第21回:ゲームは耳でも楽しめる! 効果音による快感演出のマジックなぜ、人はゲームにハマルのか?(3/3 ページ)

» 2012年09月04日 10時56分 公開
[鴫原盛之,ITmedia]
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得点アイテムの獲得音にもさまざまなヒミツが!

 ここからは流れるような音色の変化こそないものの、プレイヤーが努力を積み重ねた結果を音で祝福してくれる秀逸な例をご紹介しましょう。

 主にアクションゲームにおいて、得点アイテムを取ったときに効果音が鳴る演出は古今東西のあらゆる作品においてごく当たり前に存在します。この効果音をアイテムの種類や取ったときの状況に応じて変えることによって、プレイヤーは快感のあまりゲームにますます夢中になってしまいます。とりわけ、高得点アイテムを獲得したときにだけ鳴らす特別な効果音を用意し、プレイヤーを褒めてくれる演出は昔からよく見られる定番パターンであると言えます。

 有名タイトルから例を挙げると、1984年にカプコンが発売したアーケード用アクションゲームの「ソンソン」。本作では、マップ上のあちこちに出現するアイテム(フーズ)を取るとその種類に応じて10〜100点が入りますが、どのフーズを取っても効果音は同じです。しかし、フーズを合計6個取るごとに出現する高得点のジャンボフーズ(※1000〜1万点)を取ったときだけは、通常とは異なる特別な効果音を鳴らすことによってそのプレミアム感をいっそう高めているのです。

画像画像

画像画像 「ソンソン」:は通常のフーズと高得点のジャンボフーズの獲得音を変えることで得点アップ時の快感を作り出ししています
※Wiiバーチャルコンソール版を使用
(C)CAPCOM CO., LTD. 1984, 2010 ALL RIGHTS RESERVED

 また、テーカン(現:コーエーテクモゲームス)が1984年に発売したアーケード用アクションゲームの「ボンジャック」では、画面内にある爆弾を1個取るごとに100点が入るのに対し、どこかに1個だけ存在する導火線に火のついた爆弾を見つけて取った場合は倍の200点が入ります。ここでもやはり、火のついた爆弾とついていないものとでは微妙に音色を変えることでプレイヤーの技術をたたえる演出を盛り込んでいます。しかも、火のついた爆弾を連続で取り続けると特別ボーナスが入るアイテムなどが出やすくなる効果もあるため、プレイヤーの達成感をますます高めてくれることになります。

画像画像

画像画像 「ボンジャック」は導火線に火のついた爆弾を取ったときの音を変え、さらに高得点ボーナスのチャンスを増大させる特徴があります
※Wiiバーチャルコンソール版を使用
(C)TECMO,LTD.All Rights Reserved.

 このような、獲得した得点アイテムごとに効果音を変える仕組みをより高度に進化させたのが、ライジングが1996年に発売したアーケード用シューティングゲームの「バトルガレッガ」です。本作では、敵を倒すとたまに出現する勲章(※角型の黄色いアイテム)を画面外に逃さず連続で取ると得点がどんどん上がり、最初は100点だったのが最高で1個1万点にまでアップします。勲章は得点が高くなるほどデザインが変化するのと同時に取ったときの効果音も変化し、100〜900点のパターン、1000〜9000点のパターンと1万点専用の合計3種類の音が用意されています。

 と、ここまで書けば筆者が言わんとすることはもうお分かりですね? そうです、最高得点となる1万点勲章を取ったとき限定の効果音を用意することによって、アイテムの連続獲得に成功したプレイヤーに至福の快感を与える効果があるのです。タダでさえ難易度が非常に高いゲームですから、苦労に苦労を重ねて勲章を最高得点になるまで育て上げたときの達成感はひとしおです。以下のプレイ動画で3種類の音の違いを、特に1万点の勲章獲得音がいかに優遇(?)されてゴージャスな音になっているかをぜひ確認してみてください!

 これと似たような例としては、彩京が1998年に発売したアーケード用シューティングゲーム「ガンバード2」があります。本作は得点アイテムのコインを一定時間ごとに一瞬だけ光るタイミングで取ると通常よりも得点がアップし、なおかつ獲得音が変化します。さらに連続で光った状態でコインを取るとチェーンボーナスが加算され、やはり通常とは違った効果音を鳴らすことでプレイヤーの快感をいっそう高めてくれます。 

(C)EIGHTING
(C)1996 RAIZING


 以上、効果音をテーマにした今回のコラムはいかがでしたでしょうか? 単純な音を鳴らすだけでも、工夫次第でゲームの面白さが全然違ってくることがお分かりいただけたのではないかと思います。

 私事で恐縮ですが、「Mr.Do!」を初めてプレイした当時の筆者は小学校でソプラノリコーダーをちょうど習い始めた頃でした。敵の追撃をかわしつつ、ドレミファソラシドの音色とともにボーナスを取ったときと、リコーダーで曲を演奏できるようになったときの嬉しさはよく似ているなと思ったことを今でもよく覚えています。また「NewスーパーマリオブラザーズWii」でも、攻略本執筆の最中にワールド7-5で1UPキノコを初めて見つけたときの演出も素直に面白いなと感じました。人はいくつになっても、単純なことでも意外と感動するようにできているものなんだなあと思った次第です(筆者だけが単純な人間なのかもしれませんが……)。

 もちろん、今回取り上げたテーマ以外にもゲームならでは音を利用したアイデアまだまだたくさんありますが、1回のコラムではとても紹介しきれませんのでまた別の機会にぜひご紹介していきたいと思います。

 それでは、今回はここまで。また次回お会いしましょう!

今回登場したソフトはココで遊べます!

  • 「Mr.Do!」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「クエスター」(「ナムコクエスター」):Wiiバーチャルコンソール
  • 「スーパーマリオブラザーズ」:Wiiバーチャルコンソール、ニンテンドー3DSバーチャルコンソールほか
  • 「スーパーマリオワールド」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「コラムス」:Wiiバーチャルコンソール(※メガドライブ版)、ニンテンドー3DSバーチャルコンソール(※ゲームギア版)
  • 「ぷよぷよ」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「ソンソン」」Wiiバーチャルコンソール、PS2「カプコン クラシックス コレクション」
  • 「ボンジャック」:Wiiバーチャルコンソール、PS2「テクモヒットパレード」、Xbox「TECMO CLASSIC ARCADE」
  • 「バトルガレッガ」:セガ・サターン
  • 「ガンバード2」:ドリームキャスト、PS2「ガンバード1&2」

著者プロフィール

鴫原 盛之 Morihiro Shigihara

 1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。

Twitterは「@m_shigihara」です。

著者近況

 気が付けば東京ゲームショウの開催までもう約1カ月。毎年多くの人であふれかえる会場を一日中歩き回りながら、取材やクライアントさんへの挨拶などをしているともうクタクタになります。なので今年もそろそろ本格的に運動をするなどして、体調がベストな状態で当日を迎えられるよう準備したいなと思う次第です。

 TGS会場へ遊びに行く予定のみなさんも、会場内では熱中症などの対策をお忘れなく。またご家族連れの方はお子様が迷子などにならないようくれぐれもご注意を!


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