ニュース
» 2015年01月23日 10時00分 公開

好きになった相手がロボットだったら――? 決して年をとらないロボットと少女の百合マンガ「となりのロボット」が切ない虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第38回

今年は百合が熱い……! そんな中、今いちばん紹介したい百合マンガが「となりのロボット」です。

[虚構新聞・社主UK,ねとらぼ]

 ねとらぼ読者のみなさん、ごきげんよう。虚構新聞の社主UKです。

 前回掲載の総集編「『このマンガがすごい!』にランクインしなかったけどすごい! 2015」、各方面から多くの反響をいただき、本当にありがとうございました! 昨年発売作品の1位として、樫木祐人先生の「ハクメイとミコチ」(KADOKAWA)と、つくしあきひと先生の「メイドインアビス」(竹書房)の2作を挙げたのですが、掲載後の「社主、分かってるじゃないか!」という声に大変励まされました。今年もこの調子でおもしろいマンガをたくさん紹介していければと思います。


画像 「となりのロボット」(全1巻/秋田書店)

 さて、この年末年始は社主含む百合クラスタにとって何かと盛り上がる話題がてんこ盛りでした。

 11月発売の文芸・思想誌「ユリイカ」が「百合文化の現在」として百合特集を組み、今月からはアニメ「ユリ熊嵐」の放送が開始。マンガ方面ではこの「ユリ熊嵐」のコミカライズ版を連載している「月刊コミックバーズ」(幻冬舎)から、豪華執筆陣による百合アンソロジー「ユリボン」が発売され、本連載でも紹介した(関連記事)缶乃先生の「あの娘にキスと白百合を」(KARDOKAWA)第2巻も発売されました。

 昨年、社主の百合アンテナの感度が急激に高まったこともあるかもしれませんが、客観的に見ても今年は久々に百合が盛り上がるのではないか――、そんな予感が漂う2015年。そして、そのためにはやはり素敵な百合作品が広く知られなければ!

 ということで、今回は今年最初を飾るにふさわしい素晴らしい百合マンガをご紹介。西UKO先生の「となりのロボット」(全1巻/秋田書店)です。



ヒロちゃん 私のこと 忘れないでね


画像 見た目は人間そっくりなヒロちゃん

 女子高生の「チカちゃん」こと央子(ちかこ)が、近所に住む「ヒロちゃん」に初めて出会ったのは4歳のある雨の日。その日、17歳のヒロちゃんは傘をさして公園のベンチに座っていました。この日以来2人は「チカちゃんとヒロちゃん」として友達になります。

 またある日、小学生になった央子はいつものように17歳のヒロちゃんと公園で出会います。それは央子が中学生になっても、そして高校生になった現在も――。そう、彼女が4歳の頃に出会った友達のヒロちゃんは決して歳を取ることのない女性型ロボット「プラハ」なのです。

 人間社会に自然に溶け込むことを目標に開発中のヒロちゃん(=プラハ)は、央子との長いコミュニケーションを通じて、見た目はそのままに、その学習機能を大きく成長させていきました。最初の頃は不自然だった彼女の言葉づかいも、央子との「友達しゃべり」が導入されたことでより自然なものに進化します。

「チカちゃんはちょっとずつ大人になる / わたしもちょっとずつ人になれている と 思う」

 もちろん成長したのは央子も同じ。自身も女子高生になり、ついにヒロちゃんの身長を追い抜いたその日、彼女はこれまでずっと抱いてきた想いを口づけとともに伝えます。

「ヒロちゃん 私のこと 忘れないでね」

 ……と、まさに百合好きには直球ど真ん中、キュンキュンくるシチュエーションですが、その央子の告白に対するヒロちゃんの答えがこうなのです。

「データの保護は最優先事項だから大丈夫」


画像 ヒロちゃんの返答が切ない……

 「忘れないでね」と言われたロボットが、こう答えるのは「正しい」。けれど、その「正しい答え」が相手の求めている答えであるかどうかはまた別の話。

 百合マンガの王道「好きになった相手が同性だという困惑、そして受容」に加え、央子が想うヒロちゃんは「プラハ」というコードネームを持った機械なわけですよ。マンガであれ小説であれ、叶わぬ恋の切なさというのは永遠のテーマですが、同性の人形(ひとがた)に恋してしまうというのは、もはや切なさと言うより絶望に近いものがあります。「正しい答え」を返したヒロちゃんと、それを聞いた央子の表情の残酷な対比に、社主は本当に心苦しくなりました。そしてまた「これは単なる百合ではない……」と確信した瞬間でもありました。

 こんなに哀しい冒頭から始まる本作ですが、この後、物語は「わたしはロボットです」の独白から始まるヒロちゃん視点と、「私の幼なじみはロボットです」の独白から始まる央子視点の両方から語られていきます。

 どう考えても成し遂げられるとは思えない央子の想い、そしてヒロちゃんは央子から寄せられる「愛」という感情を理解できるのか。素晴らしいクライマックスを含む物語の結末はぜひ手に取って読んでみてください。




「好き」という感情とは何なのか

 それにしてもここまで来ると本作のテーマは「百合」という枠を超え、「愛や好意とはいったい何なのか」という根源的な問いにまで広がっていきそうな気がします。

 もし好きだという感情が「相手のことを少しでも多く知りたい気持ち」と置き換えられるなら、特定の相手に関するデータを大量に蓄え続けるロボットは「好き」を知ったことになるのか。

 作中ヒロちゃんが研究室で尋ねる「何ミリセックからキスだと認めていいですか?」、「人間は愛している相手にキスをしますね/ではキスをされたら愛されていると判定していいですか?」という問いに答える術を、人間なのに社主は持ちません(もちろん「場合による」と答えることはできますが、その「場合」を厳密に定義できなければ、ヒロちゃんは満足してくれないでしょう)。

 本作「となりのロボット」では、ヒロちゃんとチカちゃんのやさしく切ないドラマが展開される一方、認識論的に「好き」を理詰めで追究する視点をも含んだ、百合好きだけでなくSF好きにも受け入れられる広い射程を備えた、本当に素晴らしい作品です。

 「性や種に関係なく『好き』という気持ちは尊いな……」と、ニフラムを浴びたバブルスライムのような気持ちのまま、今日はこれにて筆を置きます。

 今回も最後までお読みくださりありがとうございました。


(C)西UKO/UKOZ(プリンセスGOLD)2014


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2208/11/news068.jpg がん闘病の秋野暢子、手足の浮腫みで“見たこともない体重”に 抗がん剤の副作用を「しっかり受け止めます」
  2. /nl/articles/2208/11/news060.jpg 研ナオコ、長女の誕生日に面影感じる“母娘”ショット 「そっくりな娘さん!」「大人になりましたね」
  3. /nl/articles/2208/10/news172.jpg 朝日奈央が結婚、お相手との肩組み2ショット公開 「これから家族として、沢山の景色を一緒に見にいける事がとっても楽しみ」
  4. /nl/articles/2208/11/news063.jpg 高橋真麻、第2子妊娠を生発表 6月に“激痩せ”姿が話題になるも「どうやら体質のようです」「理由が言えなかった」
  5. /nl/articles/2208/11/news010.jpg 水浴び中の野生の水牛を発見、撮影していたら…… 突然振り返った行動に撮影者が大慌て!【豪】
  6. /nl/articles/2208/10/news023.jpg 生まれつき前足のない柴犬、おやつの前に…… “お座り”ができるようになった姿に「命ってスゴい」「ウルウルした」と感動の声
  7. /nl/articles/2208/11/news064.jpg 岩崎宏美、長男の結婚を“新婚ホヤホヤ2ショット”とともに報告 「しっかりね!! ずっと仲良しでね!!」とエールを送る
  8. /nl/articles/2208/10/news174.jpg 坂上忍、余命数カ月の“13男”・平塚コウタに「奇跡」 転移した腫瘍消失で喜びあらわ 「先生もビックリしてて」
  9. /nl/articles/2208/11/news059.jpg 旦那大好きだな! 藤本美貴、夫・庄司智春との“ペアルック夫婦”ショットが超ラブラブ「幸せが伝わってきます」
  10. /nl/articles/2208/11/news016.jpg 2階にいるママを待ちきれない19歳の猫ちゃん、階段の下から…… 「にゃおおお!!」と何度も呼び出す姿に「甘えん坊さん」の声

先週の総合アクセスTOP10

  1. 競技中とのギャップ! 高梨沙羅、キャミソール私服でみせた大胆“美背中”に反響 「背中ガッポリ」「魅惑の黒トップス」
  2. かわいい妹すぎ! 北川景子、義姉・影木栄貴の結婚で“お姉ちゃん愛”が爆発する 「姉がどこか遠くへ行ってしまう」
  3. 泣いていた赤ちゃんが笑い声に、様子を見に行くと柴犬が…… 優しくあやす姿に「最高の育児パートナー」の声
  4. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  5. 「若い君にはこの絵の作者の考えなんて分からない」→「それ俺の絵」 ギャラリーで知らないおじさんから謎の説教を受けた作者に話を聞いた
  6. 木下優樹菜、元夫・フジモン&娘たちとディズニーシーを満喫 長女の10歳バースデーを祝福
  7. 黒柴の子犬が成長したら…… 頭だけ赤色に変化した驚きのビフォーアフターに「こんなことあるんですね」「レアでかわいい」の声
  8. 子「ごめん、もう仕事できない」→母「はぁい了解っっ」 退職を明るく認めた家族のLINEが優しい
  9. スタバの新作が王蟲っぽくてファンザワつく 「怖すぎる」「キショいから買いたくなった」
  10. カナダ留学中の光浦靖子、おしゃれヘアのソロショットに反響 「お元気そうでなにより」「別人のよう」

先月の総合アクセスTOP10

  1. 安倍元首相、銃で撃たれて意識不明か 事件時のものとみられる映像投稿される
  2. 野口五郎、20歳迎えた娘と誕生日デート 家族同然の西城秀樹さん長女も加わり「楽しい時間でした!」
  3. 「大阪王将」店舗にナメクジやゴキブリが発生? 元従業員の“告発”が衝撃与える 大阪王将「事実関係を調査中」
  4. この画像の中に「さかな」が隠れています 猫に見つからないように必死! 分かるとスッキリする隠し絵クイズに挑戦しよう 【お昼寝編】
  5. ダルビッシュ有&聖子、ドレスアップした夫婦ショットに反響 「ハリウッド俳優やん」「輝いてます」
  6. 「auの信頼度爆上がり」通信障害でも社長の“有能さ”に驚く声多数 一方で「まだ圏外だぞ…」など報告続く
  7. スシロー、“ビール半額”で今度は「ジョッキが小さい」との報告? 運営元「内容量に差異はない」と否定
  8. スシロー「何杯飲んでもビール半額」開始前にPOP掲示 → 注文したら全額請求 投稿者「態度に納得いかなかった」 運営元が謝罪
  9. TKO木下、海外旅行先で総額270万円のスリ被害に エルメスの財布奪われた“瞬間映像”も公開「くっそ〜……」
  10. パパが好きすぎて、畑仕事中も離れない元保護子猫 お外にドキドキしながら背中に乗って応援する姿があいらしい