なんで虫の味もわからん奴らに合わせないかんのだ!――東京虫食いフェスが熱かった:閲覧注意(3/3 ページ)
世界初! 虫料理のレシピのコンテスト!
いよいよラストは、今回の虫フェスの目玉でもある「第1回昆虫料理レシピアワード」の時間だ。照明が落ち「ジムノペディ 第1番」(サティ)の生演奏に合わせて、司会がものものしい雰囲気で説明を始める。事前公募で集まったレシピのうち、第1次選考を通過した上位5作品を、ステージ上で4人の審査員が実食。順番に出てきた虫料理と、それぞれのレシピ、審査員コメントは以下の通りだ。
・エントリーNo.1 「バグパエリア」(考案者:サトシーT氏)
【レシピ】ゴキブリ、セミ、イナゴ、バッタなど、好みの虫を揚げ、普通のパエリアと同じ要領で野菜と米を炒め、スープを加える。ざっと平らに整えたら、上に野菜と揚げた虫を乗せ、ハチノコを乗せて、フタをしてたく。
【審査員のコメント】「虫とサフランライスが非常に相性がよい」「虫料理はどうしても色が茶色系になりがちだけど、サフランライスやパプリカが鮮やかな色を演出していてとてもキレイ」。
・エントリーNo.2 「ミールワームとチーズの春巻き」(考案者:吉崎将氏)
【レシピ】ミールワームを素揚げにし、ゆず胡椒を塗った春巻きの皮に、チーズ&大葉とともに巻いて揚げる。
【審査員のコメント】「揚げたミールワームは単体でもサクサクしておいしいのですが、それを春巻きで巻いて揚げることでよりサクサク感が出て非常に食べやすい」「クリームチーズで親しみやすく、さらに柚子胡椒で味付けされているところがニクい」。
・エントリーNo.3 「蚕のリアルニョッキ」(考案者:松本裕介氏)
【レシピ】蚕をゆでてすりつぶし、外皮などを取り除く。ゆでた桑の葉と下処理した蚕をフードプロセッサーで混ぜる。小麦粉、卵、塩・コショウを加えてこね、適当なサイズにまるめてゆでる。ゴルゴンゾーラソースを作って、好みでパルメザンチーズとクルミ(ローストタイプ)を加える。
【審査員のコメント】「蚕がすりつぶしてあるので、虫を材料に使ってると言われなければ気付かずに食べられる。虫っぽさが少なくて物足りなければ、横に添えてある素揚げを一緒に食べると歯ごたえがあっていいと思います」。
・エントリーNo.4 「イナゴのおこわ」(考案者:石倉卓也氏)
【レシピ】イナゴを赤くなるまでゆでてから後ろ足・はねを切り落とし、胸の真ん中あたりを切る。人参、しいたけ、イナゴ(腹側)を炒め、調味料で味を整える。炒めた具材を加えてもち米を炊く。カットしたイナゴ頭部は、佃煮にして一緒に食べる。
【審査員のコメント】「すごくモチモチのおこわの中にイナゴの香ばしさが効いている。口の中に秋の田んぼが広がるみたいな気持ちがしました」。
・エントリーNo.5 「はんぺんチーズのミールワーム揚げ」(考案者:蓬田至氏)
【レシピ】はんぺんをフードプロセッサーでピューレ状にし、1センチメートル角にカットしたプロセスチーズ、パセリ、片栗粉を加えて好みの形にする。揚げたワームを衣としてまぶして揚げる。
【審査員のコメント】「外側がサクッと揚げたミールワームで、かじると中身ははんぺんという、食感の変化は芸術性が高いですね」「写真で見るほど強烈ではなく、おいしさの余韻に浸っています」
虫料理が審査員たちの前に出てくるたびに、我先にと撮影とコメント取りのために前のほうへ群がっていた記者たち。いまだかつてこんなに虫料理にフラッシュがたかれたことがあっただろうか。異様な熱気を残したまま、審査員たちはグランプリの審査へと入った。
数分の審議の結果、グランプリに輝いたのは……エントリーNo.1の「バグパエリア」。レシピ考案者のサトシーT氏への優勝トロフィーの授与、そして喜びのスピーチで「第1回昆虫料理レシピアワード」は幕を閉じた。
終了後、「優勝作品のバグパエリア、先着順で皆さんも試食ができます」と観客へアナウンスされた瞬間、あっという間に行列ができた様子を見て、虫食の訴求力を感じざるを得なかった。前出のムシモアゼルギリコ氏は「セミの鑑賞やゴキブリの飼育だなんて、食べ頃のベリーを観察しているようなものですわ」と言い切る。この言葉、そして会場全体の虫食への熱狂、やはり頑なに虫を嫌う私のほうが間違っているのだろうか。好きと嫌いは紙一重。こうして虫料理と触れ合ううちに「クラスのアイツ、嫌っていたハズなのに気付いたら目で追っていたの……」みたいな感じで、いつの日か虫料理と分かり合える日が来るのかもしれない……。
勇気を出してグランプリ「バグパエリア」実食
ということで先着順で配られた「バグパエリア」を筆者もどうにか入手。勇気を出して食べてみることにした。試食の行列に間に合わず肩を落として帰っていったお客さんもいた手前、あんまり嫌そうに食べるわけにはいかない。
セミ、ゴキブリ、バッタなどと一緒にたかれたパエリアではあるものの、偶然私が食べたところに入っていたのは小さなハチノコだけだったため、食感も気にならず、不覚にもおいしいと思ってしまった。虫料理と少し、ほんの少しだけ、距離が縮まった貴重な瞬間であった。
※虫料理を楽しむ際は生食を避け、衛生面に注意しましょう。
朝井麻由美(@moyomoyomoyo)は、体当たり取材・イベント取材を得意とするフリーライター。一風変わったスポットに潜入&体験した記事は100本を超える。主に「週刊SPA!」や「DIME」などの男性誌で執筆するほか、「日刊サイゾー」ではB級スポットを巡る「散歩師・朝井がゆく!」を好評連載中。ゲームと雑貨とパズルが好き。コスプレするのもわりと好き。ウニとイチゴがあればだいたいご機嫌。
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