将棋電王戦、人間側が負け越すも「久々に情熱持てた」と森下九段 そして最終戦へ
「第3回電王戦」第4局の舞台は小田原城。両者が持ち味を発揮する白熱した対局に。「勝つことだけが全て」と勝ちにこだわる姿勢を見せていた森下九段は――。
「第3回将棋電王戦」第4局が4月5日、小田原城(神奈川県小田原市)で行われた。大熱戦の末、将棋ソフト・ツツカナが森下卓九段に135手で勝利。コンピュータ側が対戦成績を3勝1敗とし、団体戦での2年連続勝ち越しを決めた。
当日の小田原城は快晴。ちょうど桜の季節な上、広場では「小田原おでんサミット2014」が開催されていたため、大勢の人々でにぎわっていた。対局室は、二の丸の正門にあたる銅門(あかがねもん)内に設けられ、屋外を観光客が行き来する中、コンピュータとプロ棋士が将棋を指した。異例づくしの勝負環境となっている第3回電王戦だが、第4局はことさら特殊だったように思う。ちなみに、スタッフ・関係者用の控室はもっぱら”テント”だった。
電王戦の魅力
電王戦の魅力は、やはり何といっても人間とコンピュータが真剣勝負を繰り広げること。ドワンゴの川上量生会長は、「電王戦は21世紀の文学のテーマ」との見解を示している。つまり、「人間とコンピュータの共存関係は今後どうなるのか」「コンピュータに脅かされつつある人間はどう生きるのか」などのテーマが電王戦に集約されているとみる。
その上で、コンピュータソフトも結局は人間が作っていることから、「開発者とプロ棋士」の人間ドラマでもある。PVで紹介されているような両者のバックグラウンドを知ると、より深く楽しめる。
100文字紹介
- 森下卓九段:伝説の真剣師・花村元司九段に師事し、17歳でプロデビュー。矢倉戦法「森下システム」の考案者でA級通算10期。タイトル戦に6度進出するも、獲得経験はなく“無冠の帝王”と呼ばれた。愛称は「律儀先生」。
- 一丸貴則さん:第2回電王戦で船江五段と好勝負を繰り広げ勝利。当時は無職(大学院卒)だったが、一連の活躍により将棋アプリ開発などを手がける「HEROZ」にスカウトされる。2014年1月3日に入社。愛称は「103」。
白熱した勝負
第4局は、「相矢倉」という戦型になり、中盤までほぼ互角の局面が続いた。人間とコンピュータではどちらかの完勝になりやすいと言われるが、本局は両者が持ち味を発揮する戦いとなった。
報道陣用の控室では、将棋連盟公認アプリ「将棋ウォーズ」の運営元であり、一丸さんと山本さん(Ponanza開発者)の勤め先であるHEROES(ヒーローズ)の社長らが、別バージョンのツツカナ、Ponanzaを動かして戦局を分析。後半からは、竹内さん(習甦開発者)、山下さん(YSS開発者)も加わり、世界有数の将棋ソフトが一同に検討を行っていた。
こうした豪華な検討体制で、特に印象に残った局面は2つ。まずは、74手目。森下九段が△5七歩と指したところだが、控室のツツカナ(別バージョン)は「△5六歩で劣勢」と判断していた。しかし、実際の手はわずかに異なったため、評価値は大きく変動。生放送で使われていたBonanzaの評価もツツカナ「−74」から「+124」に転じた。
もう1つは、111手目。ツツカナが終盤リードしている局面だが、控室のコンピュータ陣は「次が▲1四桂ならツツカナの勝ち。▲4四角だと森下九段の大逆転」と導きだしていた。実際の手は▲3二金となりどちらも当たらなかったが、選択次第では状況が一変する可能性があった。
ツツカナ勝利。そして最終戦へ
最後は、ツツカナが鮮やかな形で勝利。終局後の一丸さんの感想は、「完走できてホッとしました」だった。また、惜敗した森下九段の振る舞いも印象的だった。PVなどでは「(一般的には)結果しか見てもらえない勝負」「勝つことだけが全て」と、勝ちにこだわる姿勢を見せていたが、敗れた姿に悲壮感はなかった。会見でも、「久々に情熱を持つことができて非常に良い機会だった」と明るく応じていた。電王戦において、棋士が敗れたのに空気が重くならなかったケースは初めてではないか。
さて、将棋ソフトVSプロ棋士の団体戦は第4局をもって勝負が決した。しかし、だからといって最終局の価値が減るわけではない。なぜなら“トップ棋士との力関係”はまだ不明瞭だからだ。プロ棋士の人数は約160人。大将の屋敷伸之九段は2011〜2013年度、そのうちの上位10人と言うべきA級で活躍している。
第3局では豊島将之七段(B級1組だが、非公式のレーティングでは羽生三冠、渡辺二冠に続く第3位)が完勝した。トップ棋士ならコンピュータプログラムよりまだ優位なのかもしれない。現時点における答えの一端は4月12日に明らかになる。
関連記事
- 将棋電王戦第3局で人間側が1勝を返す 豊島七段が「序盤、中盤、終盤、隙が無い」指し回しでYSSに圧勝
駒たちが躍動する豊島の将棋を皆さんに見せたよね。 - 電王戦第2局は炎上を経てどうなったか ネタキャラ対決は「カツラ落ち」のガチンコ勝負に
対局前の炎上が話題となった第2局は、誰もが認める大熱戦の将棋に。 - 電王戦第2局「やねうら王」は旧バージョンで ドワンゴ川上会長「誤った判断だった」と特例撤回
ドワンゴ川上会長、「やねうら王」開発者磯崎さん、将棋連盟片上理事のコメントと、経緯をまとめました。 - どうなる「電王戦」第2局 「やねうら王」開発者、ドワンゴ川上会長らが緊急ニコ生配信へ
対局方法に関して説明するニコニコ生放送が急きょ決定したもよう。 - 現地リポート、「やねうら王」問題も:電王戦、将棋ソフトがまず1勝 無観客の有明コロシアムにロボットアーム……シュールさも見どころ
習甦が菅井竜也五段を破った第1局、「やねうら王」をめぐる衝撃のラスト……。当日の現地模様やニコニコ生放送の雰囲気を写真を中心にリポートしよう。 - 将棋電王戦、出場ソフトにバグ修正の“特例”認める 「棋士に失礼」「興ざめ」と非難の声も
佐藤紳哉六段と「やねうら王」開発者が出演する予告PVも“炎上”する騒ぎに。 - 人間 VS 機械って面白い! 将棋の次は卓球が話題に
ロボットアームに卓球させたらなかなか面白いことになったの巻。 - ロボットアームが駒を指す! 電王戦で将棋界初の試み、棋士の前にロボット鎮座
産業用ロボットを手がけるデンソーが開発したロボットです。 - 将棋電王戦の勝敗を予想する「ととくじ」 佐藤紳哉六段のカツラも当たる
「toto」ならぬ「ととくじ」です。 - 最強将棋ソフト「Ponanza」に勝てたら100万円ニコ生、今年も開催 全視聴者対Ponanza企画も
提供される100万円はPonanza開発者山本さんの結婚資金。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
-
ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
-
夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
-
ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
-
妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
-
人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
-
「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
-
「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
-
160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
-
「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
- イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
- 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
- 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
- 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
- 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
- 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた