ニュース
» 2021年05月28日 08時30分 公開

名物は生まれるものではなく「作るもの」  鳥取名物「元祖かに寿し」誕生秘話(1/12 ページ)

毎日1品、全国各地の名物駅弁を紹介! きょうは鳥取名物「元祖かに寿し」の誕生秘話をお届けします。

[ニッポン放送(1242.com)]
ニッポン放送
駅弁 お好みかに寿し
駅弁 駅弁 駅弁 駅弁 駅弁 駅弁 駅弁 駅弁 駅弁

「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第25弾・アベ鳥取堂編(第3回/全6回)

駅弁で最も大事な要素の1つとされる「ご当地性」。山陰・鳥取といえば、何と言っても「かに」です! いまから70年近く前、冷凍技術が未熟でかにの商品価値がなかった時代に、いち早くご当地性に着目し「駅弁」として商品化、通年販売にこぎつけ、鳥取名物として、かにのブランド化の一翼を担ってきたのが「アベ鳥取堂」です。今回は、日本で初めての「かに寿し」駅弁の誕生秘話をご紹介いたしましょう。

駅弁 キハ189系気動車・特急「はまかぜ」、山陰本線・鎧〜餘部間(2018年撮影)

東海道・山陽本線、播但線、山陰本線経由で、大阪・神戸と主に兵庫県の但馬地方を結んでいる特急「はまかぜ」。日本海に面し、かにの最盛期を迎えた真冬の但馬地方は、雪景色となる日も多くあります。キハ189系気動車によって運行される3往復の「はまかぜ」の定期列車のうち、上りの2号と下りの5号は鳥取発着で運行されており、早朝と深夜の鳥取駅にも顔を出します。

駅弁 アベ鳥取堂・阿部正昭社長

冬の日本海を代表する味覚といえば、何と言っても松葉がに。鳥取駅弁「アベ鳥取堂」が昭和27(1952)年から販売している駅弁「元祖かに寿し」は、駅弁に“かに寿し”というジャンルを切り拓いたロングセラー駅弁です。そんな「かに」と一緒にカメラに収まっているのは、アベ鳥取堂の阿部正昭社長。「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第25弾、阿部社長にかに寿しの誕生秘話を伺いました。

駅弁 ベニズワイガニの棒肉

じつは昔、山陰の「かに」の美味しさはほとんど知られていなかった!

―:戦後、「元祖かに寿し」を開発したきっかけを教えて下さい。

阿部:昭和20年代半ば、当時の国鉄から全国の駅弁業者に「郷土色豊かな駅弁を作りなさい」というお達しが文書で出たと聞いています。それまでは食糧難もあって、とりあえず駅弁でお腹を満たすということが優先されましたが、(落ち着いてきたこともあって)移動する人が増えてきたのだと思います。そこで、アベ鳥取堂としては、「かに」に注目したというのが最初です。

―:なぜ「かに」だったのでしょうか?

阿部:松葉がには美味しかったのですが、当時は「商品価値のないもの」でした。冷凍技術もなく、いまのような冷蔵庫もなく、かにを輸送できる物流もありませんでした。だから、港で揚がったものは、その周辺で食べるしかなかったのです。もちろん、漁業だけでなく、農産品も食肉も同様でした。美味しいから他のところへ持って行って「売ろう」という発想が、当時はなかったのです。

駅弁 元祖かに寿し・初期の掛け紙

菓子屋ルーツの店だからこそ「保存」技術を磨いて、通年販売を実現!

―:開発のご苦労は、大きかったでしょうね?

阿部:お達しが昭和25(1950)年にあったと聞いています。そこから昭和27(1952)年の「元祖かに寿し」の開発まで、約2年かかりました。当初は松葉がにのシーズンだけでしたので、冬季限定販売でした。そのころの掛け紙は、冬の山陰の海らしい深い緑色で、70円と記載されています。そこから6年かけて通年販売にこぎつけました。

―:「かに寿し」の通年販売を実現する上で、どのようなハードルがあったのでしょうか?

阿部:(通年販売の「かに寿し」の開発は)本当にゼロからのスタートだったと聞いています。ただ祖母が浜坂(兵庫県)の出身でした。この縁で、浜坂のかにの加工を行う業者さんとつながりができまして、祖父と一緒になって、通年でいただくことができる「かに寿し」を開発していくことになったと言います。加工・保存技術を持ったことで、他の駅弁屋さんへかにを送ったこともあったそうです。

駅弁 お好みかに寿し(元祖かに寿しと同じ、かにのちらし寿しが入っている)

オリジナルにこだわり続けて60年以上!

―:通年で「かに」を提供するスタイルは、いまと変わっていませんか?

阿部:旬の冬場にまとめて仕入れ冷凍保存、通年で販売するスタイルはこのとき確立しました。(水揚げしたカニを30〜40分ほど茹でて、)かにの身を手作業でほぐしていきます。機械化してしまうと、流水を使うため、かにの身が傷ついてしまうのです。手作業で行うと、うま味が逃げることもありません。これを真空状態で冷凍・保存し、調理に当たって解凍する作業を行っているわけです。

―:「元祖かに寿し」は、ほとんどアベ鳥取堂のオリジナルだそうですね?

阿部:これができた背景には、鳥取というまちが「閉鎖都市」であったことも大きいと思います。他の地域とつながっていないゆえ、全ての調味料を鳥取で調達することができました。酒、酢、醤油……すべての業者が小規模ではありますが、鳥取のまちにありました。奈良漬も、鳥取市内の造り酒屋にお願いして作っていました。いまは瓜の調達に難があり、灘の酒粕でオリジナルのものを作っていただいています。

駅弁 お好みかに寿し

【おしながき】

  • かにちらし寿し
  • かにのにぎり寿し
  • かにの細巻
  • 奈良漬け
駅弁 お好みかに寿し

「元祖かに寿し」と並んで、鳥取駅弁のロングセラーと言えば、「お好みかに寿し」。この春、大幅にパッケージがリニューアルされ、封を開けると、ふたの裏側には、鳥取県の鉄道路線図ともに、かに寿しのエピソードが書かれたものとなりました。定番のかに寿しだけでなく、にぎり、海苔巻と、3つのかに寿しを楽しむことができます。また、にぎりは個別包装として、手を汚さずにいただくことができるようになりました。

駅弁 キハ187系気動車・特急「スーパーまつかぜ」、山陰本線・末恒〜宝木間

阿部社長曰く、鳥取のまちへ入るには、必ずどこかでトンネルをくぐるのだそう。三方を山に囲まれ、目の前は海という地形は、鳥取の人やモノの他の地域への流出を防いで、ユニークな食文化が守られる結果となりました。その独自性にいち早く注目して「名物」として作り上げ、通年販売の実現を通してブランド化に成功したのが「元祖かに寿し」です。

次回は、阿部正昭社長にアベ鳥取堂の食へのこだわりを伺ってまいります。

(初出:2021年4月12日)

連載情報

photo

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史

昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。

駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/


※新型コロナウイルス感染症、Go To事業、運行状況に関する最新情報は、厚生労働省、内閣官房、首相官邸、国土交通省・観光庁のWebサイトなど公的機関で発表されている情報、鉄道事業者各社の情報も併せてご確認ください


おすすめ記事

「駅弁膝栗毛」バックナンバー

       1|2|3|4|5|6|7|8|9|10|11|12 次のページへ

Copyright Nippon Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

先週の総合アクセスTOP10

  1. 勝手に「サービス終了ゲーム総選挙」をやったら6700票も集まってしまったので結果を発表します 2位の「ディバインゲート」を抑えて1位に輝いたのは……
  2. ママとの散歩中、田んぼにポチャンした柴犬さんが帰宅後…… パパに一生懸命アクシデントを報告する姿がいとおしい
  3. “26歳年の差婚”の菊池瑠々、第4子妊娠を発表「もう、とにかくうれしいです!」 年上の夫も満面の笑み
  4. 桐谷美玲、隠し撮りに「絶対ヤバい顔」 “ほぼ半目”な不意打ち写真に「100点満点に可愛い」と全力フォローの声
  5. 村田充、3匹目の愛犬の存在明かす 神田沙也加さんから引き取ったブルーザーとは「数日で仲良くなりまして」
  6. 三浦孝太、母・りさ子誕生日に“家族4ショット”でお祝い キングカズも笑顔の写真に「家族が1番!」
  7. バレー日本代表の清水邦広の再婚に盟友・福澤達哉さん「相手は私ではございません」 元妻は中島美嘉
  8. 「駅の待合室をバケモンが占領している」→“謎の生き物”の正体について大分県立美術館に話を聞いた
  9. 滝沢カレン、倖田來未の“バックダンサー”になりすまし 感極まって「人一人洗えるくらい泣きました」
  10. 宮崎駿愛用の「電動消しゴム」が故障 → サクラクレパス公式が倉庫の奥から発掘 Twitterが繋いだ温かな展開が話題に

先月の総合アクセスTOP10

  1. 「どん兵衛」新CMに星野源が復活も衝撃の新展開 “どんぎつね”吉岡里帆の正体明かされ「完全なホラー案件」「狂気を感じる」
  2. ハラミちゃん、“公称145センチ”も本当の身長にゴチメンバー驚き 「デカイっていわれるのが嫌になっちゃって……」
  3. 西川史子、退院を報告 「生きていて良かったと思っていない」と告白も、力強い現在の心境明かす「私は医師です」
  4. 「もうアヒル口」「美人確定ですね!」 板野友美、生後2カ月娘の“顔出しショット”にみんなメロメロ
  5. 「気ぃ狂いそう」 木下優樹菜、生配信中止で“涙のおわび動画” やらかしたスタッフに「生きてたらミスぐらいする」
  6. 東大王・鈴木光、“お別れの笑顔”で司法試験合格を報告「本当にありがとうございました」 SNS閉鎖に涙のエール続々
  7. 「こんな普通に現れるの?!」「バレそうで心配」 倖田來未、駅のホームに“普通に並ぶ”姿にファン驚き
  8. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」「どストレートに餅で笑った」と称賛集まる
  9. 第1子妊娠のすみれ、母・松原千明と2年ぶりに涙の再会 「やっとママに会えました」と感動的な親子ショット公開
  10. 渡辺裕之、66歳バースデーで息子と2ショット 合同誕生日会に「すごいお料理とケーキ」「イケメン息子さん」