77歳で「細菌撲滅」を遊び続けるおばあちゃん―― 高齢ゲーマー4人に聞いた、彼らが「ゲームで遊び続ける理由」オタクの老後(4/4 ページ)

» 2021年03月26日 17時00分 公開
[たちこぎライダーねとらぼ]
前のページへ 1|2|3|4       

「Apex」に熱中する62歳、趣味が高じてゲーム開発者に

 BoiledFrogz(@sunnydeejey)こと安田圭吾さん(62歳)は元ゲーム開発者。かつてはハドソンに在籍し「スターソルジャー」(ファミコン)や「カトちゃんケンちゃん」(PCエンジン)など、ゲーマーなら誰もが知るタイトルの開発に携わってきました。

 安田さんが現在ハマっているのが「Apex Legends」(PC・PS4・Switchなど)。仲間とチームを組んで他のプレイヤーと戦う、1人称視点のシューティングゲームです。「『Apex』は作り手の目線で見ても素晴らしいゲームです。日本人には作れないのではないでしょうか」と安田さん。チャットツールの「Discord(ディスコード)」を使い、クラン運営にも協力しながら、仕事の傍ら、今は平日で4時間程度、休日は6時間程度遊んでいるといいます。

 中学生のころからボードゲームなどアナログゲームが好きだった安田さんは、高校生のときにApple II(iPhoneでおなじみアップルの最初期のPC)のゲームを見て衝撃を受けます。大学生になるとバイトに励み、溜めたお金で、当時は高額だったApple IIの代わりにPC-8801を購入。以来まともに授業に出ることも少なくなり、ゲーム漬けになりました。

 しかしそのかい(?)あってシステム開発会社に就職でき、やがてゲーム開発者の道を進んでいくことになります。

「ゲームが生活そのものだったので、おかげで多くの人と出会え、多くのゲームをリリースすることができ、いろいろと得難い経験ができました。幸せです」(安田さん)


ゲーマーの老後 ゲーム用のモニター(左)と「discord」用のモニター(右)

 ゲームで遊ぶうえで年齢がネックになることはないか聞くと、「プレイ自体はやはり若いメンバーにはかないませんが、『APEX』はチーム戦ゲーなのでダウンしてもすぐ助けてくれます。それがうれしいです」と安田さん。また、Discord内で若いメンバーと話していても、時折マンガやアニメのネタについていけないことはあるものの、「それなりに立ててくれる」といいます。「当然、気を使われているのでしょうが(笑)」(安田さん)


安田さんはYouTubeでゲーム動画の配信にも挑んでいます(安田さんのYouTubeチャンネル

 安田さんはゲームを楽しみながらも、開発者らしく、身をもってゲームと高齢者の関係を模索しています。

 「高齢ゲーマーのために、Discordのようなツールで交流しながらマルチプレイ(複数人で遊ぶ)ゲームが楽しめる、リアルでもオンラインでも集まれるような場所があればいいなあと考えています。もしかするとそれは、次世代型の高齢者施設なのかもしれませんね。個人としては、ゲームを作りたいという意欲もまだまだあります。その過程や作品を共有できる友達がいればきっと幸せでしょうね」(安田さん)

 日本にはリテラシーデバイド(情報の格差)があり、いまだ「発展途上」であるとみている安田さん。今後、今後、日本から高齢者向けの新しいゲームが生まれることに期待しているといいます。。

 安田さんはまた、さらに年老いてもしも認知症になった場合、自分がどのようにゲームに関わっていくのか、楽しみにさえしているようです。

 「いつか私たちが認知症になったとき、どのようにコンピュータを使い、ゲームやSNSと関わっていくのか。それが自分自身にどう影響するのかに興味があるんです」という安田さん。「特に短期的な記憶を失ったとき、ゲームを遊ぶことで反射神経や運動能力にどんな影響が現れるのか。それを知ることができる新しい時代が来ていると感じています」とし、自らその一例となるために「死ぬまでコンピュータを使い続ける」と語ります。


高齢ゲーマーがゲームの「向こう」に見ているもの

 今回の取材を通して、印象深かったワードは2つ。「反射神経」と「コミュニケーション」です。

 高齢ゲーマーは、反射神経の衰えを防ぐことを目的にゲームを続けたり、逆にゲームを続けることで反射神経の衰えを感じているようです。高齢になり体力の衰えで外出が難しくなったり、コロナ禍のように外出しにくい社会情勢が今後再び訪れたりしても、家で楽しめるゲームは、高齢者の日常を彩る手段の1つとして身近になっていく可能性があります。

 もう一つはコミュニケーションです。「ゲームそのものが楽しい」というのは当然のこととして、今回話をうかがった皆さんは、ゲームを通して構築される人間関係を大切にされているようです。孤立しがちな社会のなかで、地域や世代を超えて交流するアイテムとして、ゲームの存在が見直されるべきなのかもしれません。


前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/06/news042.jpg ハードオフに1650円で売られていた“まさかの掘り出し物”→修理すると…… 見事な復活劇に「相場が上がってしまうw」
  2. /nl/articles/2501/06/news014.jpg 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら……3年半後、目を疑う結果に大反響 2024年に読まれた植物、家庭菜園記事トップ5
  3. /nl/articles/2501/05/news001.jpg 幼稚園の「名札」を社会人が大量購入→その理由は……斜め上のキュートな活用術に大反響 2024年に読まれた面白記事トップ5
  4. /nl/articles/2501/06/news043.jpg 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  5. /nl/articles/2501/06/news090.jpg 【編み物】10年前祖母が教えてくれた編み物、まさかの作品を生み出して…… 二度見必至の完成品に「信じられない」
  6. /nl/articles/2501/05/news006.jpg 目からウロコな“ビニール袋のたたみ方”が100万再生 超便利な“裏技”に「こっちの方が絶対いい」
  7. /nl/articles/2501/05/news033.jpg 「昔はモテた」と話す母→全然信じていない息子だったが…… 当時の“異彩を放つ姿”に驚き「わぁ!」「とても魅力的」【海外】
  8. /nl/articles/2412/27/news137.jpg 男性に「きみの友だちを紹介してよ」と言われてきた女性、40キロの減量に成功し…… 人生激変した姿が120万再生「自信がついてさらに輝いている!」【独】
  9. /nl/articles/2501/06/news046.jpg 北海道の用水路で“巨大な外来魚”を捕獲→さばいてみると…… 中から出てきた“ヤバすぎる物体”に大興奮「ずっと釘付け」
  10. /nl/articles/2501/05/news015.jpg 【編み物】白と黒の毛糸をひたすら編んでいくと…… “あの人気キャラ”の完成に「あなたは魔法使いですか?」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  2. 大谷翔平、妻・真美子さん妊娠公表→エコー写真に“まさかの勘違い” 「デコピン妊娠?」「どう見てもデコピンで草」
  3. 「すごい漢字!」 YouTuberゆたぼん、運転免許証公開 「本名の漢字」に衝撃の声続々
  4. 「麻央さんにそっくり……」 市川團十郎の11歳息子・勸玄の成長ぶりに驚きの声 「大きくなってる!」「すでに貫禄がある」
  5. チェジュ航空社長、日本語で謝罪 犠牲者は170人以上との報道 公式サイトは通常のオレンジからブラックに
  6. 「スマホ入荷しました」 ハードオフ店舗がお知らせ→まさかの正体に大横転 「草しか生えない」
  7. 母「昔は数十人もの男性の誘いを断った」→娘は信じられなかったが…… 当時の“想像を超える姿”が2800万再生「これは驚いた」【海外】
  8. 毛糸で作ったお花を200個つなげると…… “圧巻の防寒アイテム”完成に「なにこれ作りたい……!!」「美しすぎる!」と100万再生【海外】
  9. 「思わず泣きそう」 シャトレーゼの“129円クリスマスケーキ”に衝撃 「すごすぎない!?」「このご時世に……」
  10. 「デコピンを抱き寄せたのはもしかして」 妻・真美子さん第1子妊娠発表で大谷翔平の発言と行動に再注目 「“もう帰る?”は気遣っていたのかも」
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」