大軍を率いて大軍と戦え! ド迫力の戦闘が楽しめるRPGのニューカマー:「ラスト レムナント」レビュー(2/2 ページ)
ユニオンVSユニオンで展開する、大迫力のバトル
本作最大のウリと言っていいのが“戦闘”だ。通常のRPGでは、自分以外に数名のパーティーメンバーがいる状態で戦闘する。仲間がどれだけ多くても、一度に戦闘に参加できる人数は限られているケースが多い。しかし本作では、数十人の仲間とともに、大勢の敵を相手にバトルをすることになる。敵味方合わせて多数の軍勢が入り乱れるバトルが楽しめるのだ。
本作では個々のキャラクターのことをユニットと言い、ユニットはリーダーユニットの存在するユニオンに所属することになる。このユニオンは最初はそんなに多く持てないが、ストーリーが進むと一度に持てるユニオンが増えていき、また、ユニオンに加わるリーダーや兵士たちの選択肢も増える。
プレイヤーはバトル時にユニットごとに指示を出すわけではなく、ユニオンに対してコマンドを選択する。実際に戦闘がスタートすると、まずは敵ユニオンの選択から始まる。左スティック、または方向パッドで敵ユニオンを選択したら、バトルコマンドの選択だ。バトルコマンドには「攻撃しろ」「臨機応変に対応しろ」「待機してからカウンターを狙え」「HPに余裕を持って行け」など、大まかな選択肢が並ぶ。
ひとつのユニオンには何人かのユニットがいるわけで、彼ら全体に向けて命令をすることになる。戦闘に参加している味方が多くてもコマンドは4、5回で済んだりするわけだ。この感覚は、どことなくシミュレーションRPG的なニュアンスがある。
もちろん、誰をどのユニオンに配属しておくかという事前の設定も重要だ。メニュー画面のユニオンボードからリーダーやメンバーや陣形を決定していく。各ユニットのステータスを見ながら、より効率よく戦えるメンバー選びや陣形を考えるのが、なかなか楽しい。ラッシュ以外の装備は自由に変えられないが、街に入ったタイミングで、戦闘で得た報酬から各自が自分の武器を強くしてくれる。長く一緒にいるユニットには、きっと愛着も湧いてくるだろう。
さて、戦闘時の流れに話を戻そう。バトルコマンドから例えば「攻撃しろ」を選んだとする。すべてのユニオンに命令を終えると、いざバトルだ。味方ユニオンと敵ユニオンが接近し戦闘に入ると「ロックアップ」という状態になる。ロックアップ中は、どちらかのユニオンが壊滅するまで戦うことになる。
このロックアップは、HPを回復するなど、戦い以外の行動を命じた時に解除されたりもする。また、ロックアップしようとしているところに別のユニオンが妨害をしてくる「インターセプト」、ほかのユニオンとロックアップ中のユニオンに側面から攻撃する「サイドアタック」、遠距離攻撃中などの敵に接近してロックアップ状態に持ち込む「レイドロック」など、さまざまな状態表示がある。
ロックアップしつつそれぞれのユニオンが戦っている状況で、「あの敵ユニオンがもう少しで倒れるからターゲットを切り替えよう」とか「味方がピンチだからここは回復に回ろう」など、状況に応じてロックアップを解除するという選択肢もある。ただ、ロックアップを解除すると、その前まで戦っていたユニオンに一方的に攻撃をくらってしまったりするので、リスクも覚悟の上で行動する必要がある。
各ユニットにはアーツと呼ばれる技があり、物理攻撃系のファイティングアーツ、間接攻撃系のミスティックアーツ、ユニットごとにまったく異なる固有アーツなどがある。固有アーツにはそのユニットならではのド派手でカッコ良いものが多く、もちろん大ダメージも期待できる。敵ユニットにも固有アーツを持っているキャラクターがいるので気をつけよう。
また、本作の戦闘で独特なのが画面上部にあるモラルゲージだ。このゲージは敵と味方のモラル(士気)を現しており、バトル中の行動内容によってゲージが変化していく。味方のゲージが多い時はダメージ量増大など味方に有利なことが起きる。敵にサイドアタックやインターセプトされるなどして敵側のゲージが増大した時には、逆に敵ユニオン側に有利な状態になるので警戒が必要だ。
一度コマンドを選択すれば、後はただ敵と味方の戦うさまを見ていればいいのかというと、そうでもない。戦闘画面を見ている間も、プレイヤーの介在する余地がある。それがトリガーチャンスだ。ユニットの動きが一瞬スローモーションになり、画面中央にボタン表示が出たら、トリガーチャンス到来。表示されているボタンをタイミング良く押すことで、味方の行動順が早まったり、ダメージを軽減するなど、有利な結果を得られる。最初はタイミングが難しいかもしれないが、慣れてくるとパーフェクトと表示されるタイミングでボタンを押せるはずだ。
戦闘が終われば、敵モンスターごとに異なるアイテムを手に入れることができる。このアイテムを素材として武器やアクセサリーを生成したり強化できるので、しっかりもらっておこう。たまにモンスターそのものが生け捕りされてアイテム欄に表示されることがある。この生け捕りされたモンスターはバラして素材にしてもいいし、そのままアイテムとして持って帰って街で売ってもいい。お金が欲しい時は生け捕りのままにしておこう。
RPGファンよ、腰を据えてかかるべし――オリジナリティの強い骨太RPG
あたかもシミュレーションRPGのような、そしてMMORPGをソロで体験しているかのような戦闘システムのユニークさこそが本作の最大のセールスポイントだと言っていい。ただ、戦闘システムについては好き嫌い、賛否両論あるかもしれない。
戦闘が終わればHPなどが全快する仕様なのだが、それゆえか、雑魚戦でも油断すると全滅してしまうことがある。常に緊張感があって骨太であるとも言えるが、RPG初心者には若干きつめの難易度とも言えるだろう。
ボス戦などの大きな戦いでは、大まかなコマンドゆえにもどかしく思う時もあるし、ユニオンVSユニオンの大勢によるバトルなので、1戦に40〜60分かかることもある。時間をかけて勝利ができればうれしいものだが、敗北してしまった時の疲れもまた大きい。トリガーチャンスなどで気が抜けないようにはなっているが、長期化すると戦闘自体がだれてくる印象は否めない。戦略と迫力を楽しめる面白いバトルシステムなだけに、いろいろと惜しいところも目立つといったところか。このあたりは、ぜひとも続編で改良していって欲しいところだ。
気になる点や残念に思う点はあるものの、この冬、じっくり腰を据えてやるRPGのひとつとしてプレイしてみるのはいいと思う。素材アイテムによる武器や装備品の生成・強化や、各ユニットの強化、ファイティングアーツやミスティックアーツといった技の習得など、やり込める要素はふんだんにある。
寄り道的に用意されたクエストやギルドアドベンチャーなども非常に多いので、すべてを楽しみ尽くそうと思ったら相当な時間がかかるだろう。戦略性のある骨太な戦闘システム、独自のファンタジー世界、長大でやり込めるRPG、それらの要素がストライクゾーンな人は、気にかけておいてほしいタイトルだ。
最後に言っておきたいのが、筆者が本作で最も気に入った要素が“音楽”であるということ。もちろんほかの要素もしっかり作られているが、場面場面でプレイヤーの気分を的確に盛り上げてくれる本作のBGMは聴いてて心地よかった。ボス戦でもないのに、戦闘中に最終局面になると音楽が切り替わるなど、細かい演出もうれしい。本作をプレイして音楽が気に入った人は、関戸剛氏と山中康央氏による「オリジナル・サウンドトラック」が発売されているので、こちらもぜひチェックしていただきたい。
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