ここから先は通さない! プレイヤーの命を守る“愛の通せんぼ”
当たり前だと思っていませんか? そこには開発者の見えざる手が行き先を指しているんですよ。
ロールプレイングゲーム(RPG)の一番の醍醐味は、何といっても未知の世界を尋ねてまわる冒険ができるところにあるでしょう。しかし、古来から多くのRPGでは物語の序盤は行動範囲をわざと狭め、プレイヤーを通せんぼしてしまう場合が度々あります。
せっかく用意した広大な冒険の舞台を、まるで出し惜しみをするかのように通せんぼをする理由はただひとつ。それはゲームをまだ始めたばかりのプレイヤーに対して、基本となる操作方法やルールを理解してもらうための配慮からなのです。
その最たる例が、以前の連載コラム第1回でも取り上げた「ドラゴンクエスト」のシリーズ第1作目にあります。本作ではゲーム開始直後に王室からすぐ外へ出ることができず、階段を下りて地上に出るためにはすぐ近くにある宝箱を取ってカギのアイテムを発見して扉を開き、さらに階段のところで下へ降りるためのコマンドを実行することが必要になっています。つまり、ゲームを進めるうえで基本となるコマンド入力の仕組みをプレイヤーが自然と学べるようにするため、わざと行動範囲を制限しているのです。
もしも通せんぼされることが一切なく、最初からどこにでも行けるようになっていたとしたらはたしてどうなるでしょうか? 初代「ドラクエ」が発売された1986年当時は、まだRPGという存在がゲーム好きの間でもあまり認知されていなかった時代ですから、プレイヤーによっては自分が何をしたらいいのか理解できないうちにモンスターに遭遇して、あっという間にやられてしまうかもしれません。そんなプレイヤーの混乱を未然に防ぐための画期的なアイデアこそが、まさに“愛の通せんぼ”システムなのです。
このアイデアは効果テキメンだったようで、以後の続編タイトルにも度々登場します。過去の「ドラクエ」シリーズを経験したプレイヤーにはもはや説明不要のお約束であっても、初心者に対する配慮を欠かさなかったのは地味ながらも素晴らしいことではないかと思いますが、みなさんはどう思われますか?
また、「ドラクエ」から約1年後に発売された「ファイナルファンタジー」でも、序盤はスタート地点のお城から遠く離れた場所へ行けないようにする“愛の通せんぼ”システムが導入されています。本作では、「敵のガーランドにさらわれた王女を助けてくれ。」という依頼を王様から初めに受けますが、このミッションをクリアするまでは王様が川に橋をかけてくれないため先へ進むことができません。まるで「本格的な冒険に出る前にまずは基本を身に着けなさい!」という開発者からの声が今にも聞こえてきそうな設定です。
当時はまだスクウェアとエニックスは別会社でしたが、同じような通せんぼのアイデアを取り入れていたのはとても面白い事実ですよね!
“愛の通せんぼ”システムは、「ドラクエ」や「FF」シリーズのようなコマンド入力方式のRPGだけでなく、アクションRPGの「ゼルダの伝説」シリーズなどでも見ることができます。
例えばニンテンドー64用ソフト「ゼルダの伝説 時のオカリナ」では、ゲームの冒頭で主人公のリンクがパートナーの妖精ナビィから森の守護神デクのところに来てほしいという依頼を受けます。しかし、デクの居場所へ行く途中にはリンクの友人であるミドが「剣と盾を持っていないやつは通さない!」と両手を広げてリンクの行く手を遮ります。ここでもやはり、冒険を完遂するためには剣と盾が絶対に必要なことと、これらのアイテムを取るまでの間に基本となる操作方法やルールを学んでほしいという開発者からのメッセージをストーリーの中に巧みに盛り込んでいるというワケです。
それにしても、この場面は道がかなり広いのでミドのいない方向にダッシュや前転などを使って勢いよく飛び込めば通れそうにも見えますが、何回フェイントをかけてもまったく引っ掛かってくれません(笑)。しかし、剣と盾を無事発見してから再び話しかけるとミドはしぶしぶ道をあけ、本格的な冒険の旅がいよいよ始まることになります。本作をご存じない方は、ぜひ以下のプレイ動画で剣と盾を持っている時とそうでない時の様子を見比べてみて下さい。また、本作ではシナリオをかなり進めた後にも通せんぼをされる場面が登場しますが、冒頭のシーンを思い出せば「あ、何か謎を解かなければ先へ進めないようになっているんだな!」と瞬時に理解することできますね。
そう言えば昨今のソーシャルゲームでは、主にゲーム開始直後のチュートリアルの場面でプレイヤーが使用できないメニューやコマンドの表示色を変えて選択できないようにしたり、あるいは特定のレベルに達するまではメニュー自体を発生させないケースを目にします。あるいは、ナビゲーター役のお姉さんが現れてプレイヤーが行動を誤らないよう、「今はまだ選べません!」などと手取り足取りプレイヤーにレクチャーする場面もしばしば見られます。もしかしたら、このようなアイデアの源流は“愛の通せんぼ”のシステムに由来しているのかもしれませんね。
関連記事
「実は俺ってゲームがうまくね?」 プレイヤーの学習能力をさり気なく引き出す巧妙な仕掛け
なに? すべて開発者の手のひらで踊っていたとでもいうのか!? 経験値がゲームを面白くする。「お前の命はあと3分だ……」 プレイヤーに立ちはだかる大きな壁とは?
アーケードゲームはスタートから3分後に“魔の時間帯”がやって来る!なぜ、人はゲームにハマルのか?:第20回:プレイヤー同士でいざ勝負! 対戦プレイはなぜ面白いのか?
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の20回目は、相手と戦うことで初めて起きる“ゲームを続けたくなる”仕組みについて。なぜ、人はゲームにハマルのか?:第19回:仲間といっしょに遊べば楽しさ倍増! 同時プレイはなぜ面白いのか?
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の19回目は、誰かと一緒にゲームをする楽しさを解明してみます。なぜ、人はゲームにハマルのか?:第18回:「待って、もう1回!!」――いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文PART2
リスタートの仕組みのスッゴイしかけ。「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の18回目は、続けたくなる“魔法の言葉”について。なぜ、人はゲームにハマルのか?:第17回:これ以上ないプレイヤーへのご褒美!? 極上の快感を与えてくれるエクステンドの演出
そもそもエクステンドってなんですか? 「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の17回目は、なんだかお得ですって話。なぜ、人はゲームにハマルのか?:第16回:ゲームは見た目がすべて!? ひと目でプレイヤーを虜にするデモ画面の工夫
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の16回目は、演出面に注目。いわゆるコーヒーブレーク、最近見なくなりました?なぜ、人はゲームにハマルのか?:第15回:「待って、もう1回!!」 いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文、「コンティニュー」のスッゴイ仕掛け
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の15回目は、奥が深いコンティニューの話。続きがあるから人は大胆になるのかもしれませんよ?なぜ、人はゲームにハマルのか?:第14回:これならサルでも遊べちゃう!? いつの間にかゲームがうまくなってしまうヒミツの仕掛け
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の14回目は、ゲームの腕がめきめきあがる仕組みを解明します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
「これが生えたら庭終了」 プロも降参する“何をやっても全部ムダな最恐雑草”の正体が400万再生「ほんとこれ厄介」「土ごと変えないと不可能」
イトーヨーカドー春日部店が閉店へ 「クレヨンしんちゃん」に登場するスーパーのモデル 「残念」「寂しい」惜しむ声
夜、山中の側溝をのぞいてみたら…… 思わず声がもれる“あらぬ生物”の姿に「ヤバいw」「生で見てみたい」
水槽の中で卵を発見→慎重に見守って1カ月後…… 小さな命の誕生に飼い主も視聴者もメロメロ「まじで可愛すぎるほんとに可愛い」
「お父さんはママのオタクだった」 母親が「元・おニャン子」のタレント、アイドルとオタクが“つながっちゃいけない理由”を問いかける
「立体的に円柱を描きなさい」 中1の“斜め上の解答”に「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」
スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
工藤静香、15歳の愛犬が天国へ 感謝の言葉つづるも……「泣いてばかり」「心が追いつかない」と悲痛な思い
外国人が来日して“3年後”…… マクドナルドの“オーダーの変化”に「胃袋が日本人のそれなんよw」とツッコミ
- プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが360万再生「凄すぎて笑うしかないww」「チーズが、、、」
- 6年間外につながれっぱなしだったワンコ、保護準備をするため帰ろうとすると…… 思いが伝わるラストに涙が止まらない
- 「お釣りで新紙幣来た!!!!!と思ったら……」 “まさかの正体”に「吹き出してしまった」「逆に……」
- 赤いカブトムシを7年間、厳選交配し続けたら…… 爆誕した“ウルトラレッド”の姿に「フェラーリみたい」「カッコ良すぎる」
- ダイソーで買った330円の「石」を磨いたら……? 吸い込まれそうな美しさが40万回表示の人気 「夏休みの自由研究にもいいのでは?」
- 「これ最初に考えた人、まじ天才」 ダイソーグッズの“じゃない”使い方が「目から鱗すぎ」と反響
- もう笑うしかない Windowsのブルースクリーン多発でオフィス中“真っ青”になった海外の光景がもはや楽しそう
- アジサイを挿し木から育て、4年後…… 息を飲む圧巻の花付きに「何回見ても素晴らしい」「こんな風に育ててみたい!」
- スズメの首は、実は……? 「心臓止まりそうでした」「これは……びっくり!」“真実の姿”に驚愕の声
- 【今日の計算】「8×8÷8÷8」を計算せよ
- 18÷0=? 小3の算数プリントが不可解な出題で物議「割れませんよね?」「“答えなし”では?」
- 日本人ならなぜかスラスラ読めてしまう字が“300万再生超え” 「輪ゴム」みたいなのに「カメラが引いたら一気に分かる」と感動の声
- 「最初から最後まで全ての瞬間がアウト」 Mrs. GREEN APPLE、コカ・コーラとのタイアップ曲に物議 「誰かこれを止める人いなかったのか」
- 「値段を三度見くらいした」 ハードオフに38万5000円で売っていた“予想外の商品”に思わず目を疑う
- 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
- かわいすぎる卓球女子の最新ショットが730万回表示の大反響 「だれや……この透明感あふれる卓球天使は」「AIじゃん」
- 「これはさすがに……」 キャッシュレス推進“ピクトグラム”コンクールに疑問の声相次ぐ…… 主催者の見解は
- 天皇皇后両陛下の英国訪問、カミラ王妃の“日本製バッグ”に注目 皇后陛下が贈ったもの
- 「この家おかしい」と投稿された“家の図面”が111万表示 本当ならばおそろしい“状態”に「パッと見だと気付けない」「なにこれ……」
- 和菓子屋の店主、バイトに難題“はさみ菊”を切らせてみたら…… 282万表示を集めた衝撃のセンスに「すごすぎんか」「天才!?」