最先端の3D技術や映像技術が一堂に会し、その場で体験できる専門展「3D&バーチャルリアリティ展(IVR)」が6月25から27日まで東京ビッグサイトで開催されました。
あくまで商談用の展示会なのでかなりお堅いイメージ……だったのですが、実際に足を運んでみると激走するソファーにジャングルを滑走するターザン、しゃもじを使った冒険などなど、かなり面白い体験ができる場所でした! 今回はIVRの楽しい部分を凝縮してお届けします。
激走する「エクストリームソファー」にゾックゾク
ネットユーザーの皆さんにはすっかりおなじみのVR(バーチャルリアリティ)ヘッドセット「Oculus Rift」。VR技術の展示会とあっていたる所でOculusを体験する人々の姿が散見されましたが、特に「なんだこれは」と思わず立ち止まって二度見をしてしまったのは「エクシヴィ」の「エクストリームソファー」体験です。
ブースには普通のソファーが置かれていますが、座っている人々の表情がニタァとなったり歯を食いしばっていたりとせわしないんです。一体何が起こっているんです……? ちょっと試してみましょう。
Oculus Riftを装着すると目の前にとびっきりキュートな微笑みを浮かべているユニティちゃん(Unityのマスコットキャラ)が現れました。あ、手を振ってくれている! かわいい! Kinectで体験者の体の動きをトラッキングしているためで「もっと近づきたいなー」という願いもかなっちゃう仕組み。キスできる距離まで顔を近づけたり(しかし近づきすぎると貫通します)、しゃがんで下からのぞき込んでみたりと好きな角度からユニティちゃんを観賞できます。
おや、後ろを振り向くとソファーがありますね。現実のブースに設置されているソファーと瓜二つ! 思わず手を伸ばして触ってみると手のひらにクッションの弾力を感じます。まったく同じものがVR空間にも登場していることで現実空間とスムーズに接続され、奇妙な感覚にとらわれます。
手で感触を確かめつつ座ってみるとユニティちゃんがまだ目を合わせてくれているぞ! うおおおおお! う、うおおおおおおおおおお!? ソファーが、ソファーが宙に浮いてる! 山頂が見える!? ナンデ!? さっきまで明るいリビングであの子とイチャイチャしてたはずなのに。息もつかせぬ場面転換に頭が混乱するなか、ソファーは山間部の斜面を激走し始めました。エクストリームってこういうことか!
全身に風を受けながらズルズルと滑り落ち火口付近まで到達。さらに角度をぐるりと変えて木が生い茂る森を爆走し続けます。眼前に迫りくる木々に思わず体がすくみます。そして再びソファーがゆっくりと上昇すると急に夢からさめたかのように周囲が明るくなり、ユニティちゃんがいたずらっぽい笑顔で手を振っています。た、助かった。
なぜリアルに風の抵抗を感じることができたのかというと、サーキュレーターを持った人間が体験者に向けて風を送っていたのです。バーチャルと人力の合わせ技ですね。実はこのサーキュレーターを持っていた方、なんと「もしも、プログラミング経験がない文系の主婦がUnityをはじめて1ヶ月で ミクさんを出してダンスさせることができたら(主婦ゆに!)」で有名な主婦さんでした。貴重な体験をした……。
ビッグサイトにジャングル出現! アーアアー!
さらに会場をうろうろしていると、「日本バーチャルリアリティ学会」のブースに人だかりが。テントの支柱にツタがからまっていたり、なんだかジャングルっぽい雰囲気です。看板には「Virtual Tarzan(バーチャルターザン)」……? 面白そうなのでやってみましょう。
ステージは「宇宙」「江戸」「街」「俺の部屋」「ファンタジー」などがあり、筆者は特にオススメだという「ジャングル」のステージを選択。公園でよく見かける、ロープにつかまって滑走する遊具のような装置にまたがります。そしてOculus Riftとヘッドフォンを装着すると密林の中にぐわんと体が投げ出されました。
耳からはおそらくカラフルであろう鳥たちの声が聴こえてきます。ワイヤによるけん引でお尻の下から感じる振動がすさまじく、びゅんびゅんと密林を駆け抜けます。ちょ、ちょっとこれスピード感がはんぱないんですが……! 斜面にぶつかってリバウンドするところまで再現していて冷や汗ものでした。ちなみに一番スリルのあるステージは「街(City)」なんだそうです。またチャンスがあったら挑戦してみたい。
しゃもじ片手に大冒険 え、しゃもじ?
黄色とブルーのコントラストが鮮やかなブースに体験希望者の長い行列ができていました。「ソリッドレイ研究所」の「おしゃもじ大冒険」です。
横3面の3Dシアターに足を踏み入れると、机の上には3Dメガネ……そして、しゃもじ。商談に訪れたであろうスーツ姿のビジネスマンの方々が手にしゃもじを持っている様子はなかなかシュールですね。
部屋が暗転していよいよ物語が始まります。体験者の使命は同社のキャラクター「アイちゃん」を救出すること。アイちゃんは、クリエイターがノイローゼとなったため、色がついていない中途半端な状態でVR空間内に捨てられてしまった設定です。ビークルに乗り洞窟を探索し、廃墟となった神殿の中にアイちゃんを見つけるのですが、その道中では頭上から岩が落ちてきたり大蛇に襲われたりと一筋縄ではいかない試練が待ちうけています。
そのピンチを救ってくれるのが、例のしゃもじです。襲いくる岩や蛇に向かってしゃもじをかざすとバリアーのように光が展開して身を守ってくれるのです。しゃもじを握りしめた手には岩の破片や大蛇の攻撃で受けた振動をびりびりと感じます。しかし、どうしてしゃもじなの? お話をうかがうと「身の回りにあるものをアドベンチャーに取り込みたかったんです。あと、しゃもじで冒険っておかしいから記憶に残りますよね」とのこと。
しゃもじデバイスにはセンサと振動子とLEDが組み込まれており、触感をマイクで取得し、リアルタイムに振動子へ伝える仕組みなんだとか。振動子を使用したツールは現在大学の研究所やさまざまな機関で研究されていますが、このようなアトラクションへの応用も期待できそうですね。
雪ミクさんもグソクたんもいたぞ!
IVRはバーチャルリアリティ技術だけでなく3Dプリンタに関する展示も盛りだくさんでした。自動車用部品や精密機器部品を出力している様子をすぐそばで見ることができます。そんななか、見つけました――雪ミクさんです!
世界初となるマルチカラー&マルチマテリアル出力に対応した3Dプリンタを販売している「ストラタシス・ジャパン」ブースでは、「SNOW MIKU 2014」のワークショップで使用した雪ミク(初音ミク)の3Dモデルを展示していました。透明感のあるブルーとラベンダーの濃淡が繊細なかわいらしいフィギュアです。ミクさんの写メを撮るビジネスマンの方に一方通行のシンパシーをおぼえました。
ほかにも3Dプリンタで出力されたダイオウグソクムシたんや、ニコニコ超パーティーIIIで登場したテレヴィーナスも披露されていましたよ。
IVRはかっちりとした「ビジネス」の場ではありますが、随所に遊び心を盛り込んだ展示を行っている企業が多い印象を受けました。なんとも粋だなあ。これからの日本の3D・VR技術の発展がますます楽しみになりますね。
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