ミステリ好きが早口で語る! ドラマ「アンナチュラル」の面白さ(1〜4話) (1/3)
まだ追い付ける!
石原さとみさん主演の金曜ドラマ「アンナチュラル」(TBS)が話題になっています。法医解剖医という“死因究明のプロ”たちが謎多き死に立ち向かう――という1話完結型のストーリー。「逃げるは恥だが役に立つ」で知られる脚本家・野木亜紀子さんの初のオリジナル作品です。
ドラマ好きから高い支持を得ている「アンナチュラル」ですが、ミステリファンの間でも人気が高まっており、Web上でミステリ作家どうしが「アンナチュラル見た?」と会話を交わすほど。ドラマとしての完成度だけではなく、ミステリとしての面白さも折り紙付きです。
では、本作のどんなポイントが「ミステリとして」面白いのか? 「アンナチュラルは2018年を代表する大傑作」と断言するミステリ好きの赤いシャムネコさんに、魅力をとことん(極力ネタバレなしで!)語ってもらいました。
赤いシャムネコさん過去記事
- 「名探偵コナン」劇場作品で一番面白いのってどれなの? 気合いの全21作レビュー&オススメベスト3!
- 劇場版「名探偵コナン」情報解禁! 新作「ゼロの執行人」の内容を最速で予想する
- このミス、本ミス、文春3冠! ミステリ界を揺るがした『屍人荘の殺人』をネタバレなしで解説する
1話「名前のない毒」
1話を見て「このドラマは傑作だ」と確信しました。
1話完結ものかつミステリ要素のあるシリーズの最初のエピソードというのは、「このシリーズはどういう話なのか」を示すイントロダクションであり、最も標準になるような話が選ばれるのが通例です。
例えばマンガ「金田一少年の事件簿」では「オペラ座館殺人事件」が最初の事件。猟奇的な連続殺人事件が発生し、主人公がトリックを解き明かし、犯人を突き止める――というパターンを示しています。ドラマ「TRICK」では「母之泉」で、一見すると超常現象にしか見えない事件の裏には仕掛けがあり、科学者と手品師が解くという構図。「これからのシリーズ、こういう話が続いていきますよ」というテンプレートを視聴者に示すのが1話です。
では、「アンナチュラル」はどのような1話だったのか。サブタイトルが「名前のない毒」で、不可解な死体がある。最初に提示される謎は「どのような毒が使われたのか?」です。しかも途中で死因が同じと見られる遺体がもう1体出てきて、連続殺人の可能性が出てきます。宮部みゆき先生の「名もなき毒」のことを思い浮かべたミステリ好きもいたことでしょう。ここまでで視聴者は「毒を鑑定していき、最終的に毒殺者を探す話なのかな?」と思わされたはずです。
ところがこのエピソードでは、毒殺はミスリードにすぎません。中盤に本当の死因が明かされ、視聴者は「これは毒の名前を解き明かす話じゃないんだ!」とひっくり返される。最初の謎に対する解答どころか、構造そのものが変質するんです。そして主人公のミコトたちが目指すゴールが、前半の「毒殺事件の謎を解く」から「人命を救う」ということに切り替わります。ここにきて僕は「すさまじいことをするな」と気絶しそうになりました。通常のミステリではここまで大胆に問いが変わることはありません。
さらにもう一段視聴者を驚かせる仕掛けがあるのがあまりにも技巧的。もう1回ひっくり返さなくても、お話としては十分に成立したはずです。ただその真相では、被害者の周囲の人々があまりにもやりきれない。視聴者もモヤモヤした思いを抱えたはずです。最後のひっくり返しがあることで、割り切れなさを解消するようになっています。
先ほど「1話はシリーズのテンプレートを示す」とお話しました。僕はリアルタイムで見ている間、「最初からずいぶん変化球で来たな」と思いました。でも変化球というのが間違いで、「アンナチュラルとは、法医学という手法を使って、割り切れない思いを救っていく話である」というのが示されている1話だったんです。
ミステリは「起きた事件の謎を解く」ということに焦点が当たりがちで、解いて終わりでも読者は満足できてしまいます。ですが「アンナチュラル」の主軸は、「謎を解かれること」そのものではなく、「謎を解くことで誰かの未来を救う」という、未来志向のもの。死者の物語でありながら、実は生き残っているものたちの物語である――ということを明示している、素晴らしい1話でした。
キャラクター配置の魅力も触れておきます。ミコトを演じる石原さとみはかわいいに決まっていますし、中堂さんもカッコいい。「アンナチュラル」の探偵役はこの2人ですが、主導権は固定されていません。六郎と東海林は視聴者にとっての「翻訳者」として配置されていますが、彼らも彼らでバカではない。あまりにも頭の悪い推理がないので、フラストレーションが生まれません。そして1話ラストのミコトと中堂さんの会話「2人の解剖件数を合わせれば無敵」「敵はなんだ」「不条理な死」――これによって、物語全体の敵と、2人の探偵が共闘する話であることも示唆されました。2018年はこの1話に出会えただけでもう満足です。
編集担当からのどうしても言いたい一言
生者のために死者の謎を解くお話が好きな人には、未解決事件の謎を再検証する米国のテレビドラマ「コールドケース」などもおすすめです。「コールドケース」は真犯人が逮捕されたタイミングで被害者が死んだ時代のヒットソングが流れるという構図になっており、めちゃくちゃ泣きます。さらにそのヒットソングを使っていることで(著作権の問題で)ソフト化が難しくなっているため、二重に泣かされます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
昨日の総合アクセスTOP10
「訃報」「愛猫」「手風琴」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
美大生が作った「回転する油絵」がどゆこと???となる不思議さ 作者に仕組みを聞いてみた
“可愛すぎる売り子”ほのか、事務所社長を怒らせ活動制限 「事実を受け止め、反省しています」と謝罪
【漫画】ネトゲで告白してきた美少女が中身ヤンキー男子高生だった! ぶっ壊れ性能なギャップに「かわいい」が止まらない
「天才か」「真似したい」 キャンドゥのアイテムで作る額縁風「ディスプレイボックス」がお手軽かわいい
“龍が巻き付いた剣のキーホルダー”はなぜどの観光地でも売られている? 製作会社に話を聞いてみた
元欅坂46・今泉佑唯、YouTuberワタナベマホトと結婚発表 「お腹の中に愛おしい命を……」と“Wおめでた”を告白
「UUUM」解雇のワタナベマホト、YouTubeチャンネル停止処分で“泣きっ面に蜂”状態
ヒト「お布団にどーぞ!」猫「……なんかちがう」 冬の夜、お布団に入ってほしい人間と猫の駆け引きを描いた漫画
【なんて読む?】今日の難読漢字「輿論」
先週の総合アクセスTOP10
- 「訃報」「愛猫」「手風琴」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
- 安達祐実、グレー髪への“勘違い指摘”に「白髪は悲しくないですよ」と切り返し 加齢の考え方が称賛を呼ぶ
- “東大王”鈴木光が『CanCam』デビュー “美しすぎる東大生”の新たな一面
- 柴犬たちが追いかけっこしていたら…… ワンコの“突然の裏切り”に「声出して笑った」「4コマみたい」の声
- 「えっ!? おきゃくさまっ!」 スターバックスでやけに長いレシートに遭遇 店員さんのテンションがすごかったエッセイ漫画
- 東大王・鈴木光、司法試験の結果は「私は残念ながら」 報告の仕方に人間性が表れていると話題に
- えっ、これのどこが……? 「オシャレに見せかけたオタク部屋」の写真が「理想」「住みたい」と喝采浴びる
- 筑波大学、合計20トンの食料を学生に支援 想像を超えるクソデカ配給に「笑うしかない」とうれしい悲鳴も
- 父の再婚で女子高生に“すごいアホそう”な8歳弟ができる漫画が笑いと涙 「最後持っていかれた」「尊死」
- 下着泥棒? と思って防犯カメラを見てみたら―― 体験漫画「フォロワーさんのゾッとしたお話」が本当にゾッとする
先月の総合アクセスTOP10
- 「訃報」「愛猫」「手風琴」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”
- 井上咲楽、“太眉”を人生初カットで別人に 「可愛いすぎます」「さらにファンになりました」と大反響
- 元「うたのおにいさん」今井ゆうぞうさんが脳内出血で急逝 生前最後のブログには“目の異常な充血”
- 2021年夏の祝日、東京五輪で変更 カレンダーの更新を
- 太眉卒業した井上咲楽、美しさ光るアップショットに大反響 「大人っぽーい」「すっかり美しい路線に」
- 「逃げ場のない恐怖」「爆発音で目が覚めた」 JAL904便がエンジントラブルで緊急着陸、乗客が撮影した映像が怖すぎる
- マックポテト「Mサイズのみ」味が変との声がネットであがる マクドナルドに話を聞いた
- 「これは天才」「来年のノーベル賞候補」 ホットサンドメーカーで焼く「ホットサンドケーキ」が悪魔的サクサク感で話題に
- 保護した子ネコに「寂しくないように」とあげたヌイグルミ お留守番後に見せた子ネコの姿に涙が出る
- アロンアルフアは5秒で接着→「時間が余ったので猫動画をご覧ください」 15秒CMのペース配分がおかしい