ゲーム業界のM&Aを語ってみたパートII――EAとTake2:くねくねハニィの「最近どうよ?」(その22)(3/3 ページ)
くねくねハニィの「最近どうよ?」(その22):ゲーム業界のM&Aを語ってみたパートII――EAとTake2(意訳版)
不定期発行「最近どうよ?」の22回目は、「ゲーム業界のM&Aを語ってみたパートII――EAとTake2」。冒頭は、1月と2月の北米市場を報告しよう。「1月と2月は市場の底」という言葉があるとおり、ハードの出荷台数の動きは鈍ったものの、PS3が堅調で2カ月連続でXbox 360の売上を上回った。
ソフトに目を移すと、EAの「Burnout Paradise」がXbox 360、PS3版あわせて28万本。ニンテンドーDS版の「Mario & Sonic at the Olympic Games」(以下、「Olympic」)が健闘して13万本が目立つ印象。Xbox 360版の「Call of Duty4」が発売4カ月を経っても順調に推移し、PS3版も含めると500万本に達成する勢い。
「Guitar Hero III」と「Rock Band」も調子はよく、ギター、ドラム、マイクのペリフェラル付きの同梱版「Rock Band」は2万円(税込)近くと高額ながら、Xbox 360/PS2版合わせてまもなく150万本に達成する勢い。「Guitar Hero III」もマルチプラットフォームで660万本を達成している。これらの音楽ゲームはダウンロード曲も追加され、ますます各家庭で有名曲を演奏する姿を見られそうだ。
なお、チャート上位の常連の任天堂だが、「Wii Play」(日本名:「はじめてのWii」)が3位にチャートインしただけという珍しい現象に。とはいえ、とても相変わらずの堅調ぶりで「Super Mario Galaxy」はまもなく北米だけで300万本に達しようとしている。
さて、2月に注目してほしいのが、カプコンの「Devil May Cry 4」。Xbox 360版が2位で約30万本、PS3版が4位で約23万本と大健闘している。6月に発売予定のKONAMIの「Metal Gear Solid 4: Guns of the Patriots」や、バンダイナムコゲームスの「Soul Calibur IV」もとても楽しみな状況だ。なお、「Metal Gear Solid」は日本と同様PS3に同梱されるが、日本未発売の80Gバイトとの同梱となる模様。スターウォーズファンにはうれしい「Soul Calibur IV」の仕掛けも追い風となりそうだ。
それでもどうしても気になるのが4月29日発売の「Grand Theft Auto IV」(以下、「GTA IV」)。北米市場では、それぞれのプラットフォームに別々のダウンロード要素を盛り込むなど、「マルチプラットフォームでまんま移植」という時代は終わったのかもしれないと痛切に思っていただけに注目したいところ。
今回のお題は、「GTA IV」も関係する、今業界的に非常に大きなニュースとして扱われている“ある買収”について。
EAがTake2を買収か?
GDCが終了して明けた2月25日(月)の朝。「エレクトロニック・アーツ(EA)がTake2を買収する」とのニュースが飛び込んだ。
ActivisionとVivendi Universalが合併して「Activision Blizzard」となった(「くねくねその18」を参照)のはご存知の通り。業界で長い間首位を君臨していたEAがこのまま黙っているわけがなく、さらにEA社長に返り咲いたリカテロ氏がPandemicとBiowareを買収して「これでゲーム業界のM&Aはひと段落」と語った3日後にこの合併の発表をされたりと、恥をかかされた形にもなっていた。
EAは紳士的に水面下での友好的な買収をしかけていたが、結局Take2経営陣から拒否されたため、GDC後の「敵対的TOBへ」という発表となった。EAはTake2の株主に直接株を売るように働きかけ、一方Take2の経営陣は株主にEAに売らないで欲しいと呼びかけてるのが現状だ。EAが提示した1株あたりの金額は、直近のストックマーケットクローズ時のTake2株価の64%上乗せの金額(トータルで20億ドル:約2000億円)だったのに、Take2は安々とは受け入れなかったわけだ。
なぜ売らないのか?
では、なぜ売らないのか。メンタルな問題と指摘する者もいるが、4月29日に発売を控えている「GTA IV」の存在と現在開発中のタイトルについて過小評価しているというのが大きな理由らしい。
実際、Take2側は4月30日(「GTA IV」発売の次の日)に話し合いの場をEA側に申し出たらしいが、EAはこれを拒否。安いうちにTake2を買っておきたいというEAの気持ちが見え隠れしてると言われている。「GTA IV」が発売されれば、間違いなく株価は上がると予測できるだろうから……。現在のEAによる1株26ドルでの期限は、当初4月11日だったものを4月18日までに延長している。とはいえ、やはり「GTA IV」の発売前という点は見逃してはならない。
この一連の出来事、後になったら分かることではあるが、Take2はEAに「売るつもりがまったくない」のか「売ってもいいが、その値段ではイヤ」なのかは不明だ。もし後者であるならば、時間と金額の問題なのかもと思うと、出来レースを見ているようで興ざめ感は否めない。
この買収による影響は?
ではこの買収による影響はどうか。
- (1)EA首位奪還?:世界第1位のパブリッシャーに返り咲くのは当然だろう。何と言っても「GTA」シリーズがある。Activision Blizzardに対抗するためには、こんなに好都合なタイミングでかつ大規模なお買い物を見逃す手はない。「Bio Shock」、「Manhunt」なども含め、またEAにオリジナルラインアップが増えることになる。
- (2)スポーツゲームはEA独占?:EA Sportsは、NFLやNBAなどほとんどのライセンススポーツゲームのラインアップを取りそろえている。スポーツゲームを得意とする2K Gamesを買い取ることで、プラットフォーマーを除いて、スポーツゲームジャンルで敵はほとんど見当たらなくなると予想できる。
- (3)大量リストラ?:世の常ながら相当数のリストラ対象者が出る予定で、仕込んでいるタイトルともどもつぶされる可能性は否めない。
- (4)ますますハリウッド化?:正当な競争がなくなり、大型化タイトルに集約されていくことが予想。メガパブリッシャーのタイトルだけが流通する可能性も。
ハニィのあとがき
ビジネスで考えれば普通の話かもしれないが、業界が成熟しきって強者と弱者、資本力のある会社とない会社が極端に分かれる岐路に立ってるのかもしれない。この大きなうねりの中に日本のパブリッシャーが入っていないことも、また、日本でこの情報が大きく報道されていないことも、日本が世界のゲーム業界で孤立していくんではないか、という危機感さえ感じてならない。
そんなメガパブリッシャーの動向を横目で見ながらも、Atariが再生をかけて人事を刷新したとのニュースを紹介したい。CEOとしてVivendi、Sony BMGで活躍してきたジム・ウィルソン氏が就任し、親会社Infogramesの社長としてSCEワールドワイドスタジオトップだったフィル・ハリソン氏が就任。再生に乗り出すとのこと。Atariはここ数年経営難から自社タイトルIP(知的財産)である「Driver」や「Stuntman」をスタジオごと売り払ったりと不振が続いていただけに今後を期待したい。
ちなみにSCEがSony Online Entertainment(以下、SOE)を傘下に治めてネットインフラに注力したり、CMP Game Group(GDC主催者)が「Game Developer Research」2008年度版で、世界の開発会社Top50を発表したりと、世界はいろいろ動いていることを感じた。
くねくねハニィのプロフィール
1967年アメリカサウスダコタ生まれの日本人。
小学生からはゲームセンターに通いまくってやたら大きく育つ。
1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる困ったやつ。独特の語り口調ですが、もう慣れてくださいとしか言えません。言ってる中身は至極マジメなので。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用。なんだか公認してもらったそうです。ちなみに左のイラストは前回のものを流用するというのが最近のお約束です。
前回、読みづらいという指摘を受けて(というか逆手に取って)ハニィの口語体を翻訳機(人力)にかけて掲載しましたが、結果的にそれはそれで読みづらいかも(?)というオチに。ある意味、あれもエンターテインメントのひとつと思っていただくと幸いです。ハニィの良さが分かってもらえれば……えぇ、で、今回は……意訳(?)ですが……(ごにょごにょ〜)、十分テキスト量が多くて意訳になってませんってオチでした。しかも乱暴にテキスト省略したので、全然面白味がなくなってしまいました。やはりハニィはハニィ口語です。
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