じつは進化していた、鹿児島本線・折尾駅の駅弁立ち売り 折尾駅弁・東筑軒(2):折尾駅「大名道中駕籠かしわ」(1100円)
駅弁好きがこだわるのは、折尾駅のホームでいまも続けられている「立ち売り」の売り子さんから購入すること。いまのご担当になって8年あまり、駅弁文化の伝統を守りつつ、売り方も着実に進化を遂げていました。











【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
今年(2021年)7月で誕生から100周年を迎えた、鹿児島本線・折尾駅(福岡県)の名物駅弁「かしわめし」。製造・販売する「東筑軒」の売店は折尾駅をはじめ、北九州市内に点在していますが、駅弁好きがこだわるのは、折尾駅のホームでいまも続けられている「立ち売り」の売り子さんから購入すること。いまのご担当になって8年あまり、駅弁文化の伝統を守るだけでなく、売り方も着実に進化を遂げていました。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第28弾・東筑軒編(第2回/全6回)
博多〜大分間の特急列車「ソニック」。ブルーメタリックの外観が印象的な883系電車は、平成7(1995)年の登場から、去年(2020年)で25周年を迎えました。883系はスピードを保ったまま、カーブを通過できるように車体を傾けられる振り子式となっているのが特徴。博多を出ると途中、折尾、黒崎、小倉、行橋、中津、別府の6駅のみに停まる速達タイプの列車では、大分まで約2時間で走破します。
特急「ソニック」の全列車が停まる折尾駅(北九州市八幡西区)。鹿児島本線と筑豊本線が立体交差していた駅として知られ、明治24(1891)年の開業から、今年(2021年)で130年の節目を迎えました。近年はリニューアルが行われ、1月からは大正5(1916)年に建設されたかつての折尾駅舎の姿をできるだけ再現した新駅舎の使用が始まりました。駅の周辺には大学や高校も多く、若い世代の利用者も目立ちます。
新しい折尾駅の改札口を入ると、正面に見えるのが、創業100周年を迎えた「東筑軒」のうどん店。その前におなじみのスタイルで立つのは、立ち売りを担当している、東筑軒の小南英之(こみなみ・ひでゆき)さんです。小南さんは平成25(2013)年2月から立ち売りを担当。いまや「駅弁」の立ち売りがほぼ毎日(水曜除く)見られるのは、全国でも折尾駅くらいです。とても希少な鉄道風景が、大都市の日常に溶け込んでいるのです。
小南さんの主戦場は、もちろん特急「ソニック」。大分方面行の列車がやって来る時間になると、4.5番ホームに上がって「折尾〜名物! かしわ〜めし!」と売り声を響かせます。7月は「かしわめし」の売り声のなかに「100周〜年!」のフレーズも折り込んで“いまだけ”の立ち売り風景を見せていただくことができました。かつては、「ソニック」への駅弁の積み込みもありましたが、いまはないのが残念……と小南さんも話します。
「かしわ〜めし!」と声を上げていた小南さんに、「よかった! 逢えた〜!」と常連のお客様が駆け寄ってきました。地元にお住まいで、この日は福岡市内で一人暮らしをしているお子さんのもとを東筑軒の「かしわめし」を手土産に訪ねるのだそう。「食べ盛りなので、かしわめし(小)1つでは足りなくて、いつも多めに持っていくんです!」と声が弾みます。立ち売りの伝統駅弁が深める家族の絆。駅は新しく変わっても人の温かさは健在です。
「かしわめし(小)」と「かしわめし(大)」の販売が基本となる小南さんの立ち売りですが、売り箱のなかにひときわ大きなパッケージの駅弁を詰めていました。その名も、「長崎街道大名道中駕籠かしわ」(1100円)。江戸時代、九州の大名が参勤交代に使ったという長崎街道が通っていたいまの北九州市。これにちなんで、かご型の二段重ねとなっており、おかずがたっぷり入ったかしわめしの“豪華版”とも言える駅弁です。
【おしながき】
(壱の重)
- かしわめし 鶏肉 錦糸玉子 刻み海苔 紅生姜
(弐の重)
- 白身魚フライ
- 鶏のから揚げ
- ミートボール
- 玉子焼き
- 蒲鉾
- 煮物(里芋、椎茸)
- 中華風サラダ
- 切り干し大根
- しば漬け
- うぐいす豆
長崎街道の地図が描かれた掛け紙を外し、かご型容器の屋根に当たる紙蓋を開けると、おなじみ三色のかしわめしと、幕の内系のおかずがたっぷり詰まった二段重ねの駅弁が現れました。かしわめしは美味しいけれど、やっぱりおかずも欲しいという欲張りのアナタに最適な駅弁。折尾駅はもちろん、小倉や博多といった新幹線停車駅でも販売があります。ちなみに、駕籠を担ぐ棒に割箸が入っているのもいいデザインですよね。
平成25(2013)年の立ち売りデビュー直後から、機会あるごとにお話をさせてもらっている小南さん。「8年前はまだ緊張していて売り声も硬かった」と当時を振り返ります。いまは保温のシートを付けた売り箱に進化。自作の「かしわめし応援歌」を作って唄いながら、鶏にちなんで両手で羽ばたく振付を付け、1人でも多くのお客さまの目を引こうと懸命です。利用者には、時間帯に合わせ「いってらっしゃい」「おかえりなさい」と声をかけていきます。
福岡都市圏を中心に快速・普通列車として活躍する811系電車。平成元(1989)年、JR九州が発足後初めて製作した近郊型車両で、折尾駅にもしばしば顔を出してくれます。登場から30年あまり、いまはリニューアルに合わせ、車内はロングシート化が進みます。在来線の駅弁旅は厳しさが増すなか、「できる限り、立ち売りは守りたい」と力強く話すのは東筑軒の佐竹真人社長。次回からは佐竹社長にたっぷりとお話を伺っていきます。
(初出:2021年8月11日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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