うわっ……ゲームがタダで遊べるチャンスがあっただなんてスゴすぎ…?
猛暑も吹き飛ぶ真夏の怪談? ビデオゲーム、死後の世界にある“再ゲーム”について。
アーケードゲームにおいて、ゲームオーバーになったらプレイ料金を再度投入しないとそのゲームを遊ぶことができなくなるのは鉄則中の鉄則。だからこそ、我々プレイヤーは自らのミスでゲームオーバーになったときはとても悔しい思いをすることになります。しかし、もしゲームオーバーになってもタダでもう1回遊べるチャンスが与えられたとしたら、プレイヤーにとってはこれほどありがたい話はないでしょう。
「そんな夢のような話があるワケないだろ!」と思った人もいるかしもしれませんが、実はビデオゲーム初期の時代、1970〜80年代にはこのようなシステムが実際に存在していたのです。
その名は通称“再ゲーム”。ご存知ない方のために説明しますと、“再ゲーム”とはプレイ中に一定の条件を満たすとゲームオーバー時に追加料金を投入しなくても再度遊べるようになるシステムの通称です。今となっては、この単語を聞いてもいったい何のことだかピンとこない人が大半なのではないでしょうか? 逆に言えば、“再ゲーム”と聞いてそれが何を意味するのかが瞬時に分かった人は、ことビデオゲームの世界では相当にお古い方だと言えます(笑)。
“再ゲーム”のシステムを導入した一例を挙げますと、今からちょうど30年前の1982年にユニバーサルが発売したアクションゲームの「Mr.Do!」。本作では、ゲーム中にごくまれに出現するダイヤモンドを取ると1クレジット(1プレイ分の料金)が追加され、ゲームオーバー後にもう一度最初からゲームが遊べるようになっていました。
しかしこのダイヤモンド、デモ画面でこそその存在をプレイヤーに教えてはくれるのですが、出現条件はまったくもって不明でプレイ中もヒントは一切出てきません。しかも、ダイヤモンドは一定時間が経過すると画面から消えてしまうため、敵の追撃を避けながらこれを取るのはかなり難しくなっています。もっとも、簡単に取れてしまうとお店としては商売になりませんから、よほどの幸運に恵まれない限り“再ゲーム”のご褒美が得られないようにするのは至極当然のお話ですよね。
※Wiiバーチャルコンソール版を使用
(C)UNIVERSAL ENTERTAINMENT
「Mr.Do!」と同じ1982年にテーカン(現:コーエーテクモゲームス)が発売したアクションゲームの「スイマー」にも面白い“再ゲーム”のアイデアが盛り込まれています。本作では、主人公が全滅するとスロットマシンのように高速で数字が回転する画面が表示され、回転が止まったときに運よく当たりの数字が出ると主人公のストックが1人増えて“再ゲーム”ができるようになっていました。筆者の経験上、抽選に当たる確率はかなり低かったと記憶していますが、このようなナンバーズゲーム的要素を盛り込むことによって、プレイヤーに対してゲームオーバー直後の悔しさを緩和する効果は十分にあったことでしょう。
また、1987年にタイトーが発売したアクションゲームの「奇々怪界」にも同様のナンバーズゲームによる“再ゲーム”の抽選イベントがあります。本作では、ゲームオーバーになると3ケタの数字がランダムで表示され、止まったときの数字がスコア(得点)の下3ケタと一致すると1クレジット追加されるようになっていました。
※PS2版「タイトーメモリーズ上巻」を使用
(C)TAITO CORP. 1978-2005
さらにタイトーが1989年に発売した「キャメルトライ」にも、前述した「スイマー」と同様のフィーチャーがあります。本作は制限時間以内にボールをゴール地点まで導けばクリアとなるアクションゲームですが、ゲームオーバー時に出現するスロットで見事当たりを引けば一度だけ持ち時間が追加され、晴れて“再ゲーム”が可能となるのです。具体的にどんな抽選方法だったのかは、以下のプレイ動画にてどうぞご覧ください(幸運にも当たりクジを引いた瞬間が取れました!)。
なお余談になりますが、当時はこのような“再ゲーム”システムの存在を知らず、抽選に当たったのを気づかずに帰ってしまう人が時々いました。そこで少年時代の筆者は、クレジットが入ったまま誰もいなくなった筐体を発見しては、ありがたく失敬して“タダゲー”(これも死語の世界ですね……)をさせていただき、その節はたいへんお世話(?)になったものでした。
「キャメルトライ」以降、筆者はビデオゲームに限れば“再ゲーム”のイベントが導入された例を現在まで見た記憶は一切ありません。昔と違ってビデオゲームの人気および収益性の低下が著しい現在では、もはやこのシステムが復活する可能性は限りなくゼロに近いでしょう。また、家庭用ソフトのように一度購入すれば追加料金が発生しないゲームであれば、そもそも”再ゲーム”を導入する意味は何もないですから、今では完全に忘れ去られたフィーチャーとなってしまったのもしかたがありません。
“再ゲーム”という名の死語の世界を実際に経験した方は、実は今となっては貴重な生き証人になっているのでは!?
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