手を使って手を操作するという無理ゲー 人体の神秘をイヤというほど体験できる人体シミュ「Hand Simulator」:週末珍ゲー紀行
こんな複雑な手を余裕で操作している脳みそってすごい。
世の中にあふれる“変なゲーム(珍ゲー)”を紹介する「週末珍ゲー紀行」。第7回は自分の手を使って自分の手を操作するだけの体験ゲーム「Hand Simulator」を紹介します。この地球上に人間ほど前肢を器用に使いこなす生物はいません。物をつかんだり拳で殴ったりできるだけでなく、手話やジェスチャーによる意思疎通、信仰や祈願のために祈るという行為、親子や恋人同士による愛情確認など、手は人類文化そのものを象徴する存在でもあります。その偉大さの片りんを味わえる作品です。
ライター:Ritsuko Kawai
カナダ育ちの脳筋女子ゲーマー。塾講師、ホステス、ニュースサイト編集者を経て、現在はフリーライター。下ネタと社会問題に光を当てるのが仕事です。洋ゲーならジャンルを問わず何でもプレイしますが、ヒゲとマッチョが出てくる作品にくびったけ。Steamでカワイイ絵文字を集めるのにハマっています。趣味は葉巻とウォッカと映画鑑賞。ネコ好き。
ゲームモードは全部で4つ。牛の乳搾りに始まり、殺人老婆から身を守るホラー体験、リボルバーやライフルの射撃を弾込めから行うシューティング、そしてアメリカで社会現象にまでなったハンドスピナー。内容だけ聞くと簡単そうに思えるかもしれませんが、手の位置や高さ、手首の角度はもちろん、指の1本1本まで細かく操作しなければいけません。おそらく初見では何1つこなせなくてストレスだけたまるでしょう。
乳搾りくらいなら、人差し指でツンツンしたり適当にグニグニしたりを繰り返しているだけで白い液体が勢いよく飛び出るので、片手で手軽にこなせます。しかし、銃に弾を込めて撃鉄を起こし、引き金に指をかけるという一連の操作は両手を同時に使うだけでなく、異なる複数の指を器用に動かさなければいけません。ハンドスピナーを回すという行為もしかり。ホラーモードに至っては何をすべきかすら分からずに、指先だけピクピクしながら殺されてしまいます。
これらの複雑なアクションを、脳と直結していないマウスとキーボードという外部装置だけでコントロールすることが、いかに困難な課題かを思い知らされるでしょう。むしろ自分の手を使えないことが歯がゆくてイライラしてきます。それもそのはず。手とは、人間が外界への即物的な働きかけを行う際の大部分を占める部分であり、脳内がつかさどる割り当て領域の広さも、人体を占める体積が手よりも大きい腹や腿をはるかに上回っているといわれているのです。手のメカニズムは、それほどに繊細かつ複雑で、それをコントロールするために脳が処理している情報量も並大抵のものではありません。
実はこの作品、以前に第1回で紹介したアクションゲーム「Cart Racer」と同じ開発元。「Hand Simulator」のほかにも、ゴキブリになってキッチンでの壮絶な生き様を体験できるゲーム「Cockroach Simulator」や、ハエの気持ちになれる「Fly Simulator」、これらを3点セットにしたバンドル「Life Simulator」を販売しています。ちなみに本作にはオンライン対戦モードもありますが、発売から2カ月がたった現在はどの地域を選んでもほとんど人がいないので、野良でのマルチプレイは期待できません。ぶっちゃけゲームとしてはおすすめしませんが、198円で乳搾りを疑似体験するくらいの価値はあるでしょう。
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