「DUNE/デューン 砂の惑星」レビュー 60年前の作品を、なぜ「今」映画化するのか(2/3 ページ)
加えて特に評価できるのは、SFを絵にするクリエイティブ力である。ゼロ年代以降のSF小説をグレッグ・イーガンとともにけん引するテッド・チャンの言語SF「あなたの人生の物語」を原作とした「メッセージ」では、そのあまりに独創的な宇宙船が話題を誘った。
また「ブレードランナー」の正当続編という高いハードルをクリアしてみせた「ブレードランナー2049」でも、80年代当時のサイバーパンク観を正当に進化させ、どこか旧く懐かしい、しかし存在し得ない架空の未来をつくりあげた。
ヴィルヌーヴは1960年代の古典SFを、絢爛でありながらテンプレートとならない、絶妙なバランスで描いてみせた。『デューン』は数多の映画に影響を与えており、一歩間違えばそれらの逆輸入と見られかねない危険がある。
しかし砂漠を生き抜くパワードスーツや飛行機体、建築美術、衣装のもつオリジナリティーは、その時代性を感じさせない。絵で見たときに何かのパロディーになっていない、というのは彼の作品で最も評価すべきところだ。
ただし「なぜ、今、デューンをやるのか?」という思いは当然ある。これらの尽力をもってしても、宇宙を舞台にした英雄譚というストーリーが抱える根本的な古臭さは否めないからだ。
しかしヴィルヌーヴは早くも3作目の構想を明かしており、HBO Maxはオリジナルドラマ「デューン:シスターフッド」の配信を予定している。本作が“長大な原作をベースにした一大シリーズの構想”を描いていることは間違いないだろう。
このスピード感はもちろん経済的な理由によるものだ。10月現在、本年度の全米興行収入ランキングベスト20のうち半数以上は続編・リブート・フランチャイズ・ユニバース作品で締められている。ワーナー・ブラザーズが膨大な原作量を誇る「デューン」シリーズに、次なる稼ぎ頭を期待しているのは自明の理だろう。
原作の立ち位置とこれまでの経緯から非常に高いハードルを掲げられた本作が、最新の技術により、過去最大に成功した映像として仕上がったのは間違いない。
IMAXで展開される圧巻のビジュアル、ハンス・ジマーの力強いBGMが魅力的なことは疑いようもなく、ティモシー・シャラメ、オスカー・アイザックらの演技と豊かな衣装美術はキャラクターたちの実在感を確かに確立している。また、ジェイソン・モモア、ジョシュ・ブローリン、デイヴ・バウティスタらスーパーヒーロー俳優たちの存在感はメタ的な笑いを誘い、原作および過去の映像化作品に触れたことのない新しい観客にフレッシュな喜びを与えることに成功している。
すでに批評的成功を獲得している同シリーズだが、末永く続くユニバースとなり得るかは本作の商業的成功にかかっている。果たして現代の観客は、新しい時代のスカイウォーカーを受け入れるだろうか?
(将来の終わり)
関連記事
- 「ソウ」シリーズ4年ぶり新作「スパイラル:ソウ オールリセット」レビュー 9度目の殺人劇は“最恐”を更新したか
みんな大好き「ソウ」シリーズの最新作。 - 「シン・エヴァンゲリオン劇場版」ネタバレなしレビュー 「シン・エヴァ」の「エヴァ」らしさ
ついにその姿を現した「シン・エヴァ」。 - いま、社会で起こっている恐怖 “わたしたち”を描くホラー映画「アス」の本当の怖さ
「ゲット・アウト」の監督最新作。 - 「バーフバリ」、バラーラデーヴァ応援上映から次回作まで S.S.ラージャマウリ監督大いに語る
監督に語っていただきました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
-
川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
-
中村雅俊と五十嵐淳子の三女・里砂、2年間乗る“ピッカピカな愛車”との2ショを初公開 2023年には小型船舶免許1級を取得
-
大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
-
「壊れてんじゃね?」 ハードオフで買った110円のジャンク品→家で試したら…… “まさかの結果”に思わず仰天
-
猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
-
なんと「身長差152センチ」 “世界一背が低い”30歳俳優&“世界一背が高い”27歳女性が奇跡の初対面<海外>
-
大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
-
「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
-
「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
- 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
- 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
- ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
- 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた