ニュース
» 2016年12月18日 14時00分 公開

片想いの女の子が16年前からタイムスリップしてきた 失恋の古傷を深くえぐる「青春のアフター」

漫画紹介連載「虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!」の第79回。自分を振ると同時に目の前から消えてしまった女の子が、そのままの姿で16年後にまたやってきたら、あなたはどうする?

[虚構新聞・社主UK,ねとらぼ]

 ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。

 今回は「失恋を経験したことがある」男女にこそお勧めしたい作品、緑のルーペ先生の「青春のアフター」(〜3巻、以下続刊)をご紹介します。既にご存じの読者なら、このタイトルを聞いただけで「うっ……」と、胃がキリキリ締め付けられるような気持ちになっているかもしれません。それほどまでに強い印象を読者に植え付けている作品でもあります。

青春のアフター 緑のルーペ 「青春のアフター」第1巻(第1話試し読みページ)(C)緑のルーペ/双葉社

好きな娘が「呪いの言葉」を残して消えてしまう

 「青春のアフター」というタイトル通り、本作は青春の後始末(アフター)の物語。「後始末」と言っても、ほとんどの人は青春というものをそこまで意識して片付けたこともなく、「気が付けば通り過ぎていたあのころ」くらいの感覚でしょう。

 しかし、本作の主人公・鳥羽まこと32歳にとっての青春は必ず始末をつけなければならないものでした。なぜなら、彼の高校=青春時代は、今日まで生きる理由そのものでもあったから。

 さかのぼること16年、同級生の十和さくらに恋をした高校生の鳥羽は、次第に彼女と親密になっていき、ついに意を決して告白。けれど、直前に鳥羽が犯したある出来事が原因で「ただの友達のくせに」とひどく愛想をつかされ、終いには「鳥羽なんていなくなっちゃえばいいんだ!!!」とキツい一言を浴びせられます。

青春のアフター 緑のルーペ 「いなくなっちゃえばいいんだ!!!」。ここから長い「ゲームオーバー後」が始まる

 しかしそう叫んだ瞬間、さくらは姿を消します。立ち去るとかではなく、テレポーションのようにこつ然と消えてしまうのです。

 わけが分からぬままさくらは世間的に失踪扱いに。もし振られた後もさくらがいたなら、鳥羽も失恋を受け入れ、友達としてうまくやっていけたのかもしれません。しかし失恋相手は神隠しのようにいなくなってしまった。残されたのは、片想いの相手から浴びせられた「いなくなればいいのに」という呪いのような言葉だけ

 「『突然消えたなら突然帰ってきてもおかしくない』(中略)その思いだけで僕はゲームオーバーを迎えた後の現実に立ち続けていた。」

 さくらの失踪という現実を受け入れきれず「ゲームオーバー後の現実」を長く引きずってきた鳥羽にも、ようやくみい子という彼女ができます。しかし、同棲生活を始め、結婚も視野に入った32歳のある日、鳥羽の目の前にあのさくらが再び姿を見せます。しかも16年前に消えた姿そのままで。あの雨の日、彼女が消えた理由はタイムスリップだったのです。

青春のアフター 緑のルーペ 鳥羽とみい子の前にタイムスリップしてきたさくら。ここから「青春の後始末」が始まる

終わったはずの青春が終わってくれない

 16年後の現在に飛ばされてきたさくらは、唯一の肉親だった祖母も亡くなっていたため、鳥羽とみい子が同棲している部屋で預かることに。さくらの事情を知るたった一人の味方になった鳥羽は、みい子への思いとの間で葛藤しながら、青春の後始末へと歩みを進めていくことになります。

青春のアフター 緑のルーペ 第2巻。さくらがいなくなった後の16年、鳥羽が失恋とどう向き合ってきたかが明らかになる

 実を言うと1巻を読んだ時点では「いくら16年間待ち続けていた片想いの相手とは言え、既に結婚目前の彼女がいて気持ちが揺らぐことなんてあるのだろうか?」というクエスチョンが消えないままでした。しかし2巻では、好きになった女の子が目の前で急に消えるという事実を消化しきれないまま堕ちていった鳥羽の過去が明らかになっていきます。

 「全部がダメになって、なお、人生は続く。なんだこれ。なんで終わってくれないんだ。」

 ゲームならバッドエンドでも終わりは終わり。けれど現実の人生はバッドエンドだろうと否応なく続く。2巻の超展開には、鳥羽の迷いも「仕方ない……」とつい思い至ってしまいます。

 また2巻は、失恋や挫折によって自分の人生を「終わってしまったもの」「ゲームオーバー後」と一時でも考えたことがある人なら、必ず突き刺さるセリフや独白に満ちています。

 例えば思いが届かない相手に向けた「自分のものにならないなら せめて 一生消えない傷を――」という言葉。失恋後の心境の中でも、最も暗くて澱(よど)んだエゴむき出しの闇。表に出せない、出してはいけない感情だからこそ、よく研がれたナイフのように読み手の心の臓の奥底まであっさり届いてしまう。本当に心をえぐってくる名ゼリフが多く、今年泣いた数少ないマンガの1つです。

次で最終巻なのに青春の着地点が読めない

 さくらの呪縛にとらわれたままという印象が強かった2巻に対して、11月発売の最新3巻では、鳥羽の「大人」としての側面が強く出たのと軽いエピソードが多めで、青春の後始末も順調に進むかに思えました。

青春のアフター 緑のルーペ 第3巻

 が、最後の最後で「どうしてこうなった」という頭を抱える展開に。その上、次巻で完結ということで、正直言ってもう全く先が読めません。少なくともソフトランディングはあり得ない流れです。ゲームオーバーなどと言わず、ハッピーエンドを期待したいところですが果たして……。

 しかしまあ何と言いますか、幸せや充実というのは100点の理想より、70点くらいの現実の中にあるような気もします。それを人は「妥協」と呼ぶかもですが、妥協に生きるのも決して悪いことではないと思うのです。そういう意味で社主とほぼ同世代の鳥羽が、自身の青春にどう後始末を付けるのか、注目しています。

 今回も最後までお読みくださりありがとうございました。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2208/11/news068.jpg がん闘病の秋野暢子、手足の浮腫みで“見たこともない体重”に 抗がん剤の副作用を「しっかり受け止めます」
  2. /nl/articles/2208/11/news060.jpg 研ナオコ、長女の誕生日に面影感じる“母娘”ショット 「そっくりな娘さん!」「大人になりましたね」
  3. /nl/articles/2208/10/news172.jpg 朝日奈央が結婚、お相手との肩組み2ショット公開 「これから家族として、沢山の景色を一緒に見にいける事がとっても楽しみ」
  4. /nl/articles/2208/11/news063.jpg 高橋真麻、第2子妊娠を生発表 6月に“激痩せ”姿が話題になるも「どうやら体質のようです」「理由が言えなかった」
  5. /nl/articles/2208/10/news023.jpg 生まれつき前足のない柴犬、おやつの前に…… “お座り”ができるようになった姿に「命ってスゴい」「ウルウルした」と感動の声
  6. /nl/articles/2208/11/news010.jpg 水浴び中の野生の水牛を発見、撮影していたら…… 突然振り返った行動に撮影者が大慌て!【豪】
  7. /nl/articles/2208/11/news064.jpg 岩崎宏美、長男の結婚を“新婚ホヤホヤ2ショット”とともに報告 「しっかりね!! ずっと仲良しでね!!」とエールを送る
  8. /nl/articles/2208/10/news174.jpg 坂上忍、余命数カ月の“13男”・平塚コウタに「奇跡」 転移した腫瘍消失で喜びあらわ 「先生もビックリしてて」
  9. /nl/articles/2208/11/news059.jpg 旦那大好きだな! 藤本美貴、夫・庄司智春との“ペアルック夫婦”ショットが超ラブラブ「幸せが伝わってきます」
  10. /nl/articles/2208/11/news016.jpg 2階にいるママを待ちきれない19歳の猫ちゃん、階段の下から…… 「にゃおおお!!」と何度も呼び出す姿に「甘えん坊さん」の声

先週の総合アクセスTOP10

  1. 競技中とのギャップ! 高梨沙羅、キャミソール私服でみせた大胆“美背中”に反響 「背中ガッポリ」「魅惑の黒トップス」
  2. かわいい妹すぎ! 北川景子、義姉・影木栄貴の結婚で“お姉ちゃん愛”が爆発する 「姉がどこか遠くへ行ってしまう」
  3. 泣いていた赤ちゃんが笑い声に、様子を見に行くと柴犬が…… 優しくあやす姿に「最高の育児パートナー」の声
  4. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  5. 「若い君にはこの絵の作者の考えなんて分からない」→「それ俺の絵」 ギャラリーで知らないおじさんから謎の説教を受けた作者に話を聞いた
  6. 木下優樹菜、元夫・フジモン&娘たちとディズニーシーを満喫 長女の10歳バースデーを祝福
  7. 黒柴の子犬が成長したら…… 頭だけ赤色に変化した驚きのビフォーアフターに「こんなことあるんですね」「レアでかわいい」の声
  8. 子「ごめん、もう仕事できない」→母「はぁい了解っっ」 退職を明るく認めた家族のLINEが優しい
  9. スタバの新作が王蟲っぽくてファンザワつく 「怖すぎる」「キショいから買いたくなった」
  10. カナダ留学中の光浦靖子、おしゃれヘアのソロショットに反響 「お元気そうでなにより」「別人のよう」

先月の総合アクセスTOP10

  1. 安倍元首相、銃で撃たれて意識不明か 事件時のものとみられる映像投稿される
  2. 野口五郎、20歳迎えた娘と誕生日デート 家族同然の西城秀樹さん長女も加わり「楽しい時間でした!」
  3. 「大阪王将」店舗にナメクジやゴキブリが発生? 元従業員の“告発”が衝撃与える 大阪王将「事実関係を調査中」
  4. この画像の中に「さかな」が隠れています 猫に見つからないように必死! 分かるとスッキリする隠し絵クイズに挑戦しよう 【お昼寝編】
  5. ダルビッシュ有&聖子、ドレスアップした夫婦ショットに反響 「ハリウッド俳優やん」「輝いてます」
  6. 「auの信頼度爆上がり」通信障害でも社長の“有能さ”に驚く声多数 一方で「まだ圏外だぞ…」など報告続く
  7. スシロー、“ビール半額”で今度は「ジョッキが小さい」との報告? 運営元「内容量に差異はない」と否定
  8. スシロー「何杯飲んでもビール半額」開始前にPOP掲示 → 注文したら全額請求 投稿者「態度に納得いかなかった」 運営元が謝罪
  9. TKO木下、海外旅行先で総額270万円のスリ被害に エルメスの財布奪われた“瞬間映像”も公開「くっそ〜……」
  10. パパが好きすぎて、畑仕事中も離れない元保護子猫 お外にドキドキしながら背中に乗って応援する姿があいらしい