわって選ぶ」こと。リスのほっぺに当たる部分が「かわいくふっくら」としているものを選ぶのだそうです。鈴カステラのふくらみを人生で気にしてきたことがなかった身としてはそんなポイントが! とびっくりです。さらにチョコペンで顔を描くときも、鼻、目、シマなどの位置と描く順番を示されています。
かわいいものを作りたい! と思ってもシンプルな配置だからこそ、意外と思ったようなかわいさにならず苦労したことはありませんか……私はあります……。単純なかわいらしさって実は絶妙なバランスから生まれていますよね。物のシルエットやバランスに繊細に目を向け、ご自身が良いと思われる選択眼を得て、さらに他人に具体的に説明できるだけのアウトプット力という「かわいいをどう捉えているか」という結晶をさらりとご本にされているすごさ。ちょこんと描かれたリスのイラストや、アイスクリームをすくう器具であるディッシャーの的確な描写、分かりやすさと愛らしさを兼ね備えた手書き文字……といった本づくりから見える部分でも、かわいい「りすパフェ」を生み出せるお力の要因を感じます。
自分で描いて好みに仕上げる、最大級のご褒美スイーツ
ご本ではリスを支えるグラスの中身についても解説されています。ご本が出された時期に合わせてフルーツは柿を使ったり、カステラや、アイスやプリンなど市販のものと手作りの品が上手にミックスされていて、いかにもおいしそう! ブランデーやラム酒などが要所要所で使われているのが実は大人っぽかったりします。
作者さんも「グラスの中身は好きなものを入れてOK」と書かれていて、自分なら何を用意しようか、どんな積み重ねがおいしい組み合わせになるかな? と想像しているだけで幸せな気持ちになってきます。自分がかわいい! と思うものを表現して、おいしい! と思うものに飾ったら、もう最大級のご褒美ですね。こんなかわいいに出会いたい、そう思わせてくれるご本でした。
今週の余談
年内の同人誌レビューはこれが最終更新で、次回はもう新年明けになるんです。まあーまあまあまあ! この1年、どなたもおつかれさまでした。いいなって思うものにたくさん出会って、それを表現したいなって思えるような体験がたくさん世の中にあるように願っています。どうぞ良いお年を。
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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104ページという力作。
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