ガンダムやゲッターロボのオープニングを“雑に実写再現” 100万再生のファンメイド動画、制作者に聞く裏側(1/3 ページ)

「『雰囲気』を完全再現」「ハイクオリティと低クオリティの高度な融合見飽きない!」と大きな反響。

» 2023年02月24日 20時00分 公開
[谷町邦子ねとらぼ]

 アニメや特撮、映画などざまざまなジャンルのファンアートで、本物さながらの再現度を目指す人がいる一方、あえてその逆を行くような動画が注目を集めています。その名も「雑に実写再現」。

雑に実写再現 「雑に実写再現」の「Z・刻をこえて」に登場するガンダムの着ぐるみ

 「雑に実写再現」は、YouTubeチャンネル「ツカーサさんの記録」で公開されている動画シリーズ。プロデューサーのツカーサさんのもと、数々の巨大ロボットアニメのオープニングを実写化しています。動画には大きな反響があり、なかでも「機動戦士Zガンダム」のオープニング「Z・刻をこえて」は再生回数100万回を突破しています。

「雑に実写再現」の「Z・刻をこえて」

 「雑」と銘打っているにも関わらず、「低予算ながら綿密に再現されている動画に賞賛っ!!」「いや、タイミングの合わせ方といい、すっごい神経使った編集してますやんwwwちゃんと『雰囲気』を完全再現してるから、100点満点の出来栄え」「雑と言いつつ、登場人物の細かい角度や、髪のなびき方まで、作品愛を感じてめちゃくちゃ好き」など、多くの賛辞が寄せられています。

雑に実写再現 クワトロ・バジーナ(シャア)とカミーユのシーンも

 「この雑さの中にオリジナルを彷彿(ほうふつ)とさせるクオリティがたまりません」「このハイクオリティと低クオリティの高度な融合見飽きない!」というコメントもあり、出演者の表情や編集の妙、手作りのガンダムの着ぐるみなど強いこだわりが感じられる箇所がありつつも、コクピットは段ボール、スペースコロニーは缶ビールの「金麦」で表されるなど、素材むき出しの状態であえて見せる「雑さ」とのバランスも魅力のようです。

雑に実写再現 コクピットは段ボール
雑に実写再現 衝撃&笑撃の金麦コロニー

 「雑」かつ完成度の高い動画はどうやって生まれるのか、どんな人が作っているのか。ツカーサさんに聞きました。 

結婚式に出られない、コロナ禍で実家に帰れない……。不測の事態から誕生

 ツカーサさんは関東在住の30代後半の男性。仕事が休みの土日中心に創作活動を行っています。「雑に実写再現」動画を作り始めたきっかけを聞くと、意外な答えが返ってきました。

 「8年前、友達の結婚式に出られなくなってしまって、ビデオメッセージを「北斗の拳」のオープニングテーマ「サイレントサバイバー」で作ったのがきっかけです」(ツカーサさん)

雑に実写再現 「北斗の拳」のオープニングテーマ「サイレントサバイバー」 近所の公園が世紀末の世界に

 初めて「雑に実写再現」した「北斗の拳」のオープニングは再生回数が伸び、手ごたえもあったそうです。しかし、当時、編集に使用していたのが「YouTubeビデオメーカー」で、動画を切ったりはったりしかできず、ツカーサさんは技術的な限界を感じ、次の作品までに約6年もの年月を要してしまいました。

 しかし、意外な出来事が制作再開につながります。

 「次に作ったのが『装甲騎兵ボトムズ』の雑に再現動画です。コロナ禍のゴールデンウィーク(2021年)に実家に帰るのをやめにして、休みを有効利用するために作ろうってことになりました。ちょうどその時、新しい画像編集ソフト『パワーディレクター』っていうのを手に入れて。友だちにやらないかと声を掛けました。だいぶ間が空いてしまい、再スタートという感じですね」

雑に実写再現 現在も使用するソフトで初めて「雑に実写再現」したロボットアニメ「装甲騎兵ボトムズ」のOP

 動画には「マジンガーZ」「無敵超人ザンボット3」など、70年代に放映されたロボットアニメを再現したものも。ツカーサさんの年齢だと、リアルタイムで見ていないアニメのはずですが……。

 「僕は40歳近いのですが、昔のロボットアニメってゲーム化されていたり、テレビで再放送されたりしていたので、子どもの頃のネットがない時代でも昔の作品に触れる機会はありました。ゲームは『スーパーロボット大戦』でよく遊んでいました。大人になるにつれ、70年代・80年代の古いものが好きになっていったんです」(ツカーサさん)

土日に自宅や近所の公園で撮影。出演者はかつてのミュージシャンつながり

 さて、「雑に実写再現」の動画制作にはどれくらい時間がかかっているのか。「まちまちなんですよね」と言いつつも、ツカーサさんは工程ごとにかかる時間を教えてくれました。

 「最初、動画内に出てくるロボットはフィギュアやプラモデルを使ってたんですけど、今は着ぐるみです。着ぐるみを作るのに最低3日は欲しいんですよね。さらに、出演者のスケジュールを合わせて撮影をする。撮影には半日くらいかけています。動画の編集自体は1日で終わったりするんですけども。ペース的には早くて月に1回くらい。時間かかるときは3か月に1回くらいになっちゃうんですよね」(ツカーサさん)

 着ぐるみ制作や動画編集は自宅で行い、撮影も身近な場所で行っているようです。

 「撮影も映像を合成で作るときは自宅で撮ります。外ロケ(※屋外でのロケ)っていうのも多少あるんですけど、例えば『装甲騎兵ボトムズ』で使ったのは近所の公園。『ゲッターロボ』もそうです。あとは会議室を借りてやったこともあったし。前回(2023年1月)作った『無敵超人ザンボット3』は、出演者の家に車で行って撮影させてもらいました」(ツカーサさん)

雑に実写再現 「ゲッターロボ」 出演者の後ろに滑り台が見える

 出演者は公募しておらず、すべてツカーサさんと何らかのつながりがある人とのこと。しかし、動画に出る人をたくさん集められるのには理由がありました。

 「よく出てくれているのは梅津翔(かける)( @like_public)さんという俳優です。僕は30代前半までミュージシャンをやっていたのですが、その頃からの知り合いですかね。『戦闘メカ ザブングル』に出てくれたのは、声優・ナレーターのおかだまさたか(@okadamasataka)さん、『機動戦士Zガンダム』に出演したミュージシャンのけいにょー(@km_un_pots)さんの3人がメインでやっています」(ツカーサさん)

雑に実写再現 ツカーサさんが「存在感がある」と評する「戦闘メカ ザブングル」の「疾風ザブングル」出演のおかだまさたかさん

 「全く知らない人より、自分の身近な人、多少知っている人とやりたい」というツカーサさんの思いで、友だちや友だちから紹介を受けた人が出演。特にロボットアニメに詳しい人だったり、ファンだったりするわけではないそうです。そんな、アットホームな環境で作る「雑に実写再現」ですが、出演者は不足気味とのこと。

 「収益化していないし、物を作ったり衣装を買ったりとか僕がお金かけてやってるので、出演者にはギャラが出せません。それに、女性の出演者の場合、出番が少なくて『せっかく来たのにそんなにしか出ないんかい』というパターンになってしまうんですよね。だいたい12時には来てもらってるんですけど、お昼ごはんはこっちで出します。ギャラは出せないけどご飯は出すというスタンスです」(ツカーサさん)

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news042.jpg 夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
  4. /nl/articles/2411/14/news090.jpg ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  5. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. /nl/articles/2411/13/news162.jpg 「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
  9. /nl/articles/2411/14/news035.jpg 160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
  10. /nl/articles/2411/12/news194.jpg 「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた