爽快感と清涼感が絶妙にブレンドされた定番ゴルフゲーム最新作「みんなのGOLF 5」レビュー(2/2 ページ)

» 2007年08月08日 14時35分 公開
[水野隆志,ITmedia]
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スポーツとしてのリアリティを上げる作り込み

 さて、ここまではモードやショットの説明をしてきたが、新ハードということになると見逃せないのがグラフィックだ。もっともグラフィックのリアリティが上がること自体はゲーム性と関係ない、という意見もあるかもしれない。筆者個人も、ゲームはゲームであることが第一、すなわちシステムの良さやインタフェースの遊びやすさが主で、グラフィックは従と思っている。ただ、主が満たされた上で従にも力を注ぐのであれば、それは歓迎すべきことだろう。しかも、「みんなのGOLF 5」では、グラフィックが単に見た目がきれい、という以上の意味を持っているのだからなおさらだ。

 見た目以上の意味を持つグラフィックとは何か。例えば風の演出。風が吹くと木々や衣服がなびく。当たり前のことだし、それがジャスミンのミニスカートだったりすると萌えっぽい演出にもなってくるのだが、ポイントはそこではない。みんなのGOLFシリーズでは、ティーショットの段階では、風の強さが不明という伝統がある。むろん、今作もそうだ。では風の強さを考慮して打つことはできないのか。そんなことはない。風が強ければ木々や服の揺れ方が大きくなる。これで風の強さを感覚的に把握できるのである。

画像 一見、平坦なグリーン。だが、実際には微妙な起伏がある。これを見逃すと思わぬスコアダウンに見舞われることも

 まだある。コースが細かく作り込まれたことによって、地形が従来作よりも緻密に再現されているのだ。フェアウェイの外れにあるバンカー、複雑に波打っているグリーン、O.B.ゾーンに向かって傾斜している崖などが勝負をどれだけ面白くしてくれるか言うまでもないだろう。海越えのコースで、手前の傾斜を乗り切れば1オン可能だが失敗すればO.B.といった状況に遭遇したらどうするか。キャラクターのパワーが高ければ、とりあえずは狙ってみたくなる。しかし、ショットを少しでもミスったら、あるいは強い向かい風が吹いていたらどうか。それでもハイスコアを追うか、刻んでいくべきか。特に本格ショットを選択している場合など、ショットの時のスリルがいつも以上にアップする。ゴルフというスポーツとしてのリアリティが格段に上がっているのである。

 そしてもうひとつ、多彩なカメラアングルも見落とせない。「みんなのGOLF 5」では、ラウンド中、各種ボタンを押すことでさまざまなアングルから状況を確認できる。R2ボタンを押せば、側面正面、側面背面、右斜め後方などが選択できるし、L2ボタンを押せばボールの落下点側、STARTボタンを押せば俯瞰からの視点が表示される。本格ショットを使用する時は横からのアングルは便利だし、パットを打つ時は落下点側からの視点は非常に重宝する。実際の試合でも、プロがさまざまな角度から芝の状況を確認したりするが、フィールドを自由自在な角度から見られるようになったことで、それと同じことができるのだ。これも新ハードの恩恵と言っていいだろう。

画像 アプローチショットを打つところ。位置の関係でグリーンの状況が把握しにくい
画像 落下点側から見た場合。芝の流れ具合や傾斜などがはるかに分かりやすい
画像 ふかん視点の場合。平面的な情報にはなるが、全体的な状況が掴みやすい

爽快感と清涼感の絶妙なブレンド

 グラフィックに関して、スポーツとしてのリアリティアップという点に加えて、もうひとつ強調しておきたいのが、自然描写の向上による、別な意味でのリアリティアップである。

画像 時間の推移や天候の変化も表現されるようになり、環境面でのリアリティも格段に上昇した

 みなさんはゴルフと自然との関係をどうお考えだろうか。なんとなく相反するとお思いの方が多くはないだろうか。確かに日本ではゴルフ場建設というと、山を崩し森を切り開いてというのが実情で、自然破壊という言葉と結びつきやすい。だが、世界全体で見渡してみると、必ずしもそうではない。TVで全英オープンの中継などを見た人ならお分かりだろうが、海外、特に発祥地であるスコットランドのコースは自然をなるべくそのまま残そうとする意識が強い。フェアウェイでも日本とは比べにならないほど芝が深いし、ラフともなるとブッシュと呼んだほうがいいのではと思うくらいの場所もある。ここには、ゴルフを通して自然との一体感を図るという思考が見て取れる。もちろん、それは単なる融和ではなく、いいスコアを出すためにいかに自然を克服するかというヨーロッパ的発想とも取れるが、いずれにせよ自然の機微を読まずして勝利はない、という考えがあるのは間違いない。

 この点を考慮した時、ゴルフゲームには単なるスポーツに留まらない側面があることが分かってくる。ゴルフの本質である自然との一体感をいかに表現するか。それは具体的には、風の息吹、木々のざわめき、水面の揺らぎなどをいかにリアルに表現するかということにかかってくる。言い換えるならば、スポーツゲームとしての爽快感と、自然の中に身を置く清涼感を高いレベルでどれだけ高次のレベルで融合できるかが問われるということだ。

画像

 そう考えると、プレイステーション 3というハードに移行したことの意味が大きいことが分かってくる。ディスプレイをハイビジョン対応にしなければ真価が分からないとはいえ、通常のTVでもグラフィックの質が上がっていること、それにともなって大自然に包まれながら、白球の軌跡を追う楽しさが増していることは分かる。何しろ、プレイしていて気持ちがいいのである。コントローラを握っていると、ああ、いいなあと思えることが何度もある。これはゴルフを知らない人ですら感じられるだろう。自然との一体感を再現することによって、「みんなのGOLF 5」は単なるゴルフゲームを超えて、万人向けのエンターテイメントになったのだ。

 よくこのゲームに関して、「すでにゴルフゲームとしての基礎はできているのだから、なぜプレイステーション 3で出す必要があるのか。内容的にプレイステーション 2で十分だ」という意見を聞くことがある。これは一面においては正しいかもしれない。だが、よりきめの細かい駆け引きができる点、ゴルフの本質である自然との一体感をいっそう強く味わえるという点を踏まえると、やはりこう言いたくなってくる。「みんなのGOLFをプレイステーション 3で出す意味は十分以上にあったのだ」と。

(C)Sony Computer Entertainment Inc.


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