誰もが知るおとぎ話が「めでたし」となったその後は……? 「童話のアフターストーリー」を描いたマンガに「刺さりまくりました……」「最高に好み」(1/2 ページ)

おとぎの国で役目を終えたモノを引き取る、とある兄弟の廃品回収物語。

» 2024年02月23日 12時00分 公開
[西尾泰三ねとらぼ]
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 誰もが知るおとぎ話が「めでたし」となったその後――おとぎの国の労働者(廃品回収業者)の視点から描かれるマンガ『アフターメルヘン』がX(旧Twitter)で話題を呼んでいます。作者・田島生野さん(@ikunoTJTJ)の投稿は記事執筆時点で800万件に届く表示回数となり、美しく幸せなだけでない、ときに醜悪で残酷な物語への注目が集まっています。

『アフターメルヘン』第1話 白雪姫

 本記事では、作者・田島生野さんへのインタビューと併せて、マンガ本編を掲載します。

『アフターメルヘン』作品紹介

 物語は、おとぎの国で廃品回収をなりわいとする兄・ヤコブと弟・ヴィルヘルムの兄弟が、今日も依頼主のもとに廃品回収へ向かう場面から始まります。

『アフターメルヘン』第1話 白雪姫

 おとぎの国の廃品回収業者という少し変わった役割ですが、この仕事に長く従事してきた兄は、依頼主からの信頼も厚いベテラン。その涼しげな表情とテキパキと仕事をこなす姿は、新人として同業に就くことになった弟からも尊敬のまなざしを向けられています。

『アフターメルヘン』第1話 白雪姫

 そんな2人が向かうのは白雪姫の居城。誰もが知るおとぎ話の白雪姫は、毒リンゴの眠りから覚め、王子と結ばれて15年。今は王妃となり、一人娘にも恵まれ幸せに暮らしているようです。

『アフターメルヘン』第1話 白雪姫

 王城に到着し、奥の間に案内される道中、1人で何かを見つめている女の子が兄弟の目にとまります。それこそが白雪姫の一人娘、マルガレータ。彼女が見つめていたのは、クモの巣に引っ掛かってもがいているチョウ。助けても無駄だとしながらも、かわいそうで醜くて残酷なその光景になぜか見入ってしまうマルガレータなのでした。

『アフターメルヘン』第1話 白雪姫
『アフターメルヘン』第1話 白雪姫

 マルガレータとヴィルヘルムが歓談している間に、兄は白雪と対面。変わらない美ぼうや柔和な表情、美容のために筋トレも始めたと朗らかに語る姿、幸せそうな白雪ですが、娘の話になると途端に表情を曇らせます。

『アフターメルヘン』第1話 白雪姫
『アフターメルヘン』第1話 白雪姫

 白雪が回収を依頼したのは、魔法の鏡。一見すると状態は悪くないものの、白雪は「壊れてしまっている」と強調。鏡があると、「お母さまと同じになってしまう」のだと不穏な内容も口にし、白雪の心をむしばむ何かがあることが示唆されます。

『アフターメルヘン』第1話 白雪姫
『アフターメルヘン』第1話 白雪姫

 結果、魔法の鏡を回収し、帰路へつく兄弟。世界一の美女(白雪)に会えなかったと残念がるヴィルヘルムに、「お前、もう会ってるぞ」と言葉少なに答えるヤコブ。ここでようやく、「世界で一番美しいのは、マルガレータ」だと魔法の鏡が答えていたことが判明し、それがかつて白雪の母がたどった道と同じであること、だからこそ白雪が娘につらく当たること、魔法の鏡が“壊れている”から手放すことで心の安定を図りたいことなど、物語の輪郭がはっきりと見えてきます。

『アフターメルヘン』第1話 白雪姫
『アフターメルヘン』第1話 白雪姫

 誰もが知るおとぎ話が「めでたし」となったその後、すなわち作品タイトルの通り“アフターメルヘン”。ヤコブが劇中でヴィルヘルムに説いて聞かせる「美しいだけじゃ物語は始まらない」「憎悪や嫉妬、醜悪なものが美しいものを磨き上げる」「だからこそ残酷なものは可哀想だけど心惹かれる」という言葉は、美しく幸せなだけでない、ときに醜悪で残酷な物語が描かれる同作のテーマを言い表しているかのようです。

『アフターメルヘン』作者・田島生野さんインタビュー

――― さまざまな童話をテーマにした本作。制作のきっかけ、このテーマで描きたかった理由などがあればお聞きしたいです。

 元々童話モチーフが好きでしたし、自分のアナログの画風とおとぎの国は親和性も高いだろうと思っていたので、いつか描きたいテーマでした。

 童話について考えていた時、「子どもの頃だからこそ流していたものの、大人になった今童話を読んでいて感じる、“よく考えたらこの展開おかしくないか?”というツッコミどころや引っかかりに焦点を当てて、そこを掘り下げていったら面白いのではないか?」と思ったのが本作制作のきっかけです。

 また、童話と別の何か異色なものをぶつけてみたいという思いがあり、当時新卒で、新人研修中の寮で考えていたせいもあるかもしれませんが、私の思う童話のイメージ(自由、綺麗、優しい……)と対極にあったのが、「労働」でした。そこから、おとぎの国の労働者(廃品回収業者)の設定が生まれました。

――― 制作でこだわっているポイントは?

 ストーリーを作る上でのこだわりは、読者の方に「納得感」を抱いてもらいたいということです。

 数百年世界中で愛され続けている童話の設定を借りて描く以上、読み手にとって「イメージと違う」「こんなのグリム童話じゃない」と思われてしまうこともあるかもしれません。その拒否感を少しでも減らしたくて、モチーフの童話のさまざまな訳、関連書籍を読み込み、「童話のアフターストーリー」を描くにあたり、できるだけ原作から無理のない展開で、読み手に「なるほど、こういう原作がある上で、こういうアフターなのね」と少しでも納得していただけるといいなと思いストーリーを組み立てています。

――― うれしかった読者からの反応・感想などありましたら、お教えいただけますと幸いです

 「面白かった」や「好き」というシンプルなご意見が一番うれしいです。

 あとは、前作『ヴィクトリアの電気棺』を覚えていてくださって、今作も興味を持っていただけたのがうれしかったです。

 でも、いただけた感想でしたら何でもうれしいです!

――― 読者へのメッセージをお願いします

 世の中にたくさんの素晴らしい作品がある中から本作を見つけていただき、読んでいただき、好きと言っていただき本当にありがとうございます。

 上下巻ということもあり、連載はもう半分以上進んでおりますが、最後まで楽しんでいただけるように今後も誠心誠意作品制作に取り組んで参ります!

 おとぎの国のその後の物語、兄弟の行く末など、最後まで見守っていただけるとうれしいです……!

(C)田島生野/イースト・プレス

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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