「DANSKバターウォーマー」と、ていねいに暮らしたい (1/2)
【エッセイ】生活に新たに加わった、赤くてすてきな小鍋。
「ていねいな暮らし」を目指す、かしわさんの暮らしエッセイ。
「生活が楽しくなるような、気分よく使えるような、自分の生活を愛せるようなアイテムを、少しずつ生活に取り入れている」ことを目指す連載です。今回はまたひとつ、結婚式の引き出物でもらったDANSKのバターウォーマーが加わりました。
「大は小を兼ねる」ということわざをウソとは思わないが、ぐらぐらと沸き立つ大きな鍋に卵3つを静かに落とし入れるときのあのよるべない気持ち、ぼこぼこととめどなく泡を噴き続ける鍋底で所在なげにかすかに揺れる卵たちを見ているときのあるいはふびんななにがしかを、私はあんまり愛さない。
では「小は大を兼ねる」のかと言えばそうではなく、たぶん大切なのはジャストフィットしていることなのだ。
私はずっと1週間の前半戦のための、卵3つをゆでるための、私の暮らしにぴったりの鍋を探していた。
お弁当づくりに、ゆで卵は欠かせない。毎朝起きぬけにたまご焼きを作る気力も時間もなく、だからゆでておいた卵を半分に割って、夫と自分のお弁当箱にのせる。他のおかずは残り物ばかりでも、卵が入るとぐんとお弁当感が増すものだ。
日曜日の夜に、3つゆでる。ゆで卵はストックがあればサラダにトッピングしたり、ラーメンに乗せたりと、その用途は広いけれど多めにゆでて週末に余らすことも多い。余ったゆで卵をそのままむしゃむしゃとやるような(まさに)ハードボイルドさは持ち合わせていないので、なんだかんだで週に2回はゆでている。
そんな最近、友人の結婚式でもらったカタログギフトをぱらぱらとめくっていると、小さな鍋が目に入った。真っ赤で、取っ手が木製なのがなんともあたたかくって、すてき。「ほう……」と思わず声が出る。「DANSK(ダンスク)」の「バターウォーマー」というらしい。バターを温めるための鍋なんて、ていねいな暮らしが過ぎるぜ……とくらくらするが、まあ実際に私の生活にバターを温めるシーンはないにしても、これなら卵3つをゆでるのにちょうどいいのではないか。そう確信して、はがきに番号を記入した。
相変わらず大きさの合わない鍋で卵をゆでつつ、バターウォーマーなんて単語はすっかり忘れていたころ、それはうちにやってきた。箱の「DANSK」の文字を見て「あーそうだそうだバターウォーマー」と合点し開けてみると、出てきたのは手のひらサイズの、鍋であった。上質な、おままごとの鍋にも見えなくない。この大きさ、ほんとうにバターあっためるくらいしかできないんじゃないか……!?
満を持して、いざ卵をゆでる。なんだか重要な儀式を前に神聖な気持ちさえする。
小さな小さな鍋に水を張る。うちのコンロは3口あって奥のコンロは小さめなのだが、このバターウォーマーには奥のコンロがちょうどいい。手前のコンロだとバランスを取るのが少し難しいぐらいだ。とか言ってるうちに鍋が沸騰する。早い。ものの2〜3分ではないか。冷蔵庫から取り出した卵をひとつずつ、おたまで静かに落としてゆく。ひとつ、ふたつ……あっもうお湯がいっぱいでこぼれそう。
沸いたお湯の3分の1ほどを捨て、3つ目の卵を沈める。3つでちょうど。ベストでジャストな容量にひとり、歓喜する。結局最初に入れる水は、鍋の3分の1程度で十分だと分かった。こんなんじゃほんとうに1分で沸くぞ。
タイマーはきっかり8分。かたゆででもなく、かといって半熟すぎもしない、8分が私にはちょうどいいゆで加減。
卵のゆで方やゆであがりの好みは、各人、各家庭によってきっといろいろだ。実家では、たしか水からゆで卵を作っていた……と思うけれど記憶が定かではないのは、家を出るまで作ったことがなかったから。実家にいた頃なんて、自分でゆで卵はおろか、料理なんて全て母に任せっきりでほとんど作ってこなかった。
けれど小学校4年生くらいの頃だったか、なーんにも手伝わない私を見かねて、母が「今日からあんたは夕飯のみそ汁を作る係」と宣言した。それは、なんだか逆らえない感じだった。というか、なんだかそう宣言されたら「そうか」という気持ちになったのだ。それで私は、その日から晴れて? 「みそ汁係」になった。
にぼしをバラバラと水に落として、火にかける。沸いたら取り出して、じゃがいもとか、白菜とか、その時野菜室にある野菜を切っていれる。火が通ったらみそを溶かして、4人分ちょうど1杯ずつのみそ汁を、作っていた。慣れればつまらない一連の作業になって、いつまで続けていたのか、もう覚えていない。けれどあのとき使っていたちょうどよい、ステンレスの小鍋のことを、なんとなく思い出す。その鍋は今も現役で、みそ汁はもちろん、卵をゆでるにも、野菜を湯がくにも、出ずっぱりだ。実家に帰ると、いつもその鍋がコンロに置いてある。
ちょうどよい大きさの小さな鍋。うちにやってきたのは実家のあの鍋よりさらに小さいけれど、“小鍋”を持つことが改めてうれしかった。
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