
【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します
新幹線や特急列車の車内販売における酒類の提供が再開されてきました。そうとなれば、やっぱり“酒に合う”駅弁を選びたくなるもの。この秋、栃木・宇都宮駅に登場した新作は生ハムを使用した押し寿司。できれば、ワインと一緒にいただきたい期間限定駅弁です。ほろ酔い気分がよく似合う駅弁が生まれた背景を、お店の方に聞きました。

駅弁味の陣2021・気ままに味めぐり(第7回)
北を目指す東北新幹線「はやぶさ」号。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、車内販売における酒類の提供が中止されていましたが、東日本エリアの新幹線・特急列車では、10月11日から取り扱いが再開されました。移動しながらお酒を飲むことができるのは、鉄道旅の魅力の1つだけに、とても嬉しい方は多いことでしょう。ただ、引き続き車内での会話は控えめにして、静かにお酒と向き合って、じっくりと味わいたいものです。

酒好きの方が、思わず手に取りたくなりそうな駅弁を宇都宮駅で見つけました。その名も「生ハム押し寿司」(1100円)。宇都宮駅弁の松廼家が製造・販売しています。松廼家によると、宇都宮駅ではここ2シーズン、冬場に栃木のブランド魚・プレミアムヤシオマスの押し寿司が販売されてきましたが、今回はこの姉妹品という位置づけで、生ハムを使った押し寿司が企画されたと言います。

【おしながき】
- 酢飯(栃木県産・とちぎの星、ワインビネガー)
- 生ハム(イタリア産)
- クリームチーズ
- ローズマリー

パッケージを開けると、スーッと入ってくるローズマリーの香り。さわやかな酸味と思いきや、酢飯との間に挟まったクリームチーズのまろやかさが、意外性とともに口のなかに広がります。これは酒好き、とくにワイン好きの方を狙い撃ちにした感じです。企画段階では栃木県産生ハムを使いたかったそうですが、価格面などでイタリア産に落ち着いたと言います。でも、2000年代以降も宇都宮駅で行われていた駅弁の代名詞とも言える「立ち売り」も、もとは明治初期にイタリアの鉄道で行われていた売り方を“輸入”したとも云われていますから、懐かしの宇都宮の風景を思い浮かべていただくのも、決して悪いことではないでしょう。

東北本線(宇都宮線)・宇都宮〜黒磯間や日光線などで活躍してきた205系電車も、新型車両の導入が発表され、世代交代が迫ってきました。いまだから乗ることができる車両に揺られながら、いまだけの駅弁を楽しんでみるのもよさそうです。
(初出:2021年10月29日)
連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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