2度の挫折を経て「FFXI」にハマりつつある独身男性の物語(その1):ヴァナ・ディールをもう一度(2/2 ページ)
時代に取り残された浦島太郎は、釣りをすることもできない
フィールドに出て見覚えのあるモンスターを倒し、コツコツと経験値を稼いでいく。体力自慢のガルカ戦士なだけあって、1体のモンスターを倒すのにそれほど時間はかからない(ちなみに僕は過去2回のプレイでは、両方とも種族をガルカに選んだ生粋のガルカファンである)。順調に戦闘を重ねてレベルを上げて、そろそろクエストにも挑戦しようと一度バストゥークへと戻った。受けられるクエストはまだ少なく、そのほとんどは過去に一度クリアしたものばかり。ノウハウを熟知していた僕は次々とクリアして、まさに順風満帆なヴァナ・ライフを送っていたのだが、あるクエストで初歩的なことにつまづいてしまった。それは釣りに関するクエストだ。釣れる場所で竿を投げて、あとはヒットするまでひたすら待つ……はずなのだが、いくらヒットしても糸が切れて逃げられる。以前のシステムでは、獲物が釣れるかどうかは、基本的には運を天に任せればよかったはずだ。それなのにまったく釣れない。これはもしや操作方法自体が違うのではと、ヒットした瞬間にボタンを押したり色々試してみたがどの方法も見事に逃げられる。説明書を読んでも釣りに関する解説文がない。ネットで検索しても、濃い内容は書かれてはいたが釣り方はどこにもなかった(そういえばヒットしたときにやたらと竿が動くし、「Fish」ゲージって昔はあったっけ?)。
過去の記憶をひっぱり出して比べてみるがどれも曖昧ではっきりせず、結果どうしても分からずじまい。最終手段として、ヴァナ・ディールの世界を熟知している知人に電話してみた。ゲームについて電話するなんて何年ぶりだろうか。それも単純な操作方法がわからないなんて、何とも情けない話だ。恥を承知で聞いてみた甲斐があり、ようやく謎は解決した。竿の動きとは逆方向に方向キーを入れるとのFishゲージが減少し、それがゼロになったら○ボタンを押すと釣れるそうだ。実際に試してみると、ついに念願のアイテムを釣ることができた(それが「錆びたバケツ」というのも、何とも情けない……)。昔はただ「待つだけ」の釣りが、今ではアクション要素が追加されている。しかも昔よりヒットする確率が高くなったように感じ、釣りが少し楽しくなってきた。少しのあいだ、ほかのクエストそっちのけでひたすら釣りに没頭し、竿が折れたのをきっかけに終了した。長い時間釣りをしていたはずなのに、釣りスキルは1上がっただけ。どうやらこのへんのシビアさは健在のようだ。
やはりコミュニケーション不能のパーティバトル
レベルも10を越えたころ、初めてパーティに誘われた。しかも外国人からだ。コミュニケーションを最初から諦めきっていたあの頃とは違って、今は「定型文辞書」なるものがある。あらかじめ辞書に登録されている単語や文章をそのまま英語に翻訳するという便利なシステムで、これがあれば外国人とも会話できる! とタカをくくり自信満々でパーティを快諾した。しかし、実際に使ってみると自分が使いたい文章がない場合がほとんどで、たとえば「今からそちらに向かいます」の“向かいます”がどの項目を探しても見つからず、結局はネットの翻訳機を使うハメになってしまった。ようやくパーティと合流して挨拶を交わす(挨拶は定型文辞書にある)。あらかじめ英語が話せないことを、パーティに誘ってくれたプレーヤーに伝えてあったので、メンバー全員が定型文辞書で「こんにちは」と言ってくれた。これを見て(何とかなるかな)と思ったがそれもつかの間、それ以降の会話はすべて英語で交わされた。どのモンスターが標的なのか、作戦はあるのか、そんな疑問がいっさい解決せぬまま戦闘が始まった。
どうしたらいいのかもわからぬまま、とりあえずメンバーの1人が連れてきたモンスターを僕が挑発して盾役になり、ひたすらそれを繰り返す。特に文句は言われないので(そもそも英語なので文句を言われても気づかない)、これで良かったんだと自分で納得した。体力の回復を待っている間、僕を除くメンバーは英語で会話し、語尾に必ず「lol」を付けてものすごく盛り上がっている。「lol」が笑いを意味することは知っていたので(laughing out loudの略語)、何かおもしろいことを喋ってるんだろうなぁと想像するも、それがゲームに関することなのか、私生活に関することなのか内容はまったく想像できない。だんまりを決め込むのもどうかと思ったので、とりあえず僕も笑って愛想の良い日本人を演じてみた。別にこれといった反応は返ってこなかった(反応があっても理解できずに困るだけだか……)。しかし次の休憩中に、その会話内容をネットの翻訳機で調べたところ、それほどおもしろい内容でもなく、無駄に笑った自分を恥じて、以降はメンバーが「lol」しても何も言わないようにした。
そんな最中、リーダーが僕に話しかけてきた。もちろんすべて英語だ。最初に英語が話せないと伝えたのに、なぜ英語で語りかけてくるのだろう。せめて定型文辞書を使ってくれたらいいのに……と半ば嫌気がさしてしまったが、できる限りわかり得る単語を拾ってみた。「want」と「LS」の2単語しかない。さすがに自分の英語能力の低さにlolしたが、もはや挫折したことは置いといて、僕も過去にプレイしたことのある経験者だ。この2単語だけで内容はなんとなく把握できる。どうやらこのリーダーは、僕に「リンクシェル欲しいですか?」と聞いているのだ。リンクシェル(LS)はそれを持ったプレーヤー同士でチャットできる、いわば仲間の証のようなもの。願ってもないチャンスだが、果たして僕が彼(or彼女)からLSをもらっても意味があるのだろうか。どうせチャット会話は全部英語だろうし……。少し悩んだものの、くれると言っているものを拒んでも失礼なので、ありがたく頂戴することにした。結局、このLSの仲間となじむことができなかったのだけど、それはまた別の機会に。僕は、このヴァナ・ディールで、日本語で会話できる日が来るのだろうか……。
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