インタビュー
» 2017年08月16日 11時00分 公開

音楽の世界に「やりがい搾取」はあるか? 元プロサックス奏者にあれこれ聞いてみた(後編) (3/3)

[中山順司,ねとらぼ]
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モノにならなかったときの選択肢

――我が子が「プロを目指す」と宣言したら?

G: 自分の経験をまず伝えます。事実を語ります。一番のメッセージは「選択肢の話」ですかね。モノにならなかったとき、選択肢を残しておきたいのなら……ダメならさっさと見切れ、と言うでしょう。

――それでもやると譲らなかったら?

G: 止めはしませんよ。僕も止められましたけど、聞き入れませんでしたもん。人間、やりたいことは誰がなんと言おうがやるんです。親だって止められない。だったら、「やってみろ」と好きにさせます。

――親に説得されて諦めるなら、それまでと。

G: ただし、「好きなことを目指した結果、父さんはこうなったけどね……」とも言います。選択肢がほしいなら、“26歳リミット説”は知っておくべきですね。

――26歳は、いわば崖のようなものかも。突っ込んでもいいけど、跳べるか落ちるかは進まないと分からない。跳んでしまったら後には引き返せない。

G: 変な例えですが、刺青を入れるのに似ているかな。刺青が悪いことだとは思わないけど、一線を越えたら引き返せないって点で同じ。

――失敗したとしても、誰も恨むなよ、と。

G: 自分で決断したことを、人のせいにはできない。全力で立ち向かって、それでもプロになれなかったとして、「それを含めて後悔はない。いい人生だった」って言い切れるなら好きにしなさい、と。

――ただ、親として辞めどきの情報は共有しておくわけですね。

G: ギリギリ引き返せるのは26歳の誕生日までってことは知っておいてほしいです。

――「今日で夢を追うのはおしまい。明日からサラリーマンになる」ってかんじにスパーンと決断できるものですか? それとも、受け入れるまでにそれなりの時間はかかります?

G: 時間はかかります。思い入れも強いぶん、そう簡単には諦められない。道半ばで断念するって恥ずかしいというか、プライドが許しません。辞める=挫折です。いろいろつらい。

――Gさんは、辞めると決心するまでにどれくらい時間を要しました?

G: 1年です。25歳で考え始め、26歳になった時点で決断しました。明日辞めるなんて軽いノリで下せないですよ。

――1年かけて心の準備というか、受け入れ態勢を作ったんですか。

G: そういうことになります。準備期間があったからリミットで身を引くことができた。26歳になってから考え始めていたのでは遅かったでしょう。車のブレーキの制動距離のようなものじゃないですか。ブレーキかけてもすぐには止まれないよ、26歳でブレーキを踏んだら、止まるときには27歳になっちゃうよ。

――30歳で考え始めていたら……。

G: 遅いです。事故ってます(笑)。

それでもミュージシャンを目指す人たちへ――

 いやー、音楽って本当に厳しい世界ですね。1ミリでも「武道館でスポットライトを……」と夢想した自分がさすがに恥ずかしくなりました。この記事が、プロのミュージシャンを目指す方の参考になれば幸いです。

中山順司(なかやま・じゅんじ)

ロードバイクをこよなく愛するオッサンブロガー。“徹底的&圧倒的なユーザー目線で情熱的に情報発信する”ことがモットー。freee株式会社勤務&経営ハッカー編集長。ブログ「サイクルガジェット」運営。


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